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やんやん  作者: きじねこ
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 第三部予告

 秋。

 その季節は食欲を増進させて乙女を肥やす季節。

 秋。

 その季節は読書量を増進させて本の虫の財布を苛める季節。

 秋。

 その季節は運動量を増進させてセックスがし易くなる季節。

 秋。

 その季節は芸術欲を書き立てられて取り返しのつかない黒歴史を育む季節。


 夏休みを終えた主人公・優哉は、休み明けテストで平均点六点を獲得。

 先生方には「それでこそ鈴城だ!」と言わしめられ、友人の広瀬からは「危うく俺が最下位になるところだったZE!」と笑顔を向けられた。

 苦渋を味わいながらも日々を謳歌し、九月下旬に開催された体育祭では、姫風無双を目の当たりにして「あいつやっぱり人間じゃないよ」と妙に納得。

 その後なんやかんやありながらも十月に突入。

 気づけば十一月(来月)に行われる文化祭の出し物について、だらだらと話し合っていた。

 現在は帰宅に向けてのSHR。つまりは放課後。


 委員長の相庭梨華がこう催促する。

「文化祭の出し物だけど、なにか案があったら言ってみて」

 すかさず相庭ラブな担任の片桐先生が発案する。

「マッスル喫茶なんてどうかな?」

「マッスル喫茶?」と相庭さん。

 水を得たフィッシュばりに片桐先生が語り出す。

「上半身裸の男たちが――」

「却下」

 隅でイジケル片桐先生。

 それを気にすら止めてない相庭さんが、話し合いを再開させる。

「なにか提案はないの? 寛貴」

「ピンポイントかよ」と坂本寛貴ピロシキ

「ないの?」

 ピロシキは相庭さんの催促に、

「休憩室か展示室にでもすれば良いんじゃねえの」

「ピロシキのくせにマトモなことを!」

「オレサマはいつもマトモだ!」

 ピロシキ言うな! と睨まれた。

「面白味に欠けるわ」と相庭さん。

「知るか! オレサマは部活の出し物で忙しいんだよ!」

 ピロシキの言う通り、僕たち軟式庭球ソフトテニス部は、豚汁とおにぎりを歩き売りする予定なのだ。

「誰か意見はない? なんでも良いのよ?」

 嘆息気味に催促する相庭さんへ、姫風が挙手した。

「……鈴城さん、どうぞ」

 相庭さんは姫風に対して警戒心全開だった。

「喫茶」と姫風。

 相庭さんが書記の国府田さんに「喫茶」と板書をさせる。

「流行りのメイド喫茶とか?」

 へ〜。メイド喫茶って流行りなんだ。

 僕が知識を吸収していたところ、姫風が爆弾を投下する。

「ノーパン喫茶」

 鼻水が出た。

「『ドキ、執事だらけのノーパン喫茶。ボロリも有るよ』を私は提案する」

「アホか!!」

「訂正して。私は妻よ?」


 その後「メイド喫茶」「執事喫茶」「コスプレ喫茶」と喫茶シリーズがのきを連ねた。


 相庭さんが仕切り直した。

「妥当なのは男女ともにできる『コスプレ喫茶』ね」

「お前のメイド姿なんて見たくねえよ」とピロシキ。

「私だってあんたの執事なんか見たくないわよ!」と相庭さん。

「はん、お前のメイド姿なんかで客が来るわけねえだろ?」

「それはこっちのセリフよ! あんたの執事姿なんてお金を払って遠ざけたいくらいよ!」

「なんだと!?」

「なによ!?」

 嫌な予感がする。

 片桐先生が割って入った。

「こうしたらどうだろうか?」

 みんなが片桐先生に注目する。

「隣のエリザベス先生のクラスは演劇で、教室が丸々空くことになるから、そこを借りて、片やメイド喫茶、片や執事喫茶と言った手合いにするのはどうだろうか?」

「片桐先生がマトモなことを!?」

「鈴城ちょっと立ってろ」

 立たされた。

 片桐先生の提案はピロシキ、相庭さん共に納得のいく内容だったらしい。

「上等だ! 売り上げで勝負だ!」とピロシキ。

 それを受けた相庭さんは、

「良いわよ? 負けた方が買った方の命令を聞くって条件を付けるけど、良いわよね?」

「良いのか? そんな真綿で自分の首を締める内容を提示しても」

「楽勝だもの。うちのクラスは綺麗所だらけって気づいてないのね?」

「!」

 ピロシキの顔に動揺が走った。「やっべ〜オレサマ陣営の男どもは弾数少ねえぞ」って顔をしている。

「忘れないでね? 男子一人につき一回、言うことを聞いて貰うから」

「じょ、上等だぁっ!!」

 …………。


 SHRは解散となった。


「で、『すみませんでした優哉くん』は? ピロシキ」とピロシキに、にじりよって悪態をつく僕。

「なんでだよ。あとピロシキ言うな」

「明らかな負け戦だよねこれ。相手はミスコン一位の相庭さん率いる2−Cだよ? ミスコン十位には国府田さんも入ってるんだよ? ヤバイよ?」

「……ヤバイよな」とピロシキ。

「認めちゃったよこの人!」

「いやでも灰田とオレサマが居れば大丈夫じゃね?」

「確かに見た目だけなら良いかも知れないけど、自分で言うな!」

「問題は知名度だよな」

「問題はピロシキの頭だ!」

「うっせえ! 済んだことをごちゃごちゃ言うな!」

「僕にとってはまだ済んでない! 姫風が僕に命令する権利を獲得したら……なにをされるか解りきってるでしょ!?」

「永遠に共に(byコブクロ)の練習しなきゃいけないな」

「僕と姫風を祝福する前に相庭さんに頭を下げてきてよ!?」



 こうして、2―Cの男女売上戦が開幕した。




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