プロローグ
この世界には常識で説明のつかない、不思議なことが溢れかえっているらしい。
例えば幽霊。
見える人と見えない人が居る。その境目はなんだろう?
誰か解き明かした人は居るのだろうか。謎が解けた方はお便り待ってます。
例えばUFO。
地球外知的生命体ってヤツが運転する未確認飛行物体だそうだ。テレビなんかで夜の八時くらいに超状現象特集を放送していると、それに誘拐された人が出てくる。誘拐されない人との境目はなんだろう? 重量制限? もし君が誘拐されたら、携帯電話で良いから動画を撮っておいて欲しい。動画サイトにUPしてくれるとこちらとしては助かる。話のネタに出来るしね。あれ見た? ほら、地球外知的生命体に拐われた人の動画。まじグレイだったね、って感じで。
これはその「例えば」を追求したミステリーだ。もしかしたら超状現象に傾いてオカルトになるかも知れない。トントン拍子にことが運べば、僕はある日突然不思議な能力に目覚めて、勧善懲悪のハッキリしたアクション物の非日常世界に巻き込まれるかも知れない。そしたら世界中の人気者だ。ヒーローだ。そうなったらきっと引く手数多のモテモテだね。ん、なんだか不思議な力に目覚めそうな気分だ。こうふつふつと身体中から力が沸き上がる感覚が……嘘だけどね。
あ、もう一つ「例えば」を忘れていた。いや、実はこっちが本題なんだけどね。
例えば……婚姻届と離婚届。
恐らく、両者合意の上で紙面に判を押して役所に提出するアレだ。それらを交わした者どうしは、まぁ、横に置いておくとして。可哀想なのは子供。子供は親を選べない。ハハハ、親も子供を選べないけど。つまるところ、子供は親の離婚には介入出来るかもしれないけど、流石に産まれていない時点での婚姻には口出しできない。
ヤメテパパ、そのママは浮気癖があるから結婚しない方が良いわ。なんて言えるはずもない。
えっと、さっきまでの流れでいくと、婚姻と離婚の境目はどこだろう? 浮気しようが借金しようが離婚しない夫婦だって五万と居る。だから境目――つまりは基準が解らない。
ま、予め別れることが解っていたら、誰も婚姻や離婚なんてしないよね。
とあるアメリカンジョークに「アメリカでは離婚率がとても高いと聞きましたが、アメリカにおける離婚の主な原因は何だと思いますか?」と言うものがあり、その解答が「結婚」とまである世の中だ。境目って難しいね。
本題そのニ。
ここからは「例えば」の話じゃない。それに翻弄されている子供の話。つまり僕。
我が家は僕が物心つく前から母親がいなかった。三歳だか四歳だかの時に離婚したんだと。
母親は三歳離れた姉を連れて、僕を父親に押し付け出ていったらしい。哀れむなかれ。母親が居ないからと言って、僕は嘆いたこともないし、悲観したこともない。最初から居ないことがデフォルトの為に、母親に想いを馳せると言うか、アレコレ夢想するセンチさを持ち合わせていないのだ。
これがもっとも身近な離婚の話なんだけど、続けてするのが結婚の話。
誰のって? もちろん僕じゃない。結婚年齢に達してないし……甲斐性もないですよ? 泣いてないよ? うっく、か、悲しくなんて(拳で涙を拭く)ないんだからね?
さ、さて、結婚の話に戻すよ。父親の再婚話だ。
んと、子供の物心があり、しがない中学三年生と言う立場の息子の場合、親と意思の疎通が死んでない限りは、それを賛成なり阻止なり出来るだろう。
しかし、我がダディーは違った。ギリギリまで隠し通して、相手方の引っ越し荷物が我が家に搬入し終えて、引っ越し業者が帰ってから、スッキリした表情で語ってくれたのだ。
学校から帰宅したばかりの愛息子に。
「ぼく結婚するんだ」