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風と少年

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「危険なの」

言葉とは裏腹にユークの表情は無表情。というか、慌ててすらいない。

「どんな感じで?」

いつもどおり、屋上で寝ていた俺。彼女が現われ起こされた。

「えっと、あんな感じ」

彼方を指差す。

俺は釣られて眺めると、

「いい風だ」

髪の毛が大変なことになっていた。

迫り来る強風。禿げそうなほど、髪の毛が後方に流れる。

「な、何事だ」

ドアがバンっと開き、赤月先生が登場。俺を見るなり、

「桜坂!お前の仕業か!」

「えっ、違います。寝ていただけですし」

「そ、そうか」

なんとか、容疑者から免れた。まぁ、成績の悪い俺が起こせる風だとは思わなかったのだろう。

「というか、何なんだこの風は?」

「まぁ、すごいっすよね」

大型の台風でも起きているのかと思えてしまう。まぁ、一方向からしか流れてないけど。

「やっぱさ、寝るしかなくね?寝てればいつかおさまるんじゃね?」

言いながら、地面に横になる。

「なるか!」

赤月先生に言われた。というか、蹴られました。

「おぉ、ナイスアイディア」

今さら、ユークが賛同してきた。

「ん?誰だお前は」

「私、ユーク」

「そうか、赤月涼子だ」

「うん、知ってる」

「・・・・」

自己紹介も終わり、寝る準備に入ったのだが、赤月先生に胸倉を掴まれた。

「なぁ、この子供は何だ?」

ものすごく、にらまれてしまう。

「えっ?知らないっす。マジで、自分もわからないっす」

「しらばっくれるな!」

頬をビンタされる。

「私は夜季の許嫁」

頬に手を添えて、恥ずかしそうにする。

「マジで止めて!」

「貴様は・・・ロリコンがぁ!」

次々と左右に移動する顔。往復ビンタされました。

というか、先ほどより風が強まったような気がする。

「な、ナンダトォ!僕の、僕のマイレディに。いや、麗しきプリンセスに許嫁だとぉ!!」

魂の叫びが辺りに響く。

風の発信源らしき場所から、男が現われた。

空中に浮かぶ、白い服に身を包んでいる。長い銀色の髪。ふぁさって感じで靡いている。

綺麗な顔立ちをした美少年であった。

「いや、まさか、まさか!僕が許嫁なのかぁ!!」

言葉と同時に爆風が吹き荒れ、体勢が崩れる赤月先生。持ち上げられている俺も同様になってしまう。

「違う。許嫁はこっち」

と、ユークが俺を指差し、男が眺め

「女同士かぁ!!でも、それもいいかも」

風が収まり、男が屋上に着陸した。

ふぁさって、髪をかきあげ、こちらに優雅に歩いてくる。

「ユーク嬢、お久しぶりです」

「ん、テレッテも久しぶり」

テレッテて名前らしい。というか、知り合いらしい。

「して、先程の話は本当なのでしょうか?女同士、素晴らしい!と思いますが、百合は駄目では?いえ、自分的にはとても、見てみたい気がしますけど。いや、でも嬉しいような悔しいような気分になりますし。だから、他にも結婚相手を用意されては?自分とか、自分とか、私とか!!」

ものすごい早口で、自分を猛烈アピールしていた。

「違う」

「へっ?」

「許嫁は女のほうじゃなくて、男のほう」

テレッテがこちらを眺め、俺をジッと見てくる。

手をぶらぶらと振り、

「ハロー」

挨拶しておく。

「貴様がぁ!!お嬢様をたぶらかす不届き者がぁ!!」

風が起き、唾とか声が飛んでくる。

「落ち着くの。冗談だから」

「じょうだん?・・・ははは、そうでしたか。さすがお嬢様、面白い冗談。ナイス!」

ビッと親指を立てる。

「いや、何でもいいんだけどさ。こいつ誰なの?」

俺はテレッテを指差した。

「テレッテは、私の護衛。これでも優秀な魔法使い」

「テレッテ・・・あの、テレッテか!5歳にして最年少魔法使いになった子供。風を操ることに関しては世界で並ぶものがいないと言われる、あのテレッテか!」

赤月先生が驚いていた。

「えっ?そんなに有名人なんですか?」

耳打ちする。

「ああ、私は日本で有名だが、あいつは世界で有名なんだ」

「はぁ、どっちも凄いと思うけど」

一国じゃなくて、世界。まぁ、俺にはでかい話で実感はない。

「じゃあさ、そんな奴を護衛にしているってことはユークもすごいわけ?」

「ん、当たり前。こいつが歩いてきたら、いきなし、あなたを守らせてください!って言われただけ」

それは凄いのか、判断に迷う。

「そう、その日から私はユーク様の護衛。近づくな!男は近づくな!」

しっしと追い払われてしまう。

「さぁ、帰りましょう。ここにはゲスな男がいます。ユーク様の気分が悪くなってしまっては大変です」

「ゲスって、自分のことかな?」

「そうだ!」

「あっ、自分って認めた」

「は?・・・そういう意味か!違うぞ、私はただ・・・そう、か弱い女性をほっとけない・・・別に、ユーク様があまりにも可愛かったからじゃなくて・・・幼女趣味はないぞ!・・・男として女性を守るのは当然だろうが!私はゲスじゃない!」

最後のほうは逆切れされた。

「ん、夜季。また、今度」

「え?おお、分かった」

ユークが空中に浮き、どこかに飛んでいった。

「お待ちください。私も付いていきます」

テレッテがそのあとに付いていった。

「・・・お前は、トラブルメーカーなようだな」

「ただ、寝てるだけなんですけどぉ」

そんな感じで、赤月先生に指導室に連れてかれ、鞭の刑にされた。

理不尽だ!!

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