Sクラスの少女
フィクションです
「ふ、ふぁ~あ」
大きな欠伸が出てしまった。
寝起きだから、仕方ないことである。
まぁ、辺りは赤く染まっているけど。
昼前から、夕方まで寝ていたことになる。
「かなり寝てましたね」
声をかけられた。見ると、少女がまだ居た。
「あれ、ずっと居たの?」
「はい。授業には出たくなかったので」
「じゃあ、サボっちゃったんだ」
「はい、サボっちゃいました」
にこやかに微笑む。
「さてと、寮に戻らないとうるさい人がいるからな」
立ち上がる。
もちろん、うるさい人とは奈美のこと。帰るのが遅いということで質問攻めにされそうだ。
「じゃあ、一緒に帰りませんか?」
「え、どっちでもいいけどぉ」
とぼとぼと歩く。俺の後ろをついてくるように彼女も歩き出した。
「そういえばさ、名前は?」
「あっ、自己紹介してませんでしたね。私は双葉涼子です。魔法科のSクラスに所属してます」
今さらだけど、この魔法学園では複数の学科に分かれている。
魔法科、魔法を操る力を鍛える学科。解析科、マナを分析、有効利用しようとする学者が集まる科。
あとは、戦略魔法科。軍人を目指す人の科である。戦闘のプロフェッショナルとでも言っておこう。
それで、クラスはSABCDEFと分かれ、Sクラスは優秀な人が集まっている。
S以外は特に能力分けはされていない。
「へぇ、じゃあ優秀なんだねぇ」
「ええ、そうなんですけど。私は未熟ですので・・・。才能はあるらしいんですけど、魔法を操ると失敗しちゃうんです」
「失敗?」
「はい。・・・爆発しちゃうんです」
それは大層な失敗であった。
「ていうことは、クラスの連中に馬鹿にされるとか?」
「はい。それで、屋上で泣いて―――はっ」
「そうですかぁ。悔しくて泣いてたのね」
「・・・はい」
しょんぼりとする、えっと双葉ちゃん。
「まぁ、いいじゃん。爆発するんだし。俺なんてマナの弾丸が平べったくなっちゃうもん」
「いえ、私よりマシですよ」
「いいや、俺のほうが・・・」
延々とループしそうだったので打ち切る。
「まぁ、習って一年も経ってないんだし、いずれ爆発しなくなるでしょ」
「前向きですね」
「じゃないと、生きてけないでしょ。暗いまま過ごしたってつまらないし」
「それはそうですけど」
「あ~もう!笑えって」
「え?」
「そんな暗い顔を見せられるとこっちまで暗くなる。気持ちよく寝られないじゃん」
「ええ!そんな理由でですか」
「いいの。難しく考えすぎだって、爆発しちゃった、てへっぐらいの気持ちでいなよ」
「そ、それは駄目ですよ・・・ぷっ」
何かが面白かったのか、くすくすと笑う。
「そ、その顔が一番。人生楽しく生きないと」
「寝てばっかりの人が言いますか?」
「それが楽しいことだから、仕方ないんだよぉ」
「あっ」
道を歩いていると、前方にて奈美がいた。こちらを見て固まっている。
プルプルと震え、こちらにズカズカと歩いてきては、
「待たせてるくせに女連れかよ!」
「ぐふぉ、誰も頼んでないんですけどぉ」
殴られた。
地面をズサーっと滑り、手とかが擦れてヒリヒリする。
「な、何するんですか!」
「別にいいじゃない。てか、誰よ!」
「桜坂さんの友達です!」
「そんなこと聞いてないわよ!名前よ、名前」
「双葉涼子です。Sクラスの」
Sと聞いてか、奈美の眉間に皺ができる。
「はっ、エリートの人が屑の夜季と友達?あんた、なに考えてんのよ」
「桜坂さんは屑じゃないです。あなたこそ、何なんですか!」
「私は、クラスメイトの天上奈美。夜季の世話係よ」
「そうですか。でしたら、結構です。私が変わりに世話係になりますから」
ていうか、世話係って何だよ。
「はぁ、何様のつもりよ!」
「そちらがです!」
むむむっと、にらみ合う二人。
「ああ、面倒だなぁ。ぐぅ」
寝ることにした。
「寝るな!」「寝ないでください!」
すぐに起こされた。
まぁ、何とか仲直り?して、二人とも俺の世話係になった。
あれ?何かおかしい気がするけど、まぁ考えるのも面倒なのでやめておく。
仲良く?三人で食事を終え帰宅。
やはり、Sクラスということで住んでいるところは俺たちのボロアパートと違い、ホテルみたいなところで、
「ベッドが柔らかそうだなぁ」
「それだけ!」
奈美に突っ込まれた。
まぁ、そんな感じで別れ、部屋に帰宅。
無性に疲れて、眠りについた。