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少女襲来

フィクションです

「はぁ、ただいまぁ」

寮の自室に戻った。

「おかえり」

そんな声が聞こえた気がしたが、気のせいであろう。だって、一人暮らしだし。

普通に、鞄を置き、制服を脱ぐ。

パッパッてな感じで、パンツ一丁トランクスになって、変な感じがした。

・・・ものすごく見られているような。

ベッドを背に向けて立っているのだが、ベッドから視線を感じた。

恐る恐る振り向くと、何故かユークが目を手で覆い隠し、指の隙間から覗いていた。

「・・・何してんの?」

「暇だから、遊びに来た」

「そうですかぁ」

とりあえず、服を着替える。

「でさ、何で俺の部屋を知ってんの?」

言っておきながら愚問であったことに気がつく。彼女は俺がこの寮に住んでいることを知っているのだから。

「結構前から出入りしてた」

「マジで!?」

衝撃の事実である。

「俺のプライバシーはどこにいったの?」

「平気、ベッドの下に隠してある高校生物のエロ本は隣の人も知ってるから」

と、奈美がいる部屋を指差す。

「そ、そうなの?」

「ん、でも安心。本命の巫女物は私しか知らない」

ぐふぅ、とダメージを受けた。

「な、何でそのことを」

「部屋を物色してたら出てきた。まさか、辞書の中にあるとは思わなかった」

ばれないように、気づかれにくいところに隠したのに・・・。

「まぁ、落ち着く。神聖な存在に手を出そうとしたのが間違いなんだから」

「そうですねぇ。罰が当たったんですねぇ」

まさか、知り合って間もない人物に趣味が発覚されたのは、心が痛すぎた。

だが、それだけで終わるわけでなく、

ドンドン

ドアが叩かれた。

そして、開かれるドア。

「・・・」

入ってきた人物はベッドの上に腰掛けているユークを眺めて、停止していた。

「あれ、奈美どうしたの?」

「こんばん」

ユークも挨拶する。

奈美はそれで、正気を取り戻し、ぎこちない動きで俺を眺め、

「・・・この幼女趣味が!」

「ちがいまぶぅ!」

殴られました。


「迷子なんだったら先に言いなさいよ。勘違いした私が馬鹿みたいじゃない」

「言う前に殴られたけどねぇ」

「うっさい」

「奈美は怒りっぽい」

「うっ」

ユークの言葉に、息を詰まらせ、シュンと大人しくする奈美。

ユークもいるので、ファミレスにて持ち帰りのできるピザを頼んで、俺の部屋で食べているのだ。

「何で、私に相談しないのよ」

「えっ、面倒だったし、いつもユークって勝手に帰るから」

「いつも?」

ものすごく睨まれた。

「ん、学校でいつも会ってる」

「そうなんだよねぇ、屋上で会ってるんだぁ」

「もしかして、授業をサボってる理由って、この子と会いたいから?」

変な勘違いをされた。

「違うし。屋上に行くのは寝たいからに決まってるじゃん」

あっ、段々と眠たくなってきた。

「そうよね。・・・あはは」

乾いた笑いが聞こえた。

「そうだ・・・ぐぅ」

「寝た!!」

奈美の声が聞こえた気がした。


「はぁ、何でこいつはこうなのかしら」

呆れたような声を出しているが、表情はどこか嬉しそう。

「・・・奈美は夜季が好き?」

「ち、違うわよ!」

慌てる彼女。ある程度は当たっているのかも。

「そ、それより、ユークだっけ?家に帰らなくて平気なの?」

すでにあたりは暗い。心配しているのであろう。

「平気、ここに泊まるから」

「ここ?」

「ん、夜季の部屋」

「だ、駄目よ!」

「でも、泊まるところない」

「はぁ、仕方ないから私の部屋に来なさい」

案外、優しい人なのかも。どこか、ツンツンしているように思えるけど。

「じゃあ、行くわよ」

寝ている夜季に毛布をかけ、部屋を出た。


「ねぇ、何してるの?」

公園の砂場で城を建造していると、声をかけられた。

「見て、分かんないの?城を作ってんの」

「面白いの?」

「まぁねぇ、どんだけ精巧に作れるかが楽しい」

一生懸命、手で砂を盛っていく。

「私も手伝ってあげる」

目の前の砂の山にどさぁっと大量の砂が落ちてくる。

慌てて声の人物を眺めた。

金色の髪をした幼い少女がいた。

「お前、魔法使い?」

「ん、そう。あなたもでしょ?」

「俺?俺は違うね。今は砂職人だから」

近くに置いてあった水の入ったバケツを山にかける。

ぺたぺたと砂を削ったり、重ねたりする。

今は外壁を作っているのだ。

「・・・ん、分かった。反対側をやってあげる」

俺の作業を見て、だいたいやり方が分かったのであろう、少女は反対側に周り、ペタペタとやっていく。

少女を見てて、あまり楽しそうではないのが分かる。

それに、綺麗なドレスが土で汚れ始めた。

「待った、他のことをしよう」

「他の事?」

「ああ、おままごととかな」

「おままごと・・・」

「知らないの?家庭の模倣をして遊んだり、お医者さんごっことか、職業の真似事をしたりな」

「へぇ、面白そう」

少女の瞳に光が篭る。

「じゃあ、俺が父親役で、お前が母親役な。設定は浮気した旦那。その情報を今朝手に入れた妻ってな感じで」

「ん、分かった」

少し、距離を開け、

「ただいま」

疲れた感じをアピールする。

「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?そ、れ、と、も私?」

演技を止める。

「違うよね。浮気が分かってるのに、誘う人はいないよね」

「ん、他の女の魅力に誘惑された旦那を自分の魅力で連れ戻そうとする妻って感じ」

「あ、そうだったの」

妙に納得してしまった。

「じゃあ、はじ・・・」

言葉が途切れたのは、スーツ姿の厳つい人が現われたからである。

「お嬢様。お時間です」

「ん、分かった」

彼女は立ち上がる。

「えっと、もう終わりかな?」

「ん、また今度」

また会えると思うと、少しだけ嬉しかった。

「おう、また今度な」

彼女たちの背を見送った。

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