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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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41-3.秘めた想い(3)

「王家で聖女を守ることができないばかりに、レティシアは自分で自分の身を守らなくてはいけなくなってしまった。それも申し訳ないと思った。俺がリバレイ領へ行けば、俺を推していた人間たちも諦めざるをえないだろう。王宮にはまた平和が戻ってくる。そうすれば、レティシアを王家で守ることができる。レティシアと離れてしまうことは辛かったが、それでレティシアが守れるならいいと思った」


 でも、結局そうはならなかった。

 一度断られたということもあるし、お父様も何か不穏なものを感じたのかもしれない。それ以降、王家を頼ろうとしなかった。

 それに、私も護身術の訓練はすでに習慣になっていたし、自分の身は自分で守ることが当たり前にもなっていた。もう王家に守ってもらう必要がなくなっていたのだ。

 それでも、王家にいた方が絶対に安全だったと思う。王宮の方が当然ながら警備は厳重だ。私はそれほど敵に襲われずに済んだかもしれない。


「でも、私はブラン家で過ごすことができてよかったです。家族と離ればなれに暮らすのは寂しいし、それに、襲われることで、私の護身術もめきめきと上達しましたから!」

「……今でこそ笑って聞けるが、心臓に悪い話だな」


 エルが苦々しく笑いながら、やがて美しい庭園に視線を向けた。

 どこか遠くを見つめるような視線。そして、切ない。

 私はエルを元気づけたくて、何か言わなくてはと思った。しかし、先にエルが口を開く。


「王家も、レティシアに対してはずっと申し訳ない気持ちを抱いていた。それに、アドルフ王もセレスティーヌ王妃も、レティシアをとても気に入っていた。レティシアのことは、お二人からよく聞いていたよ」

「……そうだったんですか」

「あぁ。愛らしいだけでなく、聡くてしっかり者だと言っていた。聖女の器にふさわしいともな」

「そんな……。でも、お二人にそんな風に言っていただけて、とても光栄です」

「本物のレティシアを見て、二人の言っていることはまさしく本当のことだとわかった。大泣きしている顔も、訓練をしている時の真剣な顔も、褒められてはにかんでいる顔も、とにかく可愛らしくて、眩しかった。これが俗に言う「一目惚れ」というものなのだろうな」

「……っ」


 そう言われた途端、顔が赤くなる。

 一目惚れだなんて。

 でも、私だってエルに一目惚れしたようなものだった。会った瞬間に惹かれ、胸が高鳴り、どうしようもなかったのだから。

 エルは、更に強く私を抱き込んだ。


「リバレイ領に行った後も、ずっと忘れられなかった。レティシア以外、誰も欲しくはなかった。王や王妃、それに養父や養母も心配していた。俺が一生独り身でいるのではないかと。それは間違っていない。俺は、ずっと独りでいるつもりだった。政略結婚などするつもりはなかったし、だから俺は、自分の力をフル活用して戦闘に明け暮れていたというわけだ。おかげで「氷の国の魔王」とまで呼ばれ、恐れられる存在になった。だが、それでよかった。恐れられていれば、リバレイへ嫁ぎたいという、もの好きはいなくなるからな」

「エル……」

「俺はわかっていたんだ。王太子となったシャルルの婚約者として、聖女・レティシアが選ばれることを」

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