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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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38-3.異例の判決(3)

「私たちに都合が悪い、そういうことではない。ダイア砂漠に住む民を、我が国の庇護下に置く。お前たちには、彼らを他国から守る任につけと言っている。ついでに、クラウディアの民もそこに入れてもらおうと、そういうわけだ」

「それはっ……騎士団や自警団の仕事じゃねぇのか」

「こういったことに人手はいくらでも必要なものでな。お前たちもその一端を担え」

「くっ……」


 王の言いように、カミルはまた口を噤む。

 彼らに対し、下手したてに出るような言い方をするなんて……。

 そんなことを言われるとは思っていないカミルたちは、内心パニックを起こしていることだろう。かくいう私だってそうだ。だって、一国の王ともあろうお方が、暗殺を行っていた彼らの下手に出るなんて、誰が想像できようか。


「……俺たちは、これからもダイア砂漠で生きられるのか」

「無論」

「砂漠の民をまとめれば、彼らを全員救ってくれるというのか」

「保証する」

「だが、そんなことが周辺諸国に知れたらどうする? 奴らは黙っていないぞ」

「彼らはお前たちが死んだと思っているのだろう? 生きていたと知れば、さぞ面白くないであろうな。だがもう遅い。ダイア砂漠はクラウディア国の統治下にある。我が国は、砂漠の民を制圧したのだ」


 カミルは盛大に溜息をついた。そして、小さく肩を震わせる。それはやがて大きくなり、彼は背中を折り腹を抱えた。


「あははははは! さすがは賢王というべきか。いや、ちょっとした詐欺じゃねぇか、これ!」

「名目などなんとでもなる」

「ははははは! 面白い王だ」


 驚いた。死ぬほど驚いた。これはきっと私だけじゃない。シャルル様も王宮騎士団の面々も、皆呆気に取られたような顔をしている。その中で平然としているのは、裁判官に宰相ルクス様、それにエルだけ。

 エルはこうなることをを知っていたというのに、私には一言も言ってくれなかった。……言えないのは重々承知だけれど、それでも少し悔しい。


「わかった。その条件、呑んでやる。いや……ありがたく受け入れさせていただこう」

「頭っ!」

「アシム、頭の決めたことだ。俺たちはそれについていくだけだろう?」

「……わかったよ」


 慌てるアシムをスードが宥め、これで彼らの刑は確定した。

 なんてことだろう。本当にこんな結末を迎えるだなんて思ってもみなかった。でも、私の心は晴々としている。

 彼らの未来はまだまだ困難に満ちている。それでも、やるべきことは示された。達成した暁には、砂漠の民が救われるのだ。

 カミルは、国を作るのだと言った。自分たちはここで生きているのだと知らしめたいと言った。その裏には、砂漠の民をどん底から救いたいという強い意志があったのだと思う。その気持ちを、王は汲んだのだ。


「ところで、俺たちの頭は誰になるんだ? 王直々なわけはないだろう? だが、そんじょそこらの奴に、俺たちを統率するなんてできるとは思えないが」


 カミルのその言葉に、王は初めて表情を崩す。楽しげに口角を上げた。


「心配せずともよい。お前たちの上に立つのは、エルキュール・リバレイだ」


 えええええーーーーーっ!?

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