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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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38-2.異例の判決(2)

 そして次は、いよいよカミルたちの番になった。

 彼らの様子は落ち着いたもので、皆すでに覚悟を決めたような顔をしている。彼らが揃って証言台に立つと、裁判官は厳かに判決文を読み上げた。


「カミル、アシム、スードの三名については、無期懲役とする」


 場がシンと静まり返る。

 ボードレール家とベルクール家の当主たちがこの場にいたらと思うと、身震いがする。こんな判決を聞けば、彼らは絶対に黙っていなかっただろう。

 本来なら死罪確定、裁判にかけるまでもなくわかりきったことだった。なのに、まさかこんな判決が出るとは。

 もちろん、無期懲役は軽い刑ではない。それでも、彼らは生きて罪を償う機会を与えられたのだ。

 三人を見ると、揃ってポカンと口を開けていた。彼らも全く想像していなかったことで、呆けているらしい。


「ただし、条件がある」


 裁判官の言葉が続き、彼らをはじめ、私たちも気を引き締める。

 条件とは、いったいどんなことだろうか。


「ダイア砂漠に住む民族を統一し、まとめ上げること。そして、民は皆、クラウディア国に従属するものとする」


 ピシリと空気にひびが入ったような気がした。裁判官の言葉に、カミルたち三人は表情を歪める。

 彼らは、自分たちの存在を周辺諸国に知らしめようとした。そのために国を作るのだと言った。それは決して、他国に従属するためではない。


「クラウディアに従属? それはつまり、お前たちの奴隷になれということか! それなら、砂漠の民を統一する必要はない。俺たち三人を使い倒せばいいだけだ!」


 カミルが裁判官に向かって大声を放った。他の二人もそれに頷いている。

 カミルの言い分はよくわかる。自分たちだけならいざ知らず、他の民まで従属させようだなんて。

 私はエルを見上げた。私の不安そうな表情に、エルは微笑みを返す。


「落ち着け。クラウディアは、お前たちを奴隷として使役させようとは思っていない」


 王の声が辺り一帯に響き渡る。裁判官に断りを入れ、王がその場に立った。

 大国クラウディアの賢王と呼ばれるアドルフ王は、他者を圧倒するオーラを放っている。これにはさすがのカミルも黙り込んでしまった。


「残された砂漠の民たちも、お前たち同様に罪を犯しながら日々を生きている。それは決して許されることではない。だがそれは、真っ当に生きる術がないからだ。それもまた、許されることではない。ならどうするか。……真っ当に生きていける術を与える、それが答えだ」


 真っ当に生きていける術? 彼らに仕事を与える、そういうことだろうか。

 私と同じことを考えたのか、カミルもその疑問を口にした。


「俺たちに何をさせるつもりだ」


 アドルフ王は一呼吸置き、静かに声を発する。


「周辺諸国からクラウディアに攻め込もうとする不届き者の討伐、及び、ダイア砂漠、そしてクラウディア国の治安を守ること」

「……俺たちを前線に置き、捨て駒にするつもりか」

「それは違う」

「違わない! 結局、自分たちの都合のいいように俺たちを使いたいだけだろうが! 言葉だけはご立派だが、やることといえばこれまでとたいして変わらねぇ。お前たちにとって都合の悪い奴らを排除する、そういうことだろうが!」

「言葉が過ぎるぞ!」


 思い余って声をあげた裁判官を制し、王は悠然と首を横に振った。

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