35.暴かれる悪事(1)
エルにも手伝ってもらいながら、私はフラムの背から地面に降り立つ。
カミルたちの入った木箱はすでに下ろされており、裁判所に運ばれていた。
「フラム、ご苦労様。五人も乗せて飛ぶのは大変だったでしょう? ごめんなさいね。ありがとう」
「グワォ!」
私の言葉に、フラムが喉を鳴らす。
「これくらい平気だよ」なんて言っているのだろうか。フラムの顔はどことなく得意げに見える。
「フラムもネージュに負けないほど気性が荒いんだが、レティシア相手だと可愛らしいものだな。奴らの気配には薄々勘付いていたようだが、おとなしく乗せてくれてよかった」
「え? フラムは気付いていたんですか?」
エルが魔術を施していたというのに?
エルは小さな溜息をつき、肩を竦める。
「他の二人はともかく、カミルという奴は只者じゃない。簡単に術に屈してくれなくて苦労した。暗殺組織の者でなければ、騎士団にスカウトしたいほどだ。とりあえずおとなしくはなったが、人としての気配は消しきれなかった。フラムが激しく拒否するんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」
そこまで言うのだから、彼はエルを相当手こずらせたのだろう。さすがというか、何というか。
依頼された暗殺は必ず遂行するという残虐性を持ちながら、どこか理知的で。物騒な組織の頭だというのに、何故か粗野な感じはしなくて。……本当に不思議な人だった。
そんな彼らも、今日の裁判でどうなることか。
これまで犯してきた数々の悪事が暴かれ、糾弾されることは必至だ。これまでの罪を考えると、かなり重い刑に処されるに違いない。たぶん……極刑、だろうか。
「グルッ」
「フラム?」
フラムの声で、私は顔を上げる。知らず知らずのうちに俯いていたようだ。
フラムは私をじっと見つめると、ゆっくりと姿勢を低くする。そして、きゅっと目を閉じた。
「やれやれ。フラムも随分甘えん坊になったものだ」
エルは呆れながらも笑っている。
私はフラムの深紅の鱗に触れ、そっと撫でた。
「グゥゥゥ」
「気持ちいいの?」
「グルゥ」
喉を鳴らすフラムに癒される。
これから行われる裁判を思い、気持ちは沈んでいたけれど、フラムのおかげで気を取り直せた。
私が沈んでも仕方ない。彼らは正当に裁かれ、罪を償わなくてはならないのだ。それが例え「死」であったとしても。
「行こう、レティシア」
「……はい」
エルが私の手を取る。
王都・セントラルに到着したばかりの私たちだけれど、ここへ来た一番の目的は、カミルたちの裁判だ。
昨日の時点では、私は裁判には出ない予定だった。家族に一刻も早く元気な顔を見せて、安心させてやれとエルに言われた。
でも、それに異を唱えたのは私だ。実害を被った私だからこそ、この裁判を見届けなければならないと思った。
彼らを庇うつもりなど毛頭ない。けれど、一方的に彼らだけが裁かれることには納得がいかない。だって、彼らが動いたということは、彼らを動かした人間がいるということなのだから。暗殺組織に依頼をした人間も、彼らとともに裁かれるべきだ。
エルも私の気持ちに同調し、最終的には一緒に行こうと言ってくれた。
「グルッ」
「フラム、行ってくるわね。今日は本当にありがとう。ゆっくり休んでね」
私はもう一度フラムの鱗を撫で、エルとともに裁判所へと向かった。




