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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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28.首謀者

 私は、カミルの隣にいる男を凝視する。

 男はさりげなく視線を逸らし、カミルに何やら話していた。それに対し、カミルが冷たくあしらう。


「依頼どおり聖女は攫った。聖女の方はこっちで引き受ける。二度とクラウディアの地は踏ませない。だが、そのガキを親元に帰せば、彼女は自らこの国を出て行くと言っているんだ。こっちとしてはこれほど楽な話はない。というわけで、ガキはお前が帰してこい」


 男は眉を顰め、声量を落とせと手振りするけれど、カミルは完全に無視だ。

 カミルはもう私があの条件を呑むと決めつけている。

 悔しい。当たっているだけに。


「勝手を言わないでいただきたい!」


 カミルの言い分が頭にきたのか、男の声が大きくなった。その声を聞き、私は確信する。

 彼は、ボードレール公爵家の執事補佐()()()人間、そして今は、ベルクール公爵家で働いている。

 ボードレール家とベルクール家は懇意にしている関係で、使用人の行き来があると聞く。ボードレール家で必要のなくなった人間をベルクール家に押し付けているのが実情だという噂だけれど。そして、彼がそうであることは私も知っていた。

 名前は確か、ルベン。ボードレール家の公爵令嬢であるリゼット、私の次にシャルル様の婚約者となった猫被り令嬢だが、彼は彼女の不興を買い、ベルクール家へ移ったという話だった。

 私は彼がまだボードレール家で働いていた時に、何度か彼の姿を目にしている。リゼットの我儘に振り回されているのを見て、気の毒に思ったからよく覚えていたのだ。

 と、彼の素性がわかったところで、私は首を傾げる。


 この誘拐の首謀者は、ベルクール家の人間ということになる。でも、私を疎んでいたボードレール家ではなく、ベルクール家なのはどういうことなのだろう? ベルクール家には、特に疎まれるような何かがあったとは思えない……とここまで考え、ハッとした。

 そういえば、リゼット・ボードレール嬢の取り巻きに、ベルクール家のお嬢様がいたような。

 取り巻きというだけあり、いつもリゼットの後方に控え、その上、やいのやいのとうるさく騒ぐタイプではなかったため、あまり印象に残っていなかった。


 リゼットからは、わかりやすく敵視されていた。でも、取り巻きのお嬢様方は、単にリゼットに取り入ろうとしているだけで、本気で私を疎んじている様子はなかった。時々悪戯をされることはあったけれど、子ども騙しのようなもので、ダメージらしきダメージを受けたことがなかったからだ。

 しかし、ミシェル・ベルクール、彼女だけはリゼットと同じくらい、いや、それ以上に私を憎んでいたということだろうか。


 ベルクール家の当主がこんなことを企てるはずはない。力関係でいえば、ブラン家の方が断然上だ。ましてや今の私は、王家とも繋がりの深いリバレイ大公の妻で、おいそれとは手が出せないはずなのだ。上位貴族に牙を剥けば、即座に返り討ちにあうことは明白、当主がそんなことをするとは到底思えない。

 でも、現実にはベルクール家の使用人がここにいて、カミルと言い争っている。

 使用人が当主の意向を無視して動くことなど普通ならありえない。そのありえないことが起こっている理由として思い当たるのは、たった一つだけ。


 ルベンは、ミシェル嬢に思慕の念を抱いている。それも強く。

 ルベンは私よりも年上だろうけど、まだ若い。クビになった彼を受け入れてくれたベルクール家には恩を感じているだろうし、その上、ミシェルがそんな彼に優しく接していたとしたら? 

 想いは身分の差など軽々と超えてしまう。ルベンがミシェルに恋をしていて、その彼女にこの誘拐をお願いされたのだとしたら、彼は当主を裏切ることになるとわかっていても引き受けてしまうだろう。

 ……というのは、あくまで私の想像だけれど。

 でも、今目の前で起こっていることを冷静に見極めると、この考えはあながち間違っていないと思われた。

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