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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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23.閉じ込められたセシル

 目の前でレティシア様が攫われてしまった。


 私がリバレイ領に向かう途中、暗殺組織と思われる男たちに襲撃された。

 これは明らかにレティシア様を狙ったものだ。レティシア様がここにいなくて本当によかったと思う反面、私は心細さにただ震えていた。すぐ側にアリソン様が控えていなければ、私は子どものように泣き出してしまっていたと思う。


 レティシア様が何者かに狙われている。

 それが判明したことで、第一騎士団は一足先に早馬を出した。このことを一刻も早くエルキュール様に知らせ、警戒を促すためだ。それからは、レティシア様には常に護衛が付くことになった。


 リバレイ領に到着後、私はレティシア様との再会を果たし、お元気そうなお姿を拝見して、心の底からホッとした。そして、これからもレティシア様のお側にいられることを幸せに思った。

 私には何の力もなく、いざという時にレティシア様をお守りすることはできないかもしれないけど、常に緊張に晒されているレティシア様の精神的な支えになろう、そう決めて、レティシア様のお側をできる限り離れないように努めた。──それなのに。


 大切な、誰よりも優しくて思いやりのある、私の大好きなレティシア様が目の前で何者かに連れ去られてしまった。

 私はそれを眺めていることしかできなくて、その上、庭にある納戸に閉じ込められてしまった。口には布が押し込められ、手足は縄で縛られ、声を出すことも動くこともできない。

 あの男はこういったことに慣れているようで、私を納戸に押し込めた後、ご丁寧にそこらにある道具で私の姿を隠し、扉を開けてもすぐにわからないようにしてしまった。


 そして腹の立つのが、ユーゴ! 

 レティシア様からあれほど信頼されていたというのに、彼はそれを裏切った。レティシア様をあの男に売ったのだ。

 私が納戸に閉じ込められてしまった後のことはわからない。だけど、ユーゴはもうどこかへ逃げてしまっただろう。誘拐の手引きをしたのだ。見つかればただでは済まない。


 あぁ、こんなところから早く脱出して、エルキュール様にレティシア様のことをお伝えしなくていけないというのに!

 レティシア様を救えるのは、エルキュール様しかいない。

 私はここにいる、ここから出して!

 そんな気持ちで必死に声を出そうとするけれど、布に邪魔をされて唸るような音しか出ない。

 外では風が強くなっているようで、さっきからビュービューと大きな音が聞こえてくる。これでは私の声などかき消されてしまう。

 私は暗闇に馴染んできた目を凝らし、ここにあるもので何とかできないだろうかと無我夢中で考える。


 その時、何かが肩に当たった。あの男が作ったバリケードの一部だろう。どれほどの物を使ってこのバリケードを築いたのか。

 しかし、ふとひらめいた。

 このバリケードに思い切り体当たりすれば、風に負けないくらいの大きな音がするのでは? 近くに誰かがいれば、何事かと思ってここを開けてくれるかもしれない!

 バリケードが私の方に倒れてきた時は、無事では済まなそうだ。それでも、迷っている時間なんてない。

 私は大きく息を吸い、勢いよく吐き出した。

 レティシア様、どうかご無事で!

 私は祈りを込めて、バリケードに向かって思い切り自分の身体をぶつけたのだった。


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