表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/90

19.再会(1)

 早馬の騎士の報告を聞いてから、エルは今後の対策を立てるためにすぐさま騎士団に向かった。

 帰りは遅くなるだろうから先に寝ているようにと言われたけれど、ベッドに横になっても一向に眠くならない。むしろ目は冴えてくるばかりだ。

 私は寝るのを諦め、ベッドから離れて窓に向かう。

 月は厚い雲が覆い隠してしまい、外は真っ暗闇だった。鳥や動物たちの声も聞こえない静かな夜。この静けさが、かえって不安を煽ってくる。


「セシル……どうか無事で」


 セシルは、もうずっと長く私についてくれていた。明るくて、しっかり者で、よく気の付く大切な侍女。いや、侍女というより、私は彼女を姉のように慕っている。

 セシルは私よりも二つ年上で、時には私を厳しく叱ってくれ、また悩みを聞いてくれたりもした。いつも一生懸命私の話に耳を傾けてくれて、私は何でもセシルに話していたし、セシルも私にいろいろな話をしてくれた。だから、リバレイ領までついてきてくれると知った時、私は本当に嬉しかったし、とても心強かった。

 でも、そのセシルの乗った馬車が襲われた。馬車まで被害は及ばなかったのだし、第一騎士団が守ってくれているのだから絶対に大丈夫、それは固く信じている。しかし、私の心は申し訳なさでいっぱいだった。

 何故なら、襲撃の目的はおそらく私だから。

 ここ最近は落ち着いていたものだから、私も少し油断していたかもしれない。この襲撃は、十中八九「聖女」を狙ったものだ。命を取ろうとしていたのか、攫って他国へ売り飛ばそうとしていたのか、そこまではわからないけれど。

 私と一緒にいる限り、こういったことは日常茶飯事のように起こり得る。こうやってとばっちりを受けることも、一度や二度では済まない。それでも、セシルは私と一緒にいることを選んでくれた。


 セシルもきっと不安だろう。お互いに姿が見えないからこそ、不安でたまらない。

 セシル、早くあなたに会いたい。

 私はセシルを思いながら、外を眺め続ける。一刻も早く、陽が昇ることを願って──。


 *


 ようやく陽が昇り、私は着替えを済ませて部屋を出た。窓から第一騎士団が戻ってくるのが見えたのだ。その中には、セシルの乗った馬車もある。

 急いで扉を開けた瞬間、私は何かとぶつかった。


「きゃっ!」

「おっと……」


 私の身体を抱きとめたのは、エルだった。


「エル!」

「今、第一騎士団の到着を知らせようと思って来たんだが……。レティシア、一睡もしていないだろう?」


 エルが、瞳の下あたりに柔く触れる。みっともないので必死に隠したクマは、ここまで近づかれると見事にバレてしまう。


「どうしても眠れなくて」

「そうか。それなら、まずはセシルと再会だな。その後、一眠りするといい」

「エル……」


 エルの表情を見て、セシルが無事に到着したのだと思った。張りつめていた糸が切れたように、身体から力が抜けていく。そして、気持ちも緩んでしまい……。


「大丈夫だ、レティシア」

「ホッとしたら……止めたいのに、止まらない」


 勝手にポロポロと零れてくる涙。

 エルはそれを指で優しく掬い取り、私の目尻に口づける。


「そんな顔を見せたら、セシルが心配するぞ」

「……はい」


 私は涙を拭い、エルを見上げて微笑んだ。

 そうだ。私が泣いていたら、セシルだって心配させたと気に病むだろう。セシルはそういう人なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ