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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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16-3.リバレイ騎士団(3)

 まずは、第三騎士団の訓練を見学させてもらう。

 騎士団の中でも上位だからなのか、どの騎士の実力も甲乙つけがたいものだった。


「わぁっ、今の動き、目で追えませんでした! あっという間に相手の懐に入り込んで……あれではひとたまりもありませんね!」


 対戦形式の訓練がとにかくすごくて、攻守にもそれぞれ個性があり、まるで舞踊のように美しい動きをする者がいたり、想像もつかないような動きをする者がいたりで、何戦見ても飽きない。夢中になっているうちに、私はすっかり素になってはしゃいでしまった。


「レティシア様は不思議なお方ですね」


 ファビアンにそう言われ、ハッとする。

 しまった、はしゃぎすぎた! と後悔しても後の祭り。

 でも、ファビアンはそういうつもりで言ったのではなかった。


「本来は、戦闘などにはまるで縁のない、仮にそうなってもひたすら守られるべきお立場であるにもかかわらず、我々の訓練に強く興味をお示しになられる……。しかも、お言葉が的確なので驚いてしまいます」


 ちょっと良く言い過ぎのような気がしなくもないけれど、幻滅されたのではなくてよかった、とホッと胸を撫で下ろす。

 ファビアンも私が戦うことのできる聖女だということを知っているはずなのに、普通の令嬢として扱ってくれることに少し照れてしまう。

 でもエルは、そんなファビアンの裏の気持ちを鋭く指摘した。


「ファビアン、手合わせ願いたいと思っているのだろう?」

「……エルキュール様を差し置いて、そのようなことは」

「一瞬、間があいたな」

「そういうエルキュール様こそ」

「もちろんだ」


 そう言って、二人して笑う。

 エルがこんな風に親しげに接するのは、ファビアンに対してだけではなかった。団長、副団長クラスだけじゃなく、新人の騎士に対しても態度は変わらない。それを見て、身分は重要ではないと言ったエルの言葉は本当なのだな、としみじみ感じた。

 第三騎士団の見学が終わると、第四、五、と進み、第二十騎士団の訓練まで見終えた頃には、すっかり日も暮れようとしていた。昼食も騎士団で取ったので、今日一日で皆とは随分距離を縮められたと思う。

 そして最後には、念願の手合わせも実現した。

 私は軽装に着替え、身体のあちこちを伸ばしたり捻ったりして準備をする。

 まずは私の力を見定めるため、騎士見習いから手合わせをしていく。そして騎士、騎士の中でも階級がどんどんと上がっていき──


「いやはや、驚きました! まさか一桁台の騎士とまで互角に戦えるとは……」


 目を丸くしながら褒めたたえてくれるファビアンだけれど、万が一でも私に怪我をさせてはならないと、武器は使わず素手での手合わせだったし、それに、多少の手心は加えられていたと思う。いくら手加減はいらないといっても、私は領主であり騎士団のトップでもあるエルの妻だ、騎士たちも相当気を遣っただろう。

 ちなみに、ファビアンとエルとも少しだけ手合わせした。全く歯が立たなかったけれど。


「久しぶりに動いて、とても楽しかったです!」


 笑顔で言うと、ファビアンが参りましたというように苦笑いをし、エルはというと、私を引き寄せて頭のてっぺんにキスを落とす。それを見て、また騎士たちがどよめく。


「皆がレティシアを慕うのは喜ばしいことだが、レティシアは俺のものだと示しておかなくてはな」


 その言葉に、私は頬を真っ赤に染める。それにも騎士たちはどよめいていたようだけれど、そんなことを気にする余裕もなく、私はエルの胸に顔を埋めたのだった。

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