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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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16.リバレイ騎士団(1)

 昨日は一日、ゆっくり休みを取った。

 リバレイ領へ来て早々に領内をあちこち見て回ったので、エルが疲れただろうと気遣ってくれたのだ。

 領内を回ったことについては、実はそれほど疲れてはいなかった。リバレイのことが少しずつわかっていくことが楽しかったし、領民も親切で朗らかないい人たちばかりで、いろんな話も聞けてとても有意義だった。


 ただ、その日の夜は──。

 初めての経験で、もう何が何だかよくわからなくて、ずっとエルに翻弄されていた。

 私を甘やかし、時に激しく求めるエルは、まるで野生動物のようだった。

 捕えた獲物は決して逃さないというようなギラギラした瞳に、私はほんの僅か恐怖を感じながらも胸は高鳴る。逞しくしなやかな身体に見惚れ、甘やかに微笑む表情に蕩け、私は完全に骨抜き状態。

 事が終わった頃には、身体のどこにも力が入らず、また自分でも聞いたことがないようなざらついた声になっていて、我ながら驚いてしまった。


 そんなことを思い出していると、頬が染まり、身体に熱がこもる。

 いけない、私ったら。

 妄想を消し去るため、頭をブンブンと左右に振る。


 とにかくそういうこともあって、昨日はのんびりと過ごした。そして、今日からはまた活動開始だ。

 私は今、エルの迎えを待っている。

 今日はリバレイ騎士団に私を紹介し、また訓練を見せてくれるというので、私はずっとそわそわとして落ち着かない。

 だって、リバレイ騎士団といえば、クラウディアの中でも生え抜きの人材が揃っているのだ。そんな騎士たちの訓練を見学できるなんて、落ち着けるわけがない。

 こういうところが普通の令嬢ではないし、そうなれない理由なのだろうとわかってはいるけれど、これはもう仕方がない。幼い頃から身を守る術を叩きこまれ、それが苦でなく楽しかったのだから。


 リバレイ領は、他国にとって一番攻め込みやすい場所だ。何故なら、他国とリバレイ領との間には、行く手を阻む砂漠がないから。

 クラウディア国の中心でもっとも重要な地であるセントラルと他国との間には、広大な砂漠が広がっている。灼熱の砂漠を越えることは決して容易ではなく、これがクラウディアの砦にもなっているのだ。

 でも、リバレイ領にはそれがない。とはいえ、リバレイ領に攻め込むのもそれほど簡単ではない。

 リバレイ領は寒冷地、氷の国と称される地だ。灼熱が氷に変わっただけで、攻略が困難であることに変わりはない。

 それでも、クラウディア国に入ることだけを考えれば、砂漠を越えなくてもいい分攻めやすい。だから、最強の護りが必要なのだ。

 各地から強く、敏く、冷静な騎士たちが集まった最強の騎士団、それがリバレイ騎士団。彼らはまさにクラウディアの守護神なのだ。


「レティシア、待たせたな」

「いいえ。もうよろしいのですか?」

「あぁ。……待ちきれないといった顔だな。早速行こうか」


 私はほんの少し顔を俯ける。

 エルに対しては本音を隠せないようで、顔に全部出てしまっているらしい。


「言っておくが、訓練は見学だけだからな」

「……わかっています。皆さんの邪魔はいたしません」


 何かしたくても、この格好じゃ動きに制限がかかるし、相手の動きについていくのも難しいだろう。

 私が軽くスカートを持ち上げると、エルはそれを受けてか、スッと手を差し伸べてくる。


「それでは参りましょうか」

「はい。よろしくお願いいたします」


 まるでこれからパーティーへエスコートするかのような仕草。

 私は小さな笑みを浮かべながら、エルの手を取った。


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