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王太子妃になり損ねた公爵令嬢は氷の国で魔王に溶ける  作者: 九条 睦月


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11.リバレイへの道のり

「私が……ネージュに?」


 呆けながら尋ねると、エルはもちろんだというように大きく頷く。

 ネージュの背に乗ってリバレイ領へ行けるなんてこんなに素晴らしいことはないけれど、ネージュは受け入れてくれるのだろうか。

 この間は近寄らせてくれたけれど、それはエルがいたからじゃないか。私は未だそんな風に思っていたりする。そういう意味では、エルも同乗するのだから乗せてはくれそうだけれど、ネージュがそれを望まないのであれば無理強いはしたくない。


「レ、レティシア様っ!」


 セシルが泡を食ったような顔で私を見つめる。

 彼女の心配はもっともだ。ドラゴンに乗ってなど、危険極まりない。私にもしものことがあればと不安になるのは当然だ。

 でも、セシルが大慌てしているのを見て、私は逆に落ち着いてしまった。


「セシル、大丈夫よ。だって、エルが側についていてくださるもの」

「それはそうですが……」

「セシル」


 セシルはその声の主を振り仰ぐ。その先には、優しい笑みを湛えたエルがいた。


「レティシアは何があっても私が守る。ネージュは気位が高く、気性も荒い。だが、一度認めた人間に対しては義を尽くす。決して裏切らない。とことん守り抜くんだ」

「エルキュール様に対してはそうでも、レティシア様には……」

「大丈夫だよ。レティシアはすでにネージュに会っている。気に入らなかったり自分が認めない人間に対しては、例え私が側にいようが彼は威嚇する。だが、ネージュはずっと落ち着いていた」

「本当……ですか?」


 セシルが心細そうな目で私を見る。私は彼女をそっと抱きしめ、そうだと答えた。

 そう、あの時のネージュはシエルとともに落ち着いていた。緊迫した空気を醸し出したのは一瞬だけで、その後はエルの隣にいる私に対し警戒する素振りは一度も見せなかったのだ。

 それに……


「エルに婚姻の申し込みをされた時、それを見届けてくれたのがネージュとシエルなの」

「そうなん……ですか?」

「あぁ。二頭はとても喜んでくれたよ」


 エルの顔を見つめながら、ドラゴン二頭の迫力ある鳴き声を思い出す。吹き飛ばされそうになるくらいの勢いだったけれど、それは攻撃するためじゃない。彼らの身体から声が出れば、あれくらいにはなるだろう。

 彼らは大きな声を出したわけじゃない。人間でいえば普通におしゃべりするくらいの大きさで鳴いただけだ。ううん、あの時は「おめでとう」と言ってくれているように聞こえた。

 そのことを改めて思い出すと、ネージュは快く私をその背中に乗せてくれるのではないかと気持ちが上向いてくる。


「私もシエルとともに側におります。ご安心ください」

「ファビアン様……」


 ファビアンが人好きのする笑顔で後押しをしてくれたおかげで、セシルもようやく安心したようだ。

 私は、第一騎士団の二人に向かって頭を下げる。


「カミーユ、アリソン、セシルのことをどうぞよろしくお願いします」

「お任せください。何があってもセシル殿は我らがお守りいたします」


 セシルに寄りそうように立っていたアリソンは、これまで硬かった表情をふわりと和らげる。深い緑の瞳が、柔らかな弧を描いた。

 それを目にした私とセシルは、そんなアリソンに釘付けになってしまう。


「こらこら、アリソン、お前の悪い癖だ。女性が女性を誑かすとは何事だ」


 カミーユが呆れながらそう言って、部下を眺めている。

 た、誑かすなんて! 

 でも、気持ちはわかるかも、なんて思っていると、逞しい腕が私の腰に回り、グイと引き寄せられた。


「アリソンは確かに魅力的だが、夫を前にそれはないだろう?」

「エルッ」


 私が顔を赤くしながら抗議の声をあげると、エルをはじめ、カミーユやアリソンまでが笑い出す。そのうちセシルまでも笑い出してしまい、私もそれにつられて笑ってしまった。

 これで、私もセシルも密かに抱いていた緊張が解け、とにかく彼らについていけばいいのだと確信する。これは、無条件の信頼だ。


「セシル、精鋭の第一騎士団がついているのだから、身の安全は保証されたも同然よ。でも、彼らの言うことはちゃんと聞いてね。セシルのことだから大丈夫だとは思うけど……。私は一足先にリバレイで待っているから」

「はい! レティシア様もお気をつけて」


 こうして、私たちは別々にリバレイへ向かうこととなった。

こちらのお話が抜けておりました。すみません…。

割込み投稿をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

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