3.悪役令嬢にはなりませんわ!
こんちにわ、初めまして。
正直、誰に話しているのか自分でもよく分からないのだけど…とにかく聞いてちょうだいな。
ワタクシ、実は転生者ですの。
突然何を言い出すのかと驚きでしょうが信じて下さいな。
ワタクシね、赤子の頃から自分の前世と思わしき記憶がありましたの。だからでしょうね、歳の割にはとても達観した子供でしたわ。
一時期は神童なんて呼ばれて、まぁワタクシが賢いのはそれこそ前世の頃からですけどね!
前世のワタクシはそこそこ裕福な家庭で育ちましたの、その点では今の生活と同じ様なものですわ。
お陰で欲しいと思ったものは知識も含めてすぐに手に入る生活をしていましたの。それでも、最初は色々と大変でしたし不便さも感じていましたけれど…
かれこれ15年、ワタクシ立派な淑女に成長致しましたわ。
爵位の高い我が家はとても家族仲が良いんですの。
優しい両親とお兄様のお陰で、ワタクシとっても幸せでしたの。そんな折り、ワタクシに漸く婚約者ができましたのよ。それもこの国の王子様ですの!
とっても格好が良くて文武両道なんでもこなす秀才ですの!真面目な性格には好感も持てますし、この方とでしたら将来とても幸せな家庭が歩めると…そう、思っていんですの。
でも…ワタクシ、この状況になんだか既視感を覚えまして。
そして思い出したんですの!
爵位の高い美しく可憐な令嬢と麗しき王子様との婚約…
これはもしかして、『乙女ゲーム』と同じ展開では無いかしら?!と。
もし、ワタクシが転生したこの世界が『乙女ゲーム』の世界だとしたら…ワタクシ、悪役令嬢の立場ではなくて?!
う、嘘でしょう…そんな、悪役令嬢と言えば最後にはヒロインと王子を含めた攻略対象者たちによる断罪が待っているのではないかしら。家は没落し、その後は処刑か国外追放…な、なんて事!!わ、ワタクシそんな未来絶対嫌だわ!!で、でもワタクシ『乙女ゲーム』は沢山やってきましたけれど…この世界がどのゲームの世界かわからかったんですの。ヒロインが誰か…分からなかったんですの。
どうしましょう…で、ですが誰も虐めたりせずに大人しく過ごしていればいいだけの事ですわよね?!
ヒロインと思わしき少女との接触さえなければ…ですが、あちらから猛アタックでもされてしまえばワタクシが避けていても意味が無いのでは?
いいえ、仮にあちらも貴族ならばそんな愚かな事しないはずですわよね!そうよね、きっと大丈夫ですわよね…!
麗しき、愛する王子様のためにも!
ワタクシ、悪役令嬢になんてなりませんわ!!
◇
「今度は悪役令嬢ね…みんな思い込み激しすぎね?」
「い、今時の子はなんだかすごいねぇ…おじさんびっくり~」
「勵さん200歳以上だもんね。おじさんというかそれこそ死神らしく骸骨になっててもおか…なんでまだハゲてないの?!」
「そんな驚く事かな?!!」