1.私はヒロイン!
転生してから10年。私は10歳になった。
とっても可愛らしい、将来有望な美少女な私は今日も優しい両親に囲まれて順風満帆な生活を送っている。
自分が転生者だと自覚してから、私はこの世界が私の望む魔法のある世界だと知ったの。
とはいえ、私には魔法を使うことは出来なかったのだけど。もし『乙女ゲーム』や恋愛小説の中なら…いや、ここは何かの物語の中なのだと私は確信している。
根拠?そんなものこれから勝手に出てくるわよ、だって私はヒロインだから!
きっと、これから覚醒イベントなんかが起きて希少な光属性や聖魔法に目覚めることが出来る筈なのよ!だから、その時の為に今から魔力は使えないながらも必死に魔法の勉強をしているの!両親には無駄な努力だと言われたけれど、そんな事ないと私は知っていたから頑張ったわ。
いつか、私だけの王子様に会えることを信じて!
けれど、残念ながら未だに私の魔力は覚醒していない。
可笑しいわね?そろそろしてもいい頃だと思うのだけど…
この世界で魔法が使えるのは本当にひと握りの存在だけで、貴族や王族の中でも使える人はほぼ居ないらしいと知ったのはつい最近。
それでも私はヒロインだから、いつかは覚醒できるはず…!
でも、これ以上使えもしない魔法のことを勉強するのも飽きたし、今は取り敢えずは魔法のことは諦めることにするわ。でも何も全てを諦めた訳では無いのよ?
私の物語のスタートはここでは無いのだと気付いただけ。
きっと学園や王城でヒーローと出会わないと始まらないのね!うーん、それはそれでとても素敵だけれど。
ほら、小説なんかだと前もって色々と準備していたでしょう?物語よりも早くに覚醒して、チート能力をものにしていればこの先楽になると思ったのだけど…まぁ、仕方がないわね。
魔法がダメなら、素敵な王子様達に出会うのに少しでも自分をよく見せる為に私は今まで以上に美容に気を配ることにしたの。なんて立って私には前世の記憶があるから!
でも、あまり上手くいかないものね?
小説ではこう、パパっと作れていたのに…化粧水やハンドクリームの作り方なんて詳しいところは知らないし。料理も自炊なんてしてなかったから、よくある食改革的なのは私にはできなかったの。
何とかうろ覚えのレシピをシェフに伝えては見たけど、全然ダメダメ。私の求める味にはならなかったの!
なんて使えない奴なの?だから首にしてやったわ!
当然よね、ヒロインの私の要望に答えられないような無能なんて要らないもの。
でもまぁ、私は何もしなくても美人だから今更美容に気を使う必要なかったのよね!
きっと何もしなくても私はヒロインだもの!
勝手に向こうからやってくるわ!
当面の目標は…学園の入学かしら?
この国にはいくつか学校があるの。
大まかに分けると平民の学園と貴族の学園。
後は、職業別の専門学校と言った感じね。
それぞれの学園に通うには必ず入学試験を受けないといけないの。例え、貴族が通う学園でも試験に受からなければ入学することは許されないのですって。
実際、学力が足りなくて試験に落ちる子もいるそうよ。
両親にも学園に通いたいなら真面目に勉強しろとこの前叱責を受けてしまったのよね。
でも、私はいつでも真面目にやっいるのに…酷いわよね!
それに、結果なんて分かりきっているのにね。
だって私は、ヒロインだから!
学園なんて簡単に入学できるに決まってるわ。
そこで運命の出会いを果たして私はハッピーエンドを迎えるのよ!あぁ、なんて素敵なのかしら…
待っててね!未来の私の王子様!!
◇
「…ねぇねぇ、勵さん。この子頭大丈夫?」
「えぇ?!!し、新人ちゃんが人の心配してる…?!う、嘘でしょ…え?なにか厄災の前触れ?イヤイヤ、きっと新人ちゃんも成長したってことだよね…?」
「何か言いました?」
「うぇ?!い、いや。新人ちゃんでも人の心配するんだなぁって…いや、待てよ?寧ろ新人ちゃんに心配なんてされるあの子の頭が異常過ぎるのかな…?え。まって、これどっちがやばいんだろう…?」
「さっきっからボソボソと年ですか?あと、ぶっちゃけ全部聞こえてるのですが、色々とどういう意味ですかね?」
「ひえっ」
「それに、私はとってもとーっても優しいから勵さんの毛根がいつ死滅してもいいように、オススメのカツラをこうして準備して待ってあげてると言うのに…全く酷いですっ!」
「ちょ、そんな準備いりませーん!!というか嘘でしょ?僕がハゲるの待ってるの?!酷いのは新人ちゃんでしょ!!もー!ぼ、僕は絶対にハゲないからねぇ?!!」
「はぁ?ハゲさんなのに?」
「そんな真顔で言わなくても…僕、そろそろ本気で泣きそうだよ…」