表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/97

自然の営み

こうして<侵略者>を撃退しその肉を喰らった(ばん)は、血塗れの自身の<頭>を洗うために、森殺し(フォレストバスター)の蔓を噛みちぎって水を噴き出させ、浴びる。そんな、


<女性がシャワーを浴びているかのような光景>


についても、バドは淡々と記録していた。その機械の体に小鳥がたかっても、意に介さない。それこそただの置物のようにそこに佇んでいる。生き物じゃないことで、小鳥も木の枝と変わらずにとまったのだろう。そしてその小鳥は、同じようにバドの体にたかった昆虫を捕え、食べた。


ごく普通の<自然の営み>が、そこには繰り広げられていた。


その上空を、何かの影がよぎる。鳥のようにも見えるが、明らかに大きい。翼端長は三メートルくらいありそうだ。(ばん)が目撃した<鳥のようなもの><よくないもの>に比べればやや小型ではあるが。


ちなみに、(ばん)が目撃した<鳥のようなもの><よくないもの>は、実は、


<フライトユニットを装着したバド>


であった。(ばん)を観察するためにバドは派遣され、その際、フライトユニットで運搬されてきたのだ。なお、そのフライトユニット自体が一体のロボットなので、バドを投下した後は自分で帰還している。


しかし、今、空を飛んでいるのは、<フライトユニット>ではなかった。よく見ると、体の部分のシルエットが、まるで<人間>のようである。


それは、タカ人間(アクシーズ)と呼ばれる生き物だった。その名の通り、


<翼を持った人間のような生き物>


である。すると、水浴びをしていた(ばん)が、


「!」


体を緊張させ空を見上げた。と言うのも、アクシーズもかなり凶暴な生き物であり、ヒト蜘蛛(アラクネ)といえど油断していると場合によっては命を落とすことさえある強敵なのだ。


ただ、今回は、たまたま上空を通過しただけのようで、すぐに遠ざかり、見えなくなる。アクシーズは、基本的には<滑空>により、長くて百メートル程度を飛行するだけなので、鳥ほど自在に空を飛べるわけではない。(ばん)に襲い掛かるつもりならそのまま急降下してくるはずであり、目的は別にあると推測される。


それを確かめて、(ばん)は改めて別の蔓を噛みちぎり、再び水浴びを始めた。さすがにずっと出続けるわけではないからである。


こうして血を洗い流し、頭を振って水を跳ね飛ばす。


ここまでの様子でも分かる通り、ヒト蜘蛛(アラクネ)には、


<人間としての感覚>


は一切ない。割と清潔好きとは見られるものの、容姿を気にする感覚は持ち合わせていないようだ。また、個体数が多くないため。繁殖時には雄も雌も、たまたま出会った相手とそのまま交尾するのが基本であった。


<好み>というものがどうやらないようなのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ