予知
なんだこれ……傷が消えていく。
「なにぼーっとしてんだ!」
相手が俺に向かって発砲した。
「な! 避けたのか」
今何が起きたのか自分でもよく分からない。
相手が発砲したと思ったら体が勝手に動いた。
自分で避けたのか俺。
「くそ!」
相手がもう一度発砲しようとする。
その時分かった。俺には相手の次の動きが予測できる。
どの向きで何発撃つかわかる!
「なんで全部避けれんだよ!」
撃つのが乱暴になってきた。相手が焦ってる。
やるなら今だ!
体が重い、でもこのタイミングを逃すわけにはいかないんだ!
「うおおおお!」
今まで以上に速く動け! ここでアイツを必ず殺す!
「来るなー!」
相手が俺から逃げるように後ろに下がる。
「逃がすか―!」
俺は一瞬の隙を見て相手の懐に入った。
「これで終わりだー!」
銃声と同時に相手の体が倒れ俺は返り血を浴びた。
「やったぞ知咲、俺勝ったぞ」
一気に全身の力が抜けた。
ほんと死ぬかと思った。
今は全身が痺れていて痛い。
「お兄ちゃん知咲ちゃんが!」
俺が地面に倒れこんむとミヤが涙を流しながら俺の方まで駆け寄ってきた。
「どうしたミヤ」
「知咲ちゃんが……知咲ちゃんが生きてるの」
「な! 知咲が生きてるのか!」
「うん! もうすぐ救急車が来るから頑張ってお兄ちゃん!」
「ああ、ぐっ! がは……うっ! がはっ!」
今までにない咳や吐き気、頭痛が俺を襲った。
やっぱりあの速度出せたら相当体に負担がかかるよな。
「お兄ちゃん!」
気持ち悪い、すごい吐き気が。
意識が今にも吹っ飛びそうだ。
「うっ! おえええええ!」
吐き気が治まらない。
このままだとマジでやばい!
《体の異常を確認。これより荒海幸太の第三特別感覚能力『自動治癒』を発動》
この声はなんだ。さっきも聞こえたよな。
そうだ、この声が聞こえた時から相手の動きが予測できるようになったんだ。
「すごい、全身の傷が消えていってる」
「ミヤ……」
「お兄ちゃん大丈夫!」
「ああ、もう平気だ」
今もそうだ。
あの声を聞いた途端、傷が消えて吐き気が無くなった。
「お兄ちゃん今傷が」
「ああ、そうなんだ。俺にもよく分からんが、頭の中で人の声が聞こえてな、なんて言ってたのかはよく覚えていないがな。とにかく今は知咲が無事でよか……った……」
ほんとよかった。
今度なんか食べに連れてってやるか。
なんか、安心したら眠たくなってきたな。
「――お兄……ん……お兄……ちゃん」
途切れ途切れで聞こえるミヤの声、全身の力が抜けそのまま俺は気絶した。
読んでいただきありがとうございました!
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