がちゃのけっか(ぷろろーぐ3)
「へあ?!」
思わず変な声が出た。この手の確定と名の付くチケットで出てくるモノと言えば確定をうたうランクのモノは出てもそれ以上が出ることはないと僕は思っていたのだ。
「LR、UR、SSR、SR、HR、R、HN、N」
このゲームでのレア度は8段階で、LRが一番高く、Nが最も低い。
「SSR出るとか」
画面を見つめたまま、渇いた笑いが漏れる。確定より一つ上のランクだが、当たる確率は数%だったと思う。
「運が良いと言えば、そうなんだけど」
実際、こういういい結果を引くためにキャラを作り直しては初回特典のチケットで抽選を繰り返すマラソンという行為をするプレイヤーもそれなりにいると聞くし、一発でよい結果が出るというのは運がいいとも思う。ただ、抽選なので何が当たるかはわからず、作曲家にものすごい彫刻刀が当たっても意味をなさないように自分にとっては使えない品が当たる可能性だってある。
「メイス、かぁ」
僕が手に入れた装備は、刃物を持てない聖職者系の職業用の装備で、当初就こうと思っていた予定の職業とは大きくかけ離れていた。
「一応キャラ作りたてで職業にもついてないからなぁ」
所謂無職と言われる状態で、全職業中最弱ではあるが全ての装備を使用可能という利点が存在する。おそらくはガチャで当たった装備が何であっても試し切りできるようにという運営側の配慮でこうなって居るのだろうけれど。
「加えて職業を決める為の検証用かな」
色々武器を使ってみて、しっくりくる武器を得意とする職業に就くためと言われても納得は行く。
「とりあえず、装備して――」
試し切り、この場合試し殴打か。ともかく、そんな旨を短い言葉で告げればモヒカンの人も察してくれると僕は思い。
『はぁ?! なんでお前みたいな初心者がそんなレア装備持ってんだよ! このチート野郎!』
直後チャットウィンドに表示された発言にえと僕の口から声が漏れた。
「モヒカンの人、なわけないよね」
よくよく確認してみれば、発言者の名前はモヒカンの人ではなく、まったく見知らぬ名。
『決闘だ! 買ったらその武器寄越せ!』
『ああん、なんだてめーはよぉ?!』
マナーも何もない上、唐突で自分本位な見知らぬ乱入者の発言にモヒカンの人が割って入ろうとするが、なんというか。
「ダメだこの人」
ガチャで当たった武器は基本的に譲渡不可で奪うこともできない。リアルの金銭でこの手のレア装備をやり取りする犯罪への処置なのだと思うが、その辺りしっかりゲームマニュアルに書いてあるのだ。
「そういえばこの手のネットゲームを題材にした小説とかだとこういう時は挑戦を受けて圧倒するんだっけ?」
僕としては他のプレイヤーの実力を知りたいのもある、どうせ負けてもシステム的に渡せないのは確定している。
「運営に通報してから、相手を逃がさないためにも挑戦を受けて時間稼ぎするのも――」
いいかななんて考えていた時だった。
『GMコールしといたからな?』
チャットウィンドに出たのはモヒカンの人が既に通報しましたという宣言。
『は? なにいってんだ、それはこっちのセリフだろうが!』
これに対する反論を乱入者が吐いた直後、乱入者のキャラの動きが止まって、突然画面から消える。
『ごめん。部外者だけどすでにGMコールしてた。あいつ他所でも同じことやらかしてたから追跡してたんだけど』
『あー』
モヒカンの人の通報にしては早いなと思ったら、どうやら他の人が既に通報していたらしい。
『感謝』
とりあえず短くお礼を告げた僕はモヒカンの人に試し殴りする旨を伝えて魔物が跋扈するフィールドへと向かうこととしたのだった。
うむ、書く順番間違えたかもしれませんね。読み直すとゲーム開始部分は回想の方がよかった感が。
ゲームでの出来事は以後回想に回して、次回は転移後からスタートの予定です。