もひかん(ぷろろーぐ2)
文字数とか気にせず書いてくと思うので今回は短いです。
あと、転移はもうしばしお待ちを
『ヒャッハー、お待ちしてましたぜーッ!』
ゲームの中、プレイヤー同士の待ち合わせ場所でその人物はこっちにこいよと凶悪な表情をしていた。
『む』
思考が停止しかけたし、画面を見つめながら僕は悲鳴を上げていたが、自身の声で直接やり取りするボイスチャットじゃなくて本当に良かったと思う。文字でコミュニケーションをとるチャットウィンドウにかろうじて一文字だけ入力し。
「ええと、何かの間違いじゃないよね?」
マジマジと画面を見る。モヒカンヘアの怖いお兄さんの頭上にはプレイヤーネームが浮かんでおり、名前の頭には相手が自身のフレンドである証のフレンドマークがしっかりと存在していた。
『よしなに』
初めまして宜しくお願いしますというコミュニケーション用の定型文もあったが、動揺を押し隠して僕は四文字を打ち込み。
『こっちこそよろしくだぜ―ッ』
モヒカンの人は武器を突き上げるというこれもコミュニケーション用に最初からある動作の一つで応えて見せた。ただ、僕はもう既にいっぱいいっぱいだったのだが。
『それでどうするよ? さっそくバカップル討伐に向かうかぁ?』
ただの顔見せで終わるつもりはモヒカンの人はないようだった。そも、このゲームは剣と魔法のファンタジーな世界で冒険するというモノであり、基本的には戦う相手と言えばフィールドを跋扈する魔物や時として山賊などの犯罪者などに限られるのだが、一部の決められたエリアではプレイヤー同士で戦うことも可能となっている。モヒカンの人の言う討伐とはこの機能を使ってバカップルなプレイヤーを見つけて戦いを挑むというモノなのだろう。
『否』
だが僕は首を横に振るモーションをキャラにさせた。僕のキャラはつい今しがた作成したばかりなのだ。だから。
『ガチャ、回さん』
ゲーム開始時に特典としてプレゼントされる貴重な装備が当たるかもしれないチケットを使い抽選することこそ最優先だった。
『そういや初心者装備だったな。すまねぇぜ』
装備と返答で事情を察したのか謝罪のモーションをしたモヒカンの人は良いものが当たるといいなと言ってくれ、僕は秘かに反省する。
「この人、見た目はともかくそんな悪い人じゃないみたいだ」
メールの文面は丁寧だったし、このモヒカンの人もキャラへのなりきり、ロールプレイでああいう言動なのだろう。
「けど困ったなぁ」
寡黙キャラというのはあまりしゃべると変であるから、どうも言いたいことが言いにくい。
「ガチャで装備が当たったら試し切りとお互いの実力把握のために軽く魔物と戦ってみませんか?」
僕にコミュ力があってキャラが寡黙でなければそう言えるのだろうが、あいにくどちらも叶わない。
「とりあえず、待たせても悪いし、ガチャを回してみよう」
SR確定11連ガチャと銘打たれたチケットは名前の通りSRとランク付けされたそこそこ良い装備が一つは当たる他合計で11種のアイテムが手に入るチケットだ。もちろん抽選結果で何かがダブって10種以下になることもあるが。ともあれ回してみないことには結果がわからない。緊張と期待に胸を膨らませ、僕はコマンドの中からガチャの項目を選んで抽選を開始するのだった。