ぷろろーぐ
出来心と他作者様のカン違いものに感銘を受けて自分も書いてみたくなったので、出来心で書き始めて見る。
誰かの時間つぶしにでもなってくれれば幸いです。
「団長、お疲れ様ですぜ」
モヒカンヘアーにトゲトゲ肩パットの男が僕に頭を下げた。徒党を組んで略奪でもやっていそうな出で立ちは小心者には脅威だろう。漫画なんかだと主人公に纏めて片づけられそうなイメージもあるが、現実で出くわしたなら全力で逃げ出すか、足がすくんで動けないかの二択だったとも思う。
「うむ」
だが僕はただ頷くだけ。モヒカンの人と初めて出会ったのはオンラインゲームの世界で、今では相手の内面、人となりをある程度知っているからだ。
◇
「本当にいい子だ」
そういって褒めてくれた祖父母が他界して幾年がたっただろうか。両親が共働き故に祖父母に預けられて育った僕は祖父母の他界によって両親の元に戻ったのだが、はっきり言って両親とはそりが合わなかった。ほめて伸ばす祖父母とは逆と言うか、重箱の隅を楊枝でほじくる様に失点を見つけては叱責し詰るだけだったのだ。
「評価されたい、褒められたい」
そんな思いが行き場所を探し、たどり着いたのがコンピュータ相手のゲーム。ゲームは基本的に誰であっても公平で、努力によって結果を出せれば評価をしてくれた。
「後悔はしてないつもりだけど――」
ゲームに傾倒、のめり込んだが故に、僕はたぶん世間一般で言うコミュ障というモノとなっていた。
「このままじゃ拙い、何とか人と接せるようにならないと」
遅まきながら気が付いた僕が、人付き合いの第一歩として選んだのが、ネット回線を使って見知らぬ誰かと時には競い時には協力して遊ぶネットゲームだった。これまでの人生の大半をつぎ込んできた分、得意なジャンルのゲームであれば腕の方にそこそこの自信もあったからだ。
「とは言え、見知らぬ人といきなり会話とかハードルが高すぎるよ」
最初の決断までは早かったが、問題はその後だ。電源をいれゲームを始めようとしたところで僕は慄き、しり込みした。
「あ」
何かないかと救いを求めて周囲を見回すと、目についたのは以前遊んでいたゲームの攻略本。
「そうだ、既存のキャラになり切って演じればいいんだ!」
名案だと思った。ちょうど表紙に並んでいるキャラクターの内の一人などは寡黙で言葉少なく、今の僕でも十分演じられそうに思えたのだ。
「それだけじゃパンチが弱いかな? そうだ、プレイヤーキャラクターに自己紹介文を書けるって説明書にあったよね」
寡黙で言葉が足りない部分はそこで補えばいい。
「寡黙なだけじゃとっつきにくいだろうし、おちゃめと言うかネタキャラっぽい一面をこっちで引き出せばバランスもとれる筈――」
こちらは近くにあった漫画の登場人物を参考にした。強いけど三枚目でモテず、カップルなどに敵愾心を抱き主人公とヒロインに絡んでは返り討ちに遭ったりする道化役で。
「僕もぼっちだし、彼女とか出来たら欲しくてうらやましいし――」
そんな俗物的な自分だからこそ、演じられそうだと思ってキャラを作成後、自己紹介文の作成へと移った。
「我、全てのモテない者達の味方也。邪悪なバカップル及びハーレム野郎どもを滅ぼさんと欲す者」
重要なのは立ち位置を明らかにすることとブレないことだろう。故に、僕はそう書き込み。
「ステータス、拝見いたしました。貴方の志に共感いたしましてよろしければ」
ネット上の友人設定、フレンドになってくれませんかと丁寧な文面で最初にメールが届いたのはゲームを始め、説明を兼ねたチュートリアルを終えて暫し後のこと。
「友達、初めての友達だ!」
舞い上がった僕はよく見もせずに手紙に添えられた申請を承諾したのだった。