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色彩魔法学校-8[囮]

生徒はゼミごとに軍用の車に乗せられた。オリーブ色の高機動車を運転しているのは本職の軍人だ。ライフルをもった見張りもいる。サポロ市内のマコンナイ駐屯地から来たのだろう。


こんなときでもレモンとバナナは楽しげに話す。

「蜜柑は勇者だな」

「ああ、蜜柑はまごうことなき勇者だ」

「不抜けた部下もゼブラの前では襟を正す」

「上官にも実力行使で押し通す」

『伝説の軍人ゼブラに喧嘩を売るなんて君くらいだぞ』


レッドグローブの指導のもと桃は蜜柑の手当をしていた。蜜柑はぐったりした様子で俯いている。

「すみまセン 私も止めらなクテ」


双子は構わず会話を続けている。

「あそこは心臓を捧げよ!というところだよなあ」

「うむ、主人公の暴走でミカサとアルミンもびっくりだぞ」

「人類最強のゼブラ兵長に喧嘩を売るなんて」

『ほんとう、蜜柑は勇者だなあ』


「ゼブラ…ってあの、20年前の戦争の陰の英雄と言われている?ブタゴリラなんて言われているから私…」


桃がつぶやくと、レモンとバナナは蒼の方をみてニヤっと笑った。

リコリスが話す。

「これから、全校生徒固まってトマコに行くわ。トマコも色彩魔法中学は無事だから助けになってくれるはず…。でも、期待し過ぎてはだめよ?あなた達は年齢に限らずエリートと言われる。トマコの住民17万2700人の命さえ、あたし達にかかっている。」

「え?そんな…」

「行けばわかるわ」







軍用車は重厚なエンジン音と鈍い振動を乗客に分け与えながら順調に行軍する。

前を走る高機動車には城戸と城戸ゼミの人が乗っている。城戸の怒鳴り声がいやでも耳に入ってくる。

「アサヒ、トマコ、パコダ、クッシー…この4つの地方魔法中学校は無事だ。しかし、まるで戦力にならん。ゆえに、君たちサポロ中学在校生60人だけであいつらを倒す!」

オー!という威勢のいい声が聞こえる。


「トマコに行けばなぜおまえらがエリートと言われるかわかるだろう。年齢なんか関係ない。トマコの住民の命はおまえらにかかっている。」

再びオー!という声が響く。


「もし、オレたちがサポロに留まれば、敵は、サポロを狙う。どこであろうと敵は私とリコリスのいるところを狙うだろう。ゆえに、オレたちは全員で固まってトマコへ行く。トマコへ行くことでトマコは敵の標的となる。リコリスとおまえら60人の才能ある人間。オレたちは餌であり武器であり防具だ!」

ダン!と車内の装甲を叩く音がした。

「オレたちが腑抜けなら!トマコの住民は皆殺しだ!しかし、オレたちの働きによっては、住民を誰1人死なせず、守ることができるだろう!!!」

オー!とひときわ大きな声が響いた。







ノースヒロシマを超えて、チトッセにさしかかった。

移動時間とは退屈なもので、どうでもいいことでも話題にしたくなる。


「合宿のご飯食べてみたかったなー。

すごくきつい合宿だけど、飯がうまいから頑張れるっていうじゃないですか?食べてみたかったなー」

「さすが食べ盛りの蜜柑くん!」

「安心したまえ!僕らはきっと食べられると思うよ!」

「まじで!?やったー!」


蜜柑と双子が談笑する中、蒼は低い声で言った。

「 オレたちはサポロから目を逸らさせるため、囮として、トマコに行くんだよな? トマコの住民にさぞかし疎んじがられるだろうぜ」

「 まぁ、バレればねぇ…♡」


「 えっそれって?どういう?」

蜜柑も興味を持った。リコリスの解説を待つ。


「…敵さん、複数の場所を同時に誰にも気づかれず狙えるでしょ?これほど怖いものはないわ。ノースアイランド全てが人質同然♡ とはいっても、私ならこの小隊ごと守ることはできる。それで固まって移動してるってわけ。呪躯も私を最優先で狙ってくるでしょうね」

「 ってことは、オレたちが行けばトマコが標的になるってこと?なんでそんなこと。」


蒼が答えた。

「ノースアイランドの中核都市にこれ以上のダメージはヤバイ。ただでさえ、ノースアイランドは孤立してるんだし。」


「 は!?そんな理由で!?」

「情報規制が敷かれているけどね。ノースアイランドの孤立もパコダの件も呪骸が関わっているのよ」






トマコに到着した。住民は大きな横断幕を抱えている。ゆるキャラのトマホッキの着ぐるみがいた。


「英雄リコリス、伝説の軍人ゼブラを歓迎する。トマコ市住民一同」

「ホッキ貝が名産です。サポロの方、是非食べてって。」


名物のホッキカレーが振舞われた。うまい。

なんだこれ。オレたち、サッカー選手でもないのに。


戸惑う蜜柑にバナナが言う。

「サポロと地方の魔法学校の格の違いってやつさ。サポロの教員は20年前の戦争の英雄やら、科学、医療、スポーツ、心理、さまざまな業界の開拓者でありスペシャリスト。対して地方の魔法学校の教員は、彼らの教え子のひよっこ諸君」

レモンが言う。

「集まる生徒の質も教員の質もサポロと地方じゃ段違い。」

『ぶっちゃけ、サポロの中学1年生は地方の高等部より強いよ』


リコリスが言う。

「宿泊する場所は決まっているわ。明日は早朝4時に起きてもらう。さっさと支度なさい♡」







蜜柑は共同風呂に向かった。

明日からどんな生活が待っているかわからない。実家に帰れるかもわからない。わかっているのは呪躯とかいう未知の敵と戦わないといけないということ。そして、俺たちがここにいるせいでトマコが敵に狙われるということ。


憂鬱な気分で風呂の扉を開けると、聞いていたとおり、蒼が先に入っていた。

蒼は立ち上がった。


「お前、髪、銀色なんだ?」

相手は肩を震わせた。

「強そうな色だなー。隠してるんだろ?目立つとしんどいことあるよな。誰にもいわねえよ」


蒼はふたたび湯船に戻った。

「…おまえ…おれの風呂のときは誰も入れないの、知らなかったのか」

「え?先生に今行けって言われたんだけど。」


舌打ちする蒼のとなりに座って、蜜柑も湯につかる。

蒼は蜜柑の頬や腹を指差した。あちこち血が滲んでいる。

「…それ」

「ああ、あいつ、クッソ思いっきり、おれにだけ殴りやがって、ぜってー将来仕返しするわ。」

「ゼブラに喧嘩うるのが悪い」

「ゼブラ? あ、いや、たまにテレビで聞いたことはあったけど…あれって軍人だろ?てっきり、もっといかつい人かと…」


城戸と桃は風呂を終えて部屋で談笑していた。

「20年前の対呪躯戦のときはね、色彩魔法の軍事利用を内部でかけあって、軍の設備ぜーんぶに色彩魔法をかけたのよ。それを脅威に思ったのか、呪躯は様子見に徹したわ。そこをリコリスがバーン!って倒してくれたの」

(そりゃ一騎当千の活躍のリコリス先生もすごいけど…)

「城戸先生もすごいですね!その、上官や違う部署の人とも掛け合うなんて。当時は色彩魔法の実用性どころか存在すら疑問視されていたのに…」

「あはは。だって、試しにちょっとうってみたらさ、ただの鉛玉じゃ、デコピンくらいのダメージすらなかったんだもん。勘でエンチャントしたら敵の肩を吹っ飛ばせてさ、そしたら、みんなにも使ってほしいと思うじゃない?」

「勘……」

「色彩魔法は、黒獣にはすごい効果を発揮するでしょ。」

「は…はい。」

「なんでそれを呪躯に転用しようかと思ったのかっていうと、完全に直感なのよ」

「あはは…」


桃は複雑な気持ちだった。今日、蜜柑にあんな、あんな痣だらけになるような大けがを負わせた張本人。その人を責めることすらできず、愛想笑いをしてしまう。そんな私って一体なんなんだろう。

目から涙が滲んできて、それをごまかすためにトイレに立った。

次は、何が相手でも、きっと大好きな人を守る。そんな風に思って、気持ちの整理をつけた。








「おれ、きっといつかゼブラをぶん殴ってやろうと思うわ。3倍返しだな!うん。」

蒼は怪訝な顔で蜜柑をみた。

「…二度と会いたくないとか思わないの」

「あ?なんでだよ。むしろおれは城戸に感謝すらしてるね。あいつ以上の恐怖なんかそうそうねえよ!」

「……」

「なんだよ。よく見りゃおまえの方があちこち傷だらけじゃねえか。腕とか、ひっでえ。古そうだし、もう、しみないのか?」

「…おい、お前一旦あがれ」

「え?いや、俺まだ入ったばかりだから」

蒼が殺気を出して、蜜柑がゼブラにやられた所を指差す。


(やばいこれ、いま一番痛いところを蹴られるやつだ)

蜜柑は言われた通り、上がった。


早口でお湯に呪文をかける

「このお湯、全部塩水にしてやった。さぞ傷口にしみるだろうさ。ゆっくりつかっていけよ?」

蒼は軽く笑いながらそう言って出て行った。


蜜柑は魔法のかかった風呂をみた。

(塩水の風呂か……傷口に塩をぬるというし、痛そうだな。まあ、どのくらい痛いか試してみるのもいいか。殴れまくった瞬間よりは痛くないだろう。)

…恐る恐る、蜜柑は風呂に入った。思ったより痛くない。痛みを我慢して入っていた先ほどより痛くない。むしろ傷が癒えるような? 

お湯は少し白くなっていた。

「…もしかして…温泉にしてくれた…?」


脱衣室で蒼は舌打ちしながら腕をみた。心があまりにも傷ついているときは、心と身体のバランスをとりたくって、つい自分の身体を傷つけてしまうことがある。







真夜中、生徒がみんな寝静まったあと、トマコ市近傍にある地球岬でゼブラとリコリスが望遠鏡で海を覗いている。

昨日まで存在しなかった島があると報告を受けたのだ。


「トマコ市から海上距離10km…。こんな近くに拠点を置かれるとは。全く舐められたものだな。」

「一日であんまりにも事が進んで笑えてきちゃう♡…あたしが行く?」

「あぁ。これ以上、トマコが攻撃されるまえに行動しよう。プロフェッサーも朝には研究員を連れてこっちに来るそうだ。それを待って、明朝の出発にしよう。」

「彼と2人で?」

「優しいな。お前は…。蒼と蜜柑は連れて行け。どのみちあいつらも敵の標的にされる。」

「ゼミ生全員連れて行っていいかしら?」

「桃は置いていってほしいな。私が死んだら後を任せたい。」

「…明日、話してみるわ。」

「今日は言わないのか」

「今日は色々あったもの。頭の整理の時間が必要よ。」


桃「地球岬って名前がかっこいいよね!」

レモンとバナナ『蜜柑君とのデートスポットにピッタリだね!』

桃「きゃあああああ!」

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