表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

色彩魔法学校 -14[喰われる]

俺は嫌な予感がした。

「先生、いますぐ桃を探しに行きたいです」

リコリス先生は右手をあちこちに伸ばして気配を探ってくれた。

「おかしい。桃ちゃんの気配を感じないわ」


蒼が戻ってきた。肩をすくめていう。


「桃、行っちゃったよ」

「どういうこと?」

「敵の操縦する大型の空飛ぶ黒獣に乗って、しかも桃みずからステルス魔法をかけている」


俺は戸惑った。桃が裏切るわけがない。

「それは、敵?じゃなくて味方っていう可能性は?」

先生も同じ気持ちだったようだ。

「まさかプロフェッサーが来たのでは?」

蒼は舌打ちしながら言った。

「呪躯の気配がしたよ。俺たちを見張っていた、あの巨大な空飛ぶ恐竜のような黒獣を操る呪躯さ。あいつ、どういうつもりなんだろうな」









みんなで桃を探したけれど桃がみつからない。

狼狽える蜜柑にバナナが言う。

「迷っているな蜜柑。自己の内部に矛盾を抱えていない人なんていないさ」

レモンも言う。

「何事も建設的にいかないといけないよ」

俺は考えた。そうだな、どうやって桃をみつけるか考えよう。

「そういえば、バナナさんって、遠く離れたレモンさんと話してたことがあるよな。テレパシー?」


バナナは右手を前にだして人差し指をたて、ちっちっと舌をならした。

「あれはねえ、シンクロっていうんだ。二人の感情の色が同じになったとき…」

蜜柑はバナナの両肩を掴んだ。

「おい、シンクロってどうやるんだ!」

「え、僕とレモンは双子だからできるけど」

「僕とレモンはいつも一緒だからできるけど」

『君と桃ちゃんがシンクロ?』


「感情の色を探るんだな!」

俺は目を瞑った。桃の感情の色…。愛情の色、好意の色、情熱の色、希望の色。それを全部混ぜ込んで、桃を探る。……ここか!


桃は呪躯と話をしていた。呪躯は、目と口が縫い付けられていて、ウググググと喋る。桃は目を瞑って優しく抱きしめる。その瞬間、呪躯は大きく大きくなって、桃を丸呑みした。





そのとき、ゴゴという音がして、巨大な呪い躯が現れた。蜜柑がそれを指差して行った。

「あれだ。あそこに桃がいる」





全員で大きな呪躯のところに行く。リコリスが嬉しそうに顔をひきつらせた。

「あれ、今回の一軍の最強クラスよ」

「てことは」

「あれを倒せば、敵は退き始めるかもしれない」


レモンとバナナが茶化した。

「がんばれ我らが魔王」

「君なら勝てる君ならできる」


蒼が吹き飛ばされた。

「……」

「……」


蜜柑が叫ぶ。

「先生!作戦は!?」

リコリスは冷静で、魔法でできたボールに乗って頬杖をついている。

「それを考えるのはレモンとバナナの仕事よ」


立ち上がる蒼。

「なめるな…」

レッドグローブが蒼にエンチャントして身体能力を強化。蜜柑も攻撃の準備をする。


双子が何かに気づいた。

「…あの呪躯」

「なにか喋ってる?」


(色がほしい…色が…僕にも色さえあれば…僕が僕になれるんだ。僕は何ものでもない、僕になりたい)


「色が…ほしいとな?」

「ちょっと蜜柑、蒼、攻撃やめい」


「あ!?」

「そんないきなり言われても発動したものは止められ…」


ドオオン


(おまえら…俺を攻撃する…あいつらと終わり。ああ苦しい。苦しい。嫌いだ。みんなみんな嫌いだ)


敵は狙いを蜜柑と蒼にしぼったようだ。


「あいつ。世の中に絶望しているな」

「間違いない。まったく、放っておけないなあ」

「世の中全て笑顔に変えて」

「一人残らず幸せにするのが僕らのモットー」


レモンが真剣な顔をして蒼のところに飛んできた。

「魔王…あいつに触れるか?」

「ああ!!?」

「僕らがあいつに侵入して、色の魔法をぶちかます」

「はあ!?」


双子が蒼の右腕を掴んだ触れる。

「魔王頼んだ!」

「!?」

蒼は攻撃をかわすついでに呪躯の腕に触れた。

敵の動きがとまった。








桃は、巨大な生物の骨がたくさん落ちた洞窟にいた。

(なんだろここ。洞窟みたい。蒼先輩のナイトメア?違うなぁ。もっと、暗くて、深くて。黒くて白くて)


…そうか。ここ、色がないんだ。不思議。まるで、生と死の境にきたみたい。


洞窟を抜けると、灰色の海の真ん中に浮かぶ孤島に立っていた。ときどき、墨汁をこぼしたような黒い流れがくる。


海の底は、たくさんの呪骸の死体がある。

苦しんでいる呪骸が桃の右足をつかもうとした。桃は不思議と怖くなかった。桃はその手をとって、呪躯をひっぱりあげてやった。


その呪骸は、目と口が糸で縫いつけられていた。桃が尋ねると、うなづいたり、指をさしたりして答えてくれた。両方の手首には平行に並んだ深い切り傷。


呪骸の手を握ると、声が聞こえた。

「苦しい。ここから出たい。なんで俺だけこんな目にあうんだ。もっと、ふつうに、いきたかった」

呪骸は、小学2年生くらいの身長だった。桃は彼と行動を共にすることにした。






そらに黄色の色の花火が浮かんだ。レモンとバナナが来たようだ。

大道芸の始まりのような明るくて大きな声。

「どうもお客さん!」

「桃ちゃんもいたか!ちょうどいいや!」

『泣く子も笑う大道芸人!レモンとバナナのパフォーマンスをごらんあれ!』


何も入っていないはずの帽子から黄色の鳥が飛びでて空を駆け回ったり、色彩魔法でできた細い綱をバナナが持ってレモンが渡ったり、空中ブランコや動物のパフォーマンス。すごくたのしい大道芸だった。呪躯も少し楽しそうにしてくれた。






巨大な呪躯の…敵の動きがとまった。リコリスが緊迫した声を掛ける。

「蒼、状況は?」

「恨みの色が少し消えて、楽しんでいるように見える」






目と口を縫い付けられた呪躯は桃にウグググと喋って、一人で歩き出す。桃は跡を追うが、彼女はトポンと川に入って消えてしまった。






巨大な呪躯。その腹が一部、乾いた紙粘土のようにポロっととれて、桃が出てきた。レモンとバナナの意識も戻ってきたようだ。


「桃が出てきたってことは、もう遠慮はいらねえな!」

「いくわよ蜜柑。私とあなたの魔法を合わせてとどめをさす!」

蜜柑とリコリスは情熱の赤の魔法を打った。

「ライジング・サン」

巨大な呪躯は燃えるような炎のなかで苦しんでいた。蜜柑とリコリスは再開した桃に抱きついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ