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16 酷吐告白(こくはく)



 昼過ぎに家に着く。シャワーをぼんやりしながら浴びてパジャマを着る。

 きぶんがわるく食べる気にもなれずお昼ゴハンをお断る。

 お母さんには「ちょっと休めば落ち着くって」とかなんとか言いながらソファに転がった。


さいあくだ。

しりたくなかった。

どうしよう。

きもちわるい。

きもちわるいのは気分だけなんだ。

まじめにぼくやみんなの面倒みてくれるラパードはきもちわるくないんだよ。

メルトちゃんは朝から白い診察室にいたけれど現実を生きているんだろうか?それとも?


こんな気分で眠ってはいけないし眠る気にもなれない。


 アイツはあの青い髪に付いている白い石を現実まで持ってこいと言っていた。

 今の黒い髪には付いていないアレだ。

 持っていけばあの診察室の夢に辿り着けなくなる。夢堕ちから抜け出せる。

 それだけならまだいい。

 あの変態的なおかしな医者は何をしようとしているんだろう。現実の病院をナイショにヘンテコに塗り替えて、別世界にして、広げたりするのだろうか?

 ラパードを、メルトちゃんを、どうするつもりなんだろうか?

 わからない。ぼくの手には負えない。


こわい。

ふるえる。

どうしよう。


 さっきの夢は全部、夢に落ちていたいぼくが抵抗して作り出してしまった夢だったとしたら?

 だとしたらもうあの白い診察室には行かないのだろうか?


わからない。

こんらんする。

てんじょうがまわる。

まわってはもどるをくりかえす。






赤い紅い凹凸のある広々とした平野の中心にむかってある小さい孔の群の真中に大きな深い穴がある。

その暗く暗い見えない奥底から、今日の酷く陰鬱な出来事を見通そうと深く刺さるように見詰め込んでくる。



「うわぁ!!!」「ぐぁっ」

気がつくと目の前を突き飛ばしていた。

めちゃくちゃ驚いた。

尻もちをついたラパードが転がりながら痛がっている。

「いいい…いってぇ…」

しまった。

寝てしまったのだ。

なんて寝太郎なんだぼくは!

うかつだった。

痛いのを我慢しながらもラパードは飛び起きて肩をつかんでくる。その目で見ないで欲しい。メガネなんで頭にかけてんのさこんな時に限って!よく診えるのかもしれないけれど今はダメなんだよ!

「いや驚かせたろうけどそんなことはいい!治したばっかりなのにそんなズッボロになって!即治療だ横になれ!」

腕を掴まれ部屋の真ん中の診察台へズンズン連れていかれる。

カレーを食べている最中だったらしいメルトちゃんがポカンと口を開けて驚いている前を、思わぬ力で引っ張られていく。


 また診察されたらどこまで見えてしまうんだろうか。あの赤い目はどこまで見透してしまうんだろうか?

と、考えると逃げ出さなければいけない気がしてくる。


その上空を虹色の星がゆっくり動く。

アレからあのディスプレイで偽の月が見ているのだろうかと思うとカチ割りたくなる。


そうだ逃げよう。四角の視覚から死角へ。

部屋の外は監視されないという確信がなぜかある。


「大丈夫!元気元気だし!」

手を振り払う。

「うぉっ!? は?」

ぐらつきながらまた転ばないよう踏ん張りながら、ラパードは聞き返してくる。

「なんかぼく扉ばーんっして出かけたい気分になったし、行ってくるね!!」

「なんでまた……治療は」

 訝しんだラパードに背を向けて扉へ急いで駆ける。着く。体を押し込む。


白い扉は向こう開きに

バーン

と開く。



青緑の機械の並ぶ研究室へ

ぼくは転がり込んだ。




ああああああああああああああ



やめて何やってんだぼくは

バカバカ大バカ

どこかで紫と黄色の蛇が嗤ってイル

足から崩れ落ちてないで

はやく扉を閉めるんだ

ほらはやく閉めないと


「んん??なんの機械だ?何かの研究機関だろうか?」

なんでもう中にいるんだ。ぼくをいつ通り越したんだ。

「ちがうちがうんだよコレはあぶないよ帰るよ!」

ぼくの夢らしく現実で見せられてきた物より雑で作りが荒いくせに、あの小さかった窓は大きく全開だ。

あの窓に吸い込まれるように寄るラパードを掴んで引き剥がそうとすると、あの変態から聞いた話がボイスチェンジャーにかけられた変な声で流れ始める。

窓の向こうには人間の中身の珊瑚の森が詳細に有る。


ぼくが何も出来ず固まっている間に話が終わってしまったのがわかってしまう。

すべて伝わってしまったのだと。

掴んだ手はふるえはじめる。ぼくばかり震えて、ラパードはピクリともしない。


「そうか。俺って死んでたんだ」

あぁ

なんて最悪のコクハクなんだ。

夢が勝手に吐き出した。


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