13 タコヤキ診療所
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やわらいだ羊のようなハープシコードの歌声で目を覚ます。
眠そうな歩みの音脈が時間の経過をゆっくりと進む。
視界はぼやけて、やや白い。
「はい貴方は今回でもう大丈夫!
また猩々(しょうじょう)が出たら来てください。」
どこか聞き覚えのある声がせわしなく、少し遠くで聞こえる。
ショウジョウと聞こえるけれど、タヌキのイメージが湧く。
「はい次、んープロテクト内がかぶれてますな。一時解除からの内部エテール投与しますね。吸ってーはいてーはい解除。
おっと!この自己犠牲躊躇には自己防衛権利添えますよ。おにいさんこのままじゃエテール投与じゃ間に合いませんからね多めに入れますけども。
自分をだいじに大事ーにして休んでくださいね。近い内にまた来てください。」
ぼんやりと2歩分ほど前に進む。
ぼくは順番に並んでいるんだろうか。
「んー……これ…は…とにかくこのギムカンっていうモノを一旦降ろさないとダメですね…あとよく噛んで食べてください。いつもの足しておきますね」
またぼんやりと2歩分進む。
そうだ思い出した。
検査の順番待ちだ。
「ふー 次どうぞ!」
あっえっぼくか。
ぼやけた視界に、青ノリがいっぱい乗った、たこ焼き頭のお医者さんがうつる。
紅生姜の目がぼくを見つめている気がする。
「えー…アナタは初診の…
ん…んん??
サガ…???」
ぼくの夢の中の名前だ!
って思っても声は出ない。
「この点滅が何か訴えかけている気もするが……サッパリわからんな!!」
わかった。このたこ焼きは、タコヤキ君というか…ラパードだ。
「この『患者にエイド』たいむにこの形式で来るのは初だな。記録記録」
あの…記録もいいけどどうしたらいいのかよくわからない。
「…やはりこの意味不明患者群は人間の私的感覚域の一部を具現化した生体部位だ説がほぼ確定の域に達したな!」
テンションあげてむずかしーこと言ってないで、どうにかしてほしい。
「おっと診察診察…初診による診断のみ治療は後日…?はぁ?まーたこれか…知るか!」
ラパードは多分ぼくである硬くて丸い頭部サイズの球をツルツルスベスベと遠慮なく触る。
「このプロテクト内の濃紺と透明ラメのマーブルの奥域ある様子は…夢の見過ぎによる疲労、意識と認識の混濁…」
紅生姜なんかじゃない赤い目が透明ラメ部位を透り抜けて、奥へジリジリと視線を通す。
「とりあえず診察のみの場合、所要時間内は短すぎで全然治せん。後でまたじっくり診よう。人間体の方が診やすいからな…。メルトもそうだった。お前がそんな疲れているとは…ロザリィ氏往診に気をとられ過ぎて気づかんかったな…スマンな」
喋りながら何やらビンやチューブの薬を混ぜてツルツル面にすり込み始めた。全然染み込まないけど意味はあるんだろうか…
何か書き込んでいた紙を一枚外して、ぼくのすぐ横に差し込む。
近過ぎてよく見えない紙の内容を見ようとしていると、視界はよりぼやけて灰色しか見えなくなって、暗くなった。




