12 病院ダンジョン
6限目の授業が終わり、学校を出る。
今日はぼくは部活は出禁だ。
できんなので、部活はできん。
病院へ行くんだ。
校門前にお母さんのピンクのテナーが止まっている。
母「ソータお帰り。今日大丈夫だった?」
ソウタ「まぁ…今日は大丈夫だったよ」
頑張ってはみたけど、 6限目は丸々寝てたし他もウトウトしてたのは言わないでおく。
母「そうけーならいいんけど。乗ってー。病院行くよ」
夢ヶ丘という小さめの山の頂上にぼくの通う中学校があり、中腹に住宅街、下の方に小学校、病院、駅がある。
小さい山とはいえ…毎日登る身にもなってほしい!
見晴らしとかちょっとしか足しにならないから、平地がよかった…
授業中寝てしまっていたからか、今は目も頭もスッキリしている。
移動中に寝ようと思ってたのにな。
夢ヶ丘病院。一通りの科が入ってる総合病院。
最近テレビで、睡眠外来がスゴイ!みたいのをやっていた気がする。
今は寝ぼけてないし大丈夫だ!と、お母さんの後に続いて病院に入る。
自動ドアを抜けるとそこは
ダンジョン街だった。
院内は白い洋神殿風の模様のある柱が多数立っていて、受付にはツタがからんでいる。
RPGに出てきそうな不思議めいたフォントなのに、漢字で受付と書いてあるのが読める。
受付のおねえさんも皮の兜に鎧にやさしいほほえみ。
ゴールド袋とやくそうにが石の台に乗っている。
おかしなRPG風の場所と重なって、去年来た時のままの普通の病院もかすかに見える。ぼくは起きていると思って歩いているけれど、また寝ぼけているんだろう。
受付に向かう亜麻色の髪で青いアーマーの魔法使いお姉さんがお母さんな気がする。
なんで?
母「ソータ!受付終わったし行くよー」
いつもの黒髪地味メガネのお母さんもかすかに見えて、よく分からなくなる。
ついていかなければ。
ひるがえる赤マントを追う。
歩いていけどもダンジョン街。
廊下じゃなく茶色の土に見えるけれど歩き心地はビニール系の床。
多分壁はコンクリで、石細工の柱なんかじゃないはずだ。
下り坂に見えるけれど多分平ら。
派手なヤモリや、頭が獣の半裸おじさん、宙を走る虹の水。
魔法のプレートにみえる多分タブレットを持った看護師さん。
頭はスッキリしているのに、目は寝ていて夢と現を交互する。
母「あ、お父さんも来たんやね」
と、お母さんの見た方を見ると白い髪に黒服の魔術師風のお兄さんがこちらに歩いてきているがこれもお父さん…みたいだ。え…?イケメンだ…??いつものヒゲおじさんじゃない。でもいつものお父さんも見える気もする。
父「早く帰れたから来たわ。診察終わったか?」
その後ろを頭がディスプレイな女の人が通る。どこかで見たことがある。
ソータ「まだだよー」
父「そうかー」
お父さんはそう言ってぼくの横に座る。
腰の剣と薬瓶がカチャリと音をたてるが、現実ではカバンと携帯だ。
「サガミソウタさーん一番診察室どうぞー」
ゴゥ…と石の扉が開く。
中へと生暖かい風が吹き込んだのも気のせいなんだろうか。
「それは夢落ち症候群の可能性がありますね…」
頭が平たい三日月型で、やんわりと光っているが体は普通に白衣と聴診器だ。診察室のはずの宇宙船の窓では銀河が回っている。
月の表(よく見せる側?)は目パッチリで、その裏側の目は閉じている。
母「ゆ、夢オチ…?」
一通りフツウの診察をされてからそう言われた。
医者「はい。お伝えいただいた症状とソウタ君の様子からその可能性が高いです」
へぇーこの夢見すぎちゃうのって病気だったんだ…
医者「これから検査するので…隣の部屋の13番の椅子に座って下さい」
隣の部屋の中は夜の宙だった。壁は紺色に星が散りばめられている。
壁なのに奥行きが感じられる。
星をよくよく見ると蛍光色とりどりのブロックの塊だったり、ぶよぶよ動いていたり。
サイケデリックなコンペイトウも星のふりをして軌道をゆっくり回っている。
沢山のリクライニングソファが並んでいる。
13番の椅子以外は満員だ。
目を閉じた塗装がされたヘッドセットをかぶっている人達が、眠りこんでいる。
医者「さぁ座って」
月が浮いていて、話しかけてきたように見えた。
柔らかな手触りと座り心地のソファに沈むと、ため息が出た。
お月さまがぼくに夜をかぶせて、ゆ っ くりと、閉じた。




