11 夢見ガチな日々。
「おーいサガミン、おきてるー?」
そうだぼくは黒い木ばかり生える森の中の鮮やかな赤い赤い石じゃない。ので、開きぱなしで見ていない目はきちんと働かせてこらし、返事をしなければいけない。
ソータ「ごめんごめん起きてるよー」
そうだそうだぼくはサガミソウタだ。
そしてとなりのクラスで剣道部のヤギくん。ぼくんちからやや近所に住んでて、ちょっと愉快で、目が細い。
ヤギ「目ぇあけてめっっちゃボヤーっとしてたよ。最近やばいよねー」
桃色のあやとりの川と山の間をグリコポーズジャンプでわーいわーいと跳び抜けつつ
「そうだね」
とかろうじて返事する。
ヤギ「昨日の部活のときに来てた全国大会行く予定のマジナミパイセンの現部員100人切りカッコ31人カケル3で実質93人切りのときさぁ…サガミン1人だけが2回も一本キメてたよな」
棚の上で先生が扇子をヒラヒラさせてノリノリの踊りをしていたような気がしたぼくはそうとうキマってンだろうな。そして昨日のことは誰か強い先輩のスキを見つけ、突いた一瞬が二通りあった事だけは覚えてる。
ヤギ「で、マジナミパイセンから1対1申し込まれて、そしたら後ろ向いて正座し出して動かなくなんの。で、面のスキマ覗き込んだらサガミン寝てたんだけど…あれ、どしたん?」
また、話の途中一瞬がくりと意識が落ちて、ぼくは布団と座布団の決戦直前で、自分は座布団副団長なので装具のスペアを持っていかなければいけないのに。
いや持って行かなくていい。
確かぼくが寝てしまった話。多分そうだった気がする。
ソータ「そうなんだよー最近ねむすぎて逆に冴えてたりガクバタしたりよくわからなくて大変でさ、今日病院行くんだよ」
ヤギ「ジーマーで?そりゃ行った方がいいよ。あと同じクラスの戸田さんがイジられてたときにあのジャイヤン湯水にすごい迫力でガンつけていってたけど…」
また意識が暗くなっていく…いじめっ子湯水が初めて見せた慌てた顔は爽快な蒼海だった…
ヤギ「おーいおっきろーさがみーん」
ハッ!
しまった!今起きてはいけなかった!
サナギの中で死にものぐるいでドロドロと体を溶かし続け、やっとのことで変えおわり、羽化を…羽化を!している最中!だったのに!放棄してきてしまった!きちんと羽を開くため戻らなければ飛べずに一生を終えてしまう!という焦燥感を、危機感を、カンチガイだと自分に言い聞かせる。
ソータ「ごめんごめんーやっぱ休み時間だけでも寝とかないとヤバいかも」
アキト「おーいオレら次化学だから移動だぞっ」
寝る時間はなかったかなしい。
ソータ「ヤバッ寝る暇無かった…えーと化学かがくっと」
立ち上がってから少し待つ。
待つ。
おや?ぼくは待っていないといけない訳じゃないんだっけどうだっけ。
ぼくはワンニャン大集合地点じゃないのでここで待っていても犬猫はこない。待たなくていい。
ヤギ「化学が、がくっとだな(笑)」
そうだ化学室!行くんだ!
そして、踏み出す。
踏み込んだ足元が震源地になったかのようにたわんでグラグラゆれたけれど周りの皆は反応していないのでこれはぼくが寝ぼけているんだろうな。
グラグラ揺れ続ける廊下をたわみながら歩くフラフラ。
グラグラガクガク。
おっと教科書とノート忘れた。
あっと持ってた。
窓がユラユラソーダ飴だと思ったりしてしまうのはとても楽しいけれどまちがいだと訂正しながらニンゲンのフリをがんばるのはツライ。
もっとゆっくり夢見たい。
ねむい。
ねていたい。




