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『16歳前日 ①』

 グラシア大陸のずっと東にある孤島「ローエングリフ島」

 そこは緑が豊富で、楽園のような小島。

 この島には、7人の小人達と、一人の少年が暮らしている。


 魔王との契約である16歳の誕生日は、ついに明日へと迫っていた。


 「アカシ!海に食糧調達に行ってくるねー!」


 短髪黒髪の少年が、島中に響き渡る声で叫びながら、彼らの住まいである小屋の前に座る赤い帽子の小人に向かって手を二、三回振ると、踵を返して銛を手に海につながる山道を走っていく。


 アカシと呼ばれた赤い帽子を被った小人は、熱した金属を打つ手を止め、眩しそうにその後ろ姿に目をやった。

 

 「いよいよ今日が最後の日やな・・・・。」


 少年を見送るアカシ。

 その瞳には複雑な感情が宿っている。

 

 「感慨に浸っとるとこ悪いのダガネ、今日は()()ダガネ、いくらあの子でも無理ダガネ」


 黒い帽子を被った小人――――ダークが、アカシの後ろの扉から顔だけ出して、呆れた口調でアカシに話しかけた。


 「ダーク!何をいってんねん!儂の作った自慢の(もり)を持って行ったんやから、大量や!例えシケでも大量や!」


 そう言いながら顔を真っ赤にしたアカシは、再び金槌で熱した金属を叩き始める。

 先ほどより大きく音を出して金属を叩く事で、黒い帽子の小人――――ダークに立ち去れと無言の圧力を掛け始めた。

 

 「やれやれダガネ・・・・」一端は小屋に戻ろうとしたダークだが、ピタリと足を止めた。


 「いくら名工アカシが打った道具でも、肝心の魚がいなければ捕れないダガネ」


 そんな事も分からないのかとばかり、ダークが深いため息を見せ、小屋に戻ろうとしたその時――――


 「ダーク!!お前の揚げ足捕るところ、昔からむかつくねん!」


 アカシが咄嗟にダークに向かって金槌を投げつけた。


 「ひっ!」短い叫び声と共に、ダークは思わず身体をこわばらせて目を閉じる。 


 しかし、アカシが投げた金槌は、ダークに当たる寸前のところで、突然音もなく現れた黄色い帽子を被った小人――――カレーが、難なくキャッチした。


 「・・・・アカシ。駄目だよ。道具を粗末にしたら、道具が可哀想だよ・・・・」


 カレーが、ぼそぼそと小声で言葉を発している。小風が吹くだけで聞き逃してしまいそうな声だ。


 「ちいっ!カレーが邪魔せえへんかったら、一撃喰らわせてやったったのに!」


 鼻息荒く残念がるアカシだが、「カレーが居るの確認してから、投げたくせにダガネ」とダークは笑っている。

 

 「・・・・これ、返すね」カレーはゆっくりとした動きでアカシに金槌を投げ返した。


 「ちょ!」 慌ててアカシは身をよじって金槌をかわす。

 その横をもの凄いスピードで金槌が通過していき、直撃した岩が爆散した。


 舞い上がった粉塵にむせながらアカシは、自分が元居た場所に視線を送り絶句した。

 

 そこには粉々に砕けた岩と、金槌を構成していたであろう金属片が散らばっていたからだ。


 咄嗟(とっさ)にかわさなければ儂、死んでたやん。

 アカシの背中に冷たいものが流れる。


 「お前、力加減下手なんやから、投げんなよ」


 「・・・・ごめんちゃい」


 アカシの抗議に、カレーはぼそぼそと小声で謝罪したが、反省したようには見えない。アカシは思わずぶん殴ってやりたい衝動に駆られたが、戦闘力の高いカレーに敵うはずがないのでぐっとこらえる。


 そんなアカシの様子を目ざとく見つけたダークが、「あれ?怒んないんダガネ?大事な商売道具壊されたんダガネ?」と挑発した。


 瞬間的に顔色が帽子と同じくらい真っ赤になったアカシが、「しばいたる!」とダークに向かって拳を振りかぶった。


 ダークはちらりとカレーに救いの目線を送ったが、カレーに動く気配はない。


 「カレーさん!儂の秘蔵のスパイスを一つ差し上げるダ――――」


 言い終わる前にアカシの拳がダークの顔面に到達した・・・・、かに見えたが、すんでのところでカレーがアカシの拳を小指一本で止めていた。


 「ぬうううう!!!」


 アカシがさらに顔を真っ赤にして何度もダークの顔面を殴ろうとするが、全てカレーが小指一本止めてしまう。数分後には、バテて地面に膝をついて肩で息をするアカシと、涼しい顔でアカシを見下ろしているカレーの姿があった。


 「さすが武術のマスターダガネ」


 二人の様子を見て感心しているダークのもとに、カレーが歩み寄ってきた。


 「・・・・約束のスパイス頂戴ね。嘘ついたらデコピン・・・・だからね」


 「え?何って言ったダガネ?」


 ぼそぼそと喋るカレーの声がうまく聞き取れなかったダークがカレーに向かって顔を近づけた。


 「・・・・約束破ったら、デコピンするって言ったんだよ。・・・・こんな感じでね」


 そう言いながらカレーは、目の前にあるダークの黒い帽子を中指で弾いた。


 「ぐあっ!!!!」


 ダークは首から上が消し飛ぶような錯覚に襲われ、慌てて顔を抑えなんとかその場に踏ん張った。


 今の一部始終を傍で見ていたアカシは「ありえへん・・・・」と呟いて呆然とした。


 ダークの黒い帽子の上半分が消し飛び、この世から完全に消滅してしまったのだ。


 先ほどまで真っ赤だったアカシの顔から血の気がひいて白くなっている。


 「・・・・約束、守ってよね」


 ダークはカレーのささやき声に、今度は即座に反応した。


 「だ、だだ、大丈夫ダガネ」上半分が消し飛んだ帽子を被ったままダークが笑顔を見せようとするが、その頬は引きつって苦笑いになってしまっている。


 「・・・・あとダークとアカシ、仲直りして」


 カレーがダークとアカシの顔を交互に見やった。


 「・・・・仲良くしないなら、二人ともにビンタを――――」


 「俺たち仲良しやんな?」


 「そうダガネ!」


 カレーの言葉を遮るように、慌ててダークとアカシは肩を組んで、仲が良いというところをカレーにアピールした。

 

 肩を組んだ二人を見てカレーは満足そうに頷いた。そして自分が小屋の外に出てきた理由を思い出し、二人に告げる事にした。


 「・・・・あ、そうそう、朝ごはんの用意が出来たらしいから、二人を呼びにきたんだよ」


 「おお!どおりでいい臭いがしてきてると思ったダガネ」


 「ほんまやで、はよ中に入って朝飯にしよ!」


 アカシとダークはわざとらしく肩を組んだまま、小屋の入口の方に歩みを進めた。カレーもその後について歩き始める。

  

 「アカシお前は先に食卓へ行っているダガネ。儂は部屋で新しい帽子に代えてから食卓へ行くダガネ」


 「わかったで」


 そういいながら小人達は小屋の中に吸い込まれていった。


 数分後、朝食をとりながら楽しく談笑する小人達の声が小屋の周りに響き始める。 

 そしていつもの日常が始まるのであった。

 

 明日がいよいよ運命の日。


 小人達はこの日が来るまで、少年を大切に育ててきた自負がある。

 儀式が成功する自信もある。


 明日は少年が助かれば自分たちが死ぬ日。


 しかし、小人達はいつものように振る舞っている。


 まるで、明日も明後日も同じ日々が来るかのように・・・・。

黒い帽子の小人 → ダーク

赤い帽子の小人 → アカシ

白い帽子の小人 → ハクエイ

ピンクの帽子の小人 → マツオカ

青い帽子の小人 → アオキ

黄色い帽子の小人 → カレー

緑の帽子の小人 → グリン


です。一気に登場人物増えるとややこしいですね。そして主人公3行しか出てないし。

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