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【Rhapsodie en rouge】 10

「っ……!」

「ちょ、大丈夫?」

我に返った俺が数段の階段でよろめいたのに気付いた彼女が駆け寄ってくる。



 彼女だ。

 俺がこの手で殺めた彼女だ。


 だとしたら、なぜ彼女は生きている?

 だとしたら、なぜ俺は彼女をこの手にかけた?



「くっ……!」

 再び脳裏を駆け抜ける頭痛に俺は顔をしかめ、彼女から目をそらす。



 いかなければ。

 ここから、彼女から、離れなければ。


 〝また〟俺は、彼女を殺めてしまう。

 〝また〟俺らは、繰り返してしまう。



 頭痛とともに滅茶苦茶になりそうな頭の中、俺の体はこの場から離れること選び。

 そして俺は、螺旋階段を駆け上った。




 脳裏ではまた、俺の知らないはずの景色が次々と現れては消えていく。




 満月を背に現れた、巨大な船を引く真っ白いワンピースの少女の姿。 


『月が、綺麗ですね』

 そう言った少女の顔は。


 手のひらいっぱいに貝殻を乗せた少女の顔は。


『……たす、けて』

 暗闇の中で座り込んでいた少女は、膝を抱えて震えていた。


 まるで俺を庇うように両腕を広げた後姿。


『……ごめんね』

 無残になった翼を構うこともなく、俺に手を伸ばした〝彼女〟は。



 あぁ、そうだ。

 この時、彼女は。

 とてもとても、悲しそうな笑顔を浮かべていたんだ。




 そしてまた、記憶は廻る。




 パッと顔を輝かせて駆けてきた彼女の笑顔が曇り、作り笑いにかわる。


 怯えた瞳でこちらを見て、逃げるように後退り。


 まるであきらめたような笑顔で、両手を広げて俺を待ち。


 赤に沈むその横顔が、〝彼女〟と重なる。



 あぁ、そうだ。

 俺らは、ずっと、ずっと――――。


 囚われ続けている。

 この廻り続ける世界に。



 あぁ、そうだ。

 彼女は俺を――守ろうとしたんだ。


 今までの彼女の不自然な言動がつながっていく。


 俺の行動を必死に止めようとしていたのも。

 俺の言葉を気のせいだと笑っていたのも。


 すべては俺に、この世界のことを思い出させないため。


 俺がこの世界で繰り返してきた罪を、思い出させないため。


 彼女が思い出させまいとしたのは、





 ――――俺が〝彼女〟を殺したこと。

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