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【Prelude de noir】 5


 長い長い闇の中を、滑り落ち続けて。

 不意に視界が開けた、その瞬間。

「いっ!?」


 バッシャンッ――――


「なっ!?」

「ふぇっ!?」


 バッシャンッ――――


 と。


 私は水しぶきをあげて水面に落ち、そのすぐあとを追って彼が飛び込んできた。

「げほっ、げほつ……」

「あ、悪い! 大丈夫か……っ」

ほぼ同じ位置に飛び込んできた彼が上げた水しぶきをもろにかぶり、私は全身ずぶぬれだ。

 咳き込みながら顔をあげて、気まずそうに彼が目線をさまよわせているのを確認する。

 その横顔が耳まで赤くなっているのを見て私は首を傾げ、


「っ!!!!」


 ハッとして、自分の体を強く抱きしめた。

 着ている白いワンピースは水にぬれてわずかに透け、肌にぴったりと張り付いている。彼が目のやりどころに困るのも当然だろう。

「と、とりあえずこれ羽織っとけ」

彼はバッと立ち上がり、上着を私に差し出す。

 私はおずおずとそれを受け取り、濡れたワンピースの上から羽織った。

 彼としては上着だが、私が着ると太もものあたりまでの長さになる。とりあえずそれの前を閉めて人心地つくと、私は辺りを見回した。

「ここって……」

「島の地下まで落ちたみたいだ」

そこは入江のような洞窟だった。

 明かりの見える方には海が広がっており、反対側は小さいながら砂浜ができている。

「とりあえず、上がろうぜ」

私たちがいるのは砂浜から少し離れた浅瀬で、彼や私の足首を超えるほどの深さしかない。

 差し出された彼の手を取って、私たちは砂浜へと歩いた。


「あそこ、宝物庫かなんかだったのかな?」

「かもな。じゃあ俺らって侵入者避けのトラップに引っかかったわけ?」

心地よいさざ波の音に包まれて、穏やかな時間が過ぎる。

 私たちは濡れた服を乾かしがてら、のんびりとくつろいでいた。

 彼は砂まみれになるのも気にせず、砂浜に寝転んでいる。

「ん……?」

辺りを見回していると、砂浜の中に何かが輝くのが見え私は腰を上げた。

「んー、どうした?」

少しまどろんでいたらしい彼が私を見て体を起こし、あとを追ってくる。

 私たちのいた所から数歩と離れていないところにあったのは、貝殻だった。

 私の手の平より少し小さく、平たくて桃色がかっている。

「綺麗だな」

私の肩越しにそれを覗き込んだ彼の言葉に、

「うんっ!」

と、私は笑顔で頷く。

 彼の方を見ると思ったより近い距離でその黒曜の瞳と目が合って。

 しかし、彼は目を逸らすことなくふっと笑う。

「捜してみるか? この辺り」

「いいのっ!?」

私がぱっと身をひるがえしたとき、彼はすぐそばに腰をかがめて何かを拾い上げていた。

 ほら、と差し出されたのは細く巻かれたような白い貝殻だ。

「結構落ちてるみたいだな。足、気を付けろよ」

そう言いながら近くの浜辺をさらさらと手で撫でて貝殻を捜す彼に頷き、私も近くにしゃがんで貝殻を捜し始めた。

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