高校初イベント発生
その後もやはり疑問は晴れない。
いや、そんなに早く解決されてもこちらからすれば面白くないのだが。
文化部ならぬバスケ部…
何だろうか。何が違う。
授業を受けている康介の姿は、モブそのものでしかない、そう、あのクラス内でも一段と目立たない誰とでも交代可能な時には便利な立ち位置である。
そうしているうちに観察対象と目が合い、やつはにっこりとほほえもうとするところを少し慌てた様子で堪え、すぐさま自分のノートに目を移した。
ん?
あの爽やかな雰囲気が一瞬感じられた。
例えて言うならば、大きな花の蕾が徐々に膨らみ、咲きかけて咲かない、というなんともじれったい感じだろうか。
はて、ここで気になるのはなぜほほえむのをやめたのかということであるが…
「光崎さん(にっこり)、授業中に別世界を構築しないようにね(にっこり)。」
南遥が輝かしいほどの笑顔(激おこ)で注意するのであるが、日本語で別世界と言えばいいところをわざわざパラレルワールドと言うあたりが、こいつ中二病だったなと思わせるのである。
ちなみにこのとき、昌也はあきれた様子で大きくため息をついていた。
太陽が天高く昇ったところで頭が働かぬ午前が終わり、今日の一日も残すところ半分だと告げる穏やかなランチタイム is coming.
本日はちょっとしたイベントがあるようだ。
「さすがイケメンは入学早々イベントを起こしたようだな。まぁ、中身を知らなければさぞかしおモテになるでしょうねぇ。高校だとそんなものか。」
少し嫌味っぽく吐いた。
昌也が一学年上の可愛らしいハーフに攫われたせいで、今は康介と二人ぼっちなのである。
念のため言っておくが、もちろん本当に攫われたわけではない。
普通に、ごく普通に、たぶん、彼女は昼休みが終わってすぐ教室に顔を覗かせ「あの…、津田くん…って…いますか?///」と昌也をどこかへ連れて行ったのだ。
「どこへ連れて行かれたんだろうな」
康介の一言で、脳内が回想から今に引き戻される。
「どこってそりゃ人気がないところへ…はっ!まさか昌也…強引に押し倒したりしないだろうか。人がいないことをいいことに。だがしかし、昌也、だめだ、それは禁忌だ!」
「いや、女の子に呼び出されただけだろ?ちょっとばかり妄想がすぎるんじゃ…」
「いいや、昌也もいくら二次元をこよなく愛するオタクといえど、生物学的にはれっきとした男の子、オス、♂なんだ!どんなことがあってもおかしくはない。」
男の子のままでよかったんじゃないかな、と思いつつつっこめなかったのは、光崎がもう自分の世界に入り込んでしまっているせいである。
しかし、こんな場合になったときの対処法は昌也から飽きるほど聞かされている。
もう手遅れだ、と。
「よし!覗きに行こう。覗きと言ってもあれだぞ?女子の下着姿を覗きにいくというハレンチなやつではないので安心するといい。康介、そんなのんきにお母さんの愛情たっぷり手作り弁当を味わっている暇はないぞ!」
言うまでもなく、佳世は康介を引き連れ廊下を駆けてゆく。
弁当の件については、クラスの奴らに後で弁解しておこうか…
二階の廊下を突きあたりまで駆けていくと、
「こっちに昌也の気配を感じる!」
と叫びながら階段を昇っていく。
お前は犬か。
光崎といると、別に漫才をやっているわけではないが、ボケが多いのでついつっこまずにはいられなくなる。
変な奴だ。
そうして着いた先は、今は通行禁止となっている四階へつながる階段であった。
確かに人気はなく、告白にはうってつけの場所である。
「…てください!」
と、何やら聞こえたのでとりあえず息をのんで耳を傾け、邪魔するわけにもいかず私は階段下、康介はその後ろに隠れた。
「私が一方的に知ってるだけだし、いろいろ信じてもらえないかもしれないけど、この気持ちは本当なんです。」
ほう、なかなか本気じゃないか。
昌也も好かれたものだが、ここでどの言葉を選んで断るのかで男が決まる。
康介もかなり聞き入っているようだ。
しかし次の瞬間、私たちが聞いたものは予想とは真逆のものであった。
「俺でよければ」
「はぁ!?」
と叫びかけたが、それを後ろの手がとっさに抑え込んだ。
二次元だけでなく三次元にも手を出してしまうのか!?
二次元があれば、彼氏彼女なんて必要ないと熱く手を取って言い合ったのは嘘だったのか!
いや、別にリア充を否定しているわけでも、あいつがリア充になることを否定しているわけでもない。
羨ましいわけでも妬んでいるわけでも。
もちろん、あいつには幸せになってもらいたい、青春してほしい、なんたって幼いころから共に歩んできた大事な幼なじみだからな。
しかしだ…
「寂しいよぉ、昌也ぁ」
大変お久しぶりでございます。
活動報告にも書かせてもらったように、また少しずつ再開していくつもりなのでどうか温かく見守っていてもらいたいです。