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オタクにラブコメはいらない!  作者: 早苗(かりり)
5/12

部活、行ってみました

皆が去った放課後の廊下、当然人通りはまばらとなる。

「いや、どんなキャラかと聞かれてもな、、、」

そう言って康介は口ごもる。

「さっきも似たような会話してなかったか?」

「そうだったか?」

私は昌也の言う「さっき」の会話を思い返す。

似たようなと言われればそうだが、、、

「昌也、それは少し違うぞ!私はさっき、オープンな性格かそうでないかの二択を用意したんだ。今回は性格を聞いているのではなく、どのようなキャラかと聞いているんだ。だからーーーー」

「ああああああああああああああ」

昌也は私の話を聞かないと言う代わりに、両手で耳を塞ぎ雑音で紛らわせていた。

仕方ない。

「おい!昌也!」

「おれなにもきこえないー」

「そうか、では仕方ない。康介、先に部活へ行こう」

「ああ、光崎は何部だ?」

あああああああ

「君と同じバスケ部だ。」

あああああああ

「そっか。じゃあ一緒に行こうぜ」

そう言いつつ私たちは体育館へ向かうべく、2階から1階へと階段を降りてゆく。

遠のく昌也の声を耳から耳へと聞き流して。


俺のキャラ、か。

ここ来て変わっちまったよな、、、

上手く自分が出せない違和感がある。

今までと周りの環境が違ってビビってんのか?

そんなわけないよな。


ダムッ、ダムッ、ダムッ、ダムッ

近づくにつれて体育館から漏れ出すバスケットボールの音。

低く大きく響き渡る。

高校生の練習風景はやはり迫力があった。

体格も一回り大きく、力強い。

まぁ、それは男バスの話だが。

女バスはと言えば、うん、まぁまぁだ。

中学に比べるとそれはもちろんレベルは上がっているが、私は運動能力には自信がある。

この高校では、去年は県大会で決勝まで行ったと聞いているが、それほど驚くことはなかった。

「というわけで、私は早速参加してくるよ。中学のときの先輩もいるようだし。」

「わかった。じゃあ俺もそろそろ行くわ」

そう言う康介はとても生き生きしているように見えた。

私はくるりと体を回転させ、更衣室へ向かう。


「失礼します」

動ける服装に着替えた私は、そっと練習中の体育館へ顔を覗かせた。

「佳世ちゃーーん!いらっしゃい!」

そう言って飛んできた人物こそ、私の中学の先輩だ。

私の2つ上で、当時キャプテンを務めていた。

普段はのんきだが、やるときはやる人で頼りがいがある。

有紗(ありさ)ちゃん、高校でもキャプテンとか格好良いですね」

「いぇい!」

と私に大きくピースする。

そう、この先輩は持前の明るい性格でチームを引っ張ってくれる。

キャプテンなのは当然だろう、と私は思っている。

「じゃあ、適当に体ほぐしたらメニュー参加してね」

有紗ちゃんは練習に戻っていった。


練習の邪魔にならないように、私は体育館の端でゆっくりとストレッチをすることにした。

中学の部活を引退してからしばらく経つので、急に動かして筋肉を痛めないようにと念入りに筋を伸ばしていく。

体育館はバスケ部の他に、バレーボール部(バレー部)とバトミントン部(バト部)が使用するため、体育館の入口から見て奥の左側は女子バスケットボール部(女バス)、右側は男子バスケットボール部(男バス)とそれぞれハーフコートで活動している。

入口から右側–––私からの左側–––を見ると、男子は1年生を交え、軽い3対3をしているようだ。

その中にいるある人物が私の目に映った。

動きに無駄がなくスムーズであり、まぁ簡単に言えば他のやつよりも断然上手い。

背が高く、少女漫画のようにキラキラとした空気をまとい、爽やかな笑顔のイケメン君である。

私は思った。

こいつは世の中の女性が追い求める、少女漫画に登場するような人物であると。

少女漫画でよくある話じゃないか。

運動も勉強もできるイケメンが主人公の前に現れ、主人公は一目惚れするがイケメンは何たってイケメンなので周りの女子から大いに好かれ、自分なんか相手になるわけないと思っていたが最終的にはリア充になるというあれだ。

今回の場合は私が惚れたわけではないが、どう考えてもあれはモテる男子だ。

そう考えながら見ていると、むこうは私の視線に気づき、私に向かって照れ笑いを浮かべた。

康介、か。

ここで私の脳内がパニックを起こし、思考回路が渋滞により通行禁止となる。

まず確かめたい。

あれは本当に康介か?

顔を見る限り康介で間違いない。

では、この雰囲気の違いはなんだ。

先ほどのイケメン君は輝かしいキラキラの空気をまとっていた。

だが康介はどうだ。

康介は、色で言うと青系統と黒の間の暗い色だ。

この差をどう見間違える。

正反対と言っていいほどのこの差を。

それに何だ、あの笑顔は。

「佳世ちゃん!準備できたら早くおいでー」

「はい!」

有紗ちゃんのお呼び出しにより、私の脳内整理作業は中断することとなった。

後でもいいだろう。

そう言い聞かせ、私は練習に参加した。


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