部活、行きましょう
――――放課後
「佳世、お前部活見学行くんだろ?」
今日から部活の見学が可能となった。
正式に入部するのは来週まで待たなければならないが、仮入部という形で参加しようと思う。
「もちろんだ。お前は野球部を見に行くんだろう?」
「ああ。アニ研も見学したいところだが、ここはチームを全国大会へ導いたイケメン・実力派元キャプテンとして譲れない道だな」
「君も相変わらずな性格だな。」
こいつは実際にキャプテンであったし全国大会も行ったし実力もあるから、余計に反論ができない。
イケメンという点も否定はできん。
ああ、神よ。あなたの落とした二物はここにあります。
「さっさと天にお帰りください」
「それ、お陀仏しろって意味になるんだが」
「というわけでな、今日から二人で頑張っていこうか、康介」
「おう」
「俺ってもう天に帰ってしまった方がいいかもしれない」
「まぁ昌也。昌也?つい口に出してしまったが昌也とは誰なのだ。ああ、何か大事なことを忘れてしまったような気がする。私はどうやって康介と出会ったのだ、、、誰かもう一人いたような、、、はっ!まさ―――」
「昌也だよー。見えてたよなー。俺、風子ちゃんみたいに昏睡状態じゃないからね、クラナ●信者うるさいよー」
こういうところもなかなか抜け目がなく手強かった。
「話を27秒前に戻すのだが、」
「数えてたのかよっ!」
「いやいや、私がそんな面倒くさいことをするわけないだろう?これだよ」
私は制服のポケットからそっと取り出す。
「ストップウォッチかよっ!!」
「お、それ最新型」
「康介が反応した!?しかも話の趣旨はそこじゃないぞ」
「まぁまぁ落ち着け昌也くん。私は33秒04前の話に戻したいのだ」
「もうストップウォッチしまえ!」
何がともあれ、やっと部活の話に戻すことができた。
「康介、私たちは部活見学に行くから悪いが今日は先に帰っておいてくれ」
「お前はご丁寧にそれが言いたかったのかよ」
「ああ、ただそれだけが言いたかったというのに君が邪魔したのだろう?とりあえず早く行くぞ、昌也」
「了解」
立ち話が過ぎたのか教室には人がまばらとなり、私は少し慌て駆け出した。
「ちょ、」
「何だ、康介。私は急いでいるのだ」
早く済ませろと、少し不機嫌に促した。
「俺も部活行くんだけど」
驚いた。
昌也も私と同様驚いている様で目をぱちくりとさせている。
「意外だな。何部だ?」
「バスケ部に行こうと思ってる」
数秒に渡り沈黙が続いた。
いや、今のは聞き違いだろう?というように。
だから私は聞き直した。
「もう一度言ってくれ」
だが康介の答えは変わらなかった。
「バスケ部だ」
聞き違いではなかった。
それからまた数秒、私と昌也は目を合わせ思考が停止した。
沈黙とか思考が止まるとか表現が大袈裟すぎる、馬鹿らしいと感じている人も多いだろう。
だがな、案外そうでもないんだ。
ひと目康介の姿を見た人ならばこの表現はまだささやかだと感じる。
百聞は一見にしかず、というだろう?
私がいくら説明したところで完全には伝わらない。
私はそんな言い訳をして、自身の表現力のつたなさを隠すのであった。
「勝手に自己完結するな」
「昌也っ。貴様はまた私の心を覗いたのか!」
「ちょっと違うな。お前の精神世界に干渉しただけだ」
「くっ!貴様という奴は!」
「俺をおいて二人で異世界に行かないでくれるかな」
「「ごめんなさい」」
とにもかくにも、パッとしない見た目なのだ。
何も出来なさそうで、今までただぼんやりと生きてきたような。
丸眼鏡をかけた太めのキモオタとは違うぞ?
背は高く体型は標準、髪は短くさっぱりとしていておまけに笑顔も爽やかである。
そう、見た目は悪くないのだ。
むしろ今の言い方ならば運動が出来る爽やか青年、と受けとられる方が可能性は高い。
だが何故だろう。
そんな見た目を無視できるほどの運動できないオーラが見えるのだ。
不思議だ、今までこんなやつに出会ったことがない。
謎だ、謎過ぎるぞ康介は。
「君は一体、どういうキャラなんだ?」