委員会、決めました
「はーい、今日はクラス委員を決めます!立候補する人は手を挙げて下さい」
新人教師が楽しそうに言う中、私は中学のときと同じように迷わず手を挙げる。
「私がやります」
全員の視線がこちらに集まる。(席は一番前の左端なので実際は見えていないが)
「お前、相変わらずそういう役職好きだなー。じゃあ俺も」
と私の右斜め後ろの昌也が手を挙げる。
「そうですか!他に立候補者がいなければ、光崎さんと東くんに決定しますが、、、。では、光崎さん、東くん、お願いします。どちらが委員長か副委員長かを決めておいて下さいね」
「私が委員長をやります」
「っじゃ、俺は副で」
私たちには全く迷いがなく、両者共に納得していた。
中学のときもずっとこの組み合わせだったのだから。
「早く決まるというのはとてもいいことですね!先生が中学生のときなんて委員会とか立候補する人誰もいなくて、みんなで押しつけ合っててね、結局決まらなくて放課後残らされるっていう被害を―――」
「文化委員に立候補する人、挙手してください」
私はこの感情の抑制ができない教師の言葉を遮って、クラス会の司会としてこの場を進める。
もし誰もこの教師を止めなければ、それこそ私たちが放課後まで残らされたかもしれない。
「そ、そうですね。他の委員も決めないといけないですものね」
寂しそうにつぶやいた後、光崎さん続けてください、と言い残して南遙は端にあった椅子にへたりと腰を下ろした。
南が退場した結果、時間に余裕を残して全ての委員会のメンバーと掃除やグループ活動の際に必要な生活班が決まった。
「じゃあ、この一年間は委員会のメンバーと、一学期は班のメンバー、みんなで仲良く頑張っていこうね!ちなみに先生は図書委員の担当だから、みんな図書室に来て先生とたくさんお話しましょうね!では」
図書室では静かにしろとか言う立場の人がそんなこと言っていいのか、と私は心の中でつっこんだ。
ともあれ、昌也と康介と私の三人が同じ班になれたのは幸いだった。が、
「あの立ち直りの早さは何だ。正直驚いた」
前半に崩れた南が授業終了時には何事もなかったように完全復活していた。
「南先生は何言っても心折れなさそうだな。俺、尊敬するわ。ところで、康介って中学でも文化委員やってたのか?」
昌也は南の話よりも康介が文化委員に立候補したことに興味があるらしい。
「ああ、三年間やってたよ」
二人はどうだったんだ?
俺らもずっとクラス委員長と副だ。だよな、佳世。
私はその場にいながら二人の話を全く聞いていなかった。
なぜなら康介が中学の三年間文化委員と聞いて、ある大きな疑問が生じ、その疑問を全神経を使って解決しようと考え込んでいたからだ。
だが答えは出なかった。
ならば本人に聞くしかない。
「佳世?佳世?おい、聞いてるのか?」
「康介、私は君に重大な疑問を覚えている」
康介と昌也の頭の上にクエスチョンマーク、いや、はてなマーク、疑問符、まあ今はどれでもいいのだが、とりあえず「?」ができたのは言うまでもない。
「君は、オープンな性格なのか、それともクローズな性格なのか?」
「まず二ヶ所ほどつっこませろっ!!」
一秒も満たないわずかな時間で、昌也の高々としたつっこみが入る。
「俺はオープンな方だと自分で思うんだけどな。光崎にはクローズな性格に見えるのか?」
康介の何の疑問も感じさせない受け答えは、「クローズな性格」が本当に公用語なのかと昌也に勘違いさせるほどであった。
「ああ、少しな。中学でもこんな感じだったのか?」
康介は「いや・・・」としか答えなかった。
自分でも中学のときはもう少し明るい性格だったと自覚している。
では何故今はそうではないのか、康介にはまだわからなかった。