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オタクにラブコメはいらない!  作者: 早苗(かりり)
2/12

はじめました、高校生活

春はあけぼの

ようよう白くなりゆく山際 少しあかりて 紫立ちたる雲の細くたなびきたる


清少納言の言いたいことはわからないではない。

だが、そんな時間に起きている人は多くないはずだ。

春といっても夜明け前の朝は寒く、ましてや夜通し布団に入らず起きていたとなれば、体は冷え切っている。

「へくしゅっ。ああ、もう朝か」

締め切ったカーテンがうっすらと光を通す。

今日の始まりだ。正確に言うと昨日の延長なのだが。


寝坊などするわけもなく(寝てすらいないのだから)、少し早く駅に着いた私は、ホームのいすに座りスマホを取りだす。

すると、いきなりぽかっと頭を叩かれた私は驚いて飛び上がる。

「な、何をする!」

私の頭を叩いた張本人である昌也は、やれやれという顔で呆れたようにこちらを見て、

「珍しくお前が先に来てると思ったら、寝てたのかよ。昨日、寝てないだろ」

時計を確認すると、時間の30分前を指していた針はもう3分前となっていた。

「私は寝ていたのか。昨日は昌也の誕生日にあげようと思っていたギリギリ18禁にかかっていない漫画を探していてな、なかなか見つからずに気が付いたら朝だった」

「公共の場でそんなことを言うのはやめなさい。被害を受けるのは君ではなく俺だ」

昌也のつっこみに私は満足し、ケラケラと笑う。

「冗談だよ。いつものように夜通しアニメを鑑賞していただけだ。それより、君の爽快なつっこみのおかげで、ボケたこちら側はとても気持ちがいいよ。」

「全く、、、こっちはいい迷惑だっての。ほら、電車来たぞ」

「ああ」

ゆったりと止まりかける電車を見て、私たちは一番人の少ない1両目に乗り込む。

出発のホイッスルとともに電車が動き出すが、人はそこまで多くなく、誰かにぶつかることはなかった。

「今日は人が少なくていいな」

「お前、人ごみ嫌いだもんな」

「当然だろう?人ごみは、人がゴミと書くのだぞ?」

「いやいや、人が混むと書いて人混みだ」

「だがどちらにしろ、ゴミのように見えるのは変わらないだろう?」

「わかったわかった、、、お前の人間嫌いはよーくわかったから。」

佳世が人間について語り出すと、人間は自分勝手だの人間は見苦しいだの、人間批判が止まらないのでここら辺で制止しておく。

そうこうしているうちに家から近い学校を選んだこともあり、10分程度で目的の駅に着いた。

「康介、おはよう。同じ電車だったのだな」

昨日の少し背の高い人物を見かけたので、佳世はすぐに声をかける。

「おはよう。二人は一緒だったのか?」

「ああ。家が隣の隣の隣の隣の前だからな」

「簡潔に家が近いから、とは言えないのか」

康介が笑いをこらえられずにぷっ、と吹いた。

「光崎と昌也のコンビネーションは最高だよ、本当に。これはまさにハッピーセットだね」

ハッピーセット!?

今度は私たちが吹く番であった。

「ハッピーセットか!それはいいな。ははっ」

「案外康介もイケるくちだな!俺、お前好きだわ」

「昌也、お前もしかしてホモなのか!?こんな場所で堂々とホモホモしい展開を見せつけられても私は、、、」

「違うだろ!今のはどう考えても同性愛とかそんな意味合い含まれてない!」

「そんなに焦ることはない。渋谷区では同性カップルの条例があるのだ。そのうちホモも世間に認められるようになる」

「そういう問題じゃねぇ!」

こうして私たちは腹を抱えながら登校する。

何故か周りにいた女子の視線が多かった気がするが、これは自意識過剰というやつだろうということにして。


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