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オタクにラブコメはいらない!  作者: 早苗(かりり)
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はじめまして、高校生活

突然だが、二次元とは何だろうか。

三次元と異なり奥行きがない?

別に私はそんな安易な答えを求めているのではない。

私が思うに、二次元とは一言で言えば「夢」である。現実(リアル)にはない、現実(リアル)では求めても手に入らない全てが詰め込まれた人類の「夢」だ。

だから私たちは現実(リアル)だけでは物足りなく感じ、二次元という次元を超えた世界に憧れる。

私もその一人だ。

だからといって現実に失望したわけでもない。

今日からまた新しい生活がはじまる。

人生で最も輝かしく楽しい:つまるところ青春と言われる高校生活だ。

中学が同じだった友達や塾のやつらも複数いるので、入学早々ぼっちになるという可能性は低いと言えるだろう。

何より、親友とも呼べるやつが同じ学校というのは心強い。

なにせ私のオタク属性を認めてくれる数少ない友達だからな。

中学での私は同姓、異性、どちらからもそこそこ人気があったが、オタク属性だけはなかなか認めてくれなかった。

アニメの話をしても空返事、まあ知らないのだから仕方ないのだが、気を遣って話を聞いてくれる人も少なくなかったので、私は非オタにはそういう話をしないように気をつけた。

もちろん話せるメンバーもいくらかいた。そいつらとは休み時間がくるたびに集まって語り合った。

塾の先生曰く、「お前ら、高校なんか変なやつばっかりやで。オタクだらけや」らしいので、同志に巡り逢えることを楽しみにして、私は教室へ向かった。


1年生のフロアである2階へ上がると、そこはもう人だかりができていた。

全10組のクラス分け表がデカデカと貼り付けられていたので、私も人だかりに混じって自分のクラスを確認する。

私は、、、Β組―――「よろしく!」と肩をとん、と叩かれた先にいたのは予想通りの人物だった。

「お、同じクラスか?優等生くん」

「いぇい!いぇい!いや、俺が優等生なのは認めるけど、人前で優等生と呼ぶのはやめようか、Ζくん」

笑顔でさらりと抗議してくるこいつは、中学で自らのオタク属性を隠しただただ大人しい優等生として過ごしてきた、幼なじみである津田昌也だ。

勉強はもちろんのこと、スポーツもでき歌も上手い。さらに言うなら、顔は悪くないどころかいい。性格もそこそこ良いこともあり、男女違わず中学では人気者だった。

ただし友達として、だ。

そしてとうとうモテ期は来ないまま中学を卒業したのだ。南無阿弥陀仏・・・

ちなみにこいつが私を「Ζくん」と呼んだのは、私が小学生のころにした自己紹介が原因である。

"私は「Ζ」だ!この世界を守っている皆のヒーローである。"

などと言った覚えがあるが、特に後悔はしていない。

「くん」と呼んだのは、ただ私の性格上「ちゃん」が似合わないからだろう。

「どうかしたか?」

「いいや。ただリア充爆発しろと心の中で念じていただけだ」

「さらっと怖いこと言うね~。まぁ俺もその意見に同意だけどな」


こんな感じで始まった高校生活。

入学式はこれといったものはなく、すぐに終わった。

気付いたことと言えば、担任は美人だったということくらいだろうか。(男子諸君にとっては大事なことなんだろうけど、あいにく私は女子である)

ともあれ、入学式も終わったことだし早く帰ってゲームでもしようかと思い教室に入った私は、間もなく後悔することになった。

別にこれはこれで悪いことではない。

初めてだというのだから、気合いが入るのは当然だろう。

が、やりすぎだ。

一応は大人なのだから感情の抑制というものを知っておいてほしい。

今まで教師になるために努力していきただの、あなたたちの教師になれてよかっただの、さらには一緒に青春の1ページを作りましょうだの熱弁されるが、こちらからすれば「知らんがな」というところだ。

「皆さん!明日から頑張りましょうね!」

最悪だ。


「いやー、あれはまじでびっくりしたわ」

「ああ、1時間も監禁されるとは思わなかった。南遙(みなみはる)と言ったか。やっかいな担任になったな」

「本当だよ、まったく。俺は――」

「待て昌也。このまま話を進める気か?君は誰だ」

当然のように昌也の隣について歩いてきた人物に問う。

「俺、市ヶ谷康介(いちがやこうすけ)だ。よろしく」

「私は光崎佳世(こうさきかよ)だ。よろしく」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

どれだけ沈黙が続いただろう。

「で?」

私は我慢できずに問うた。

「・・・で??」

オウム返しとはこのことだ。

ため息をつきたくなった。

自分の立場をわかっているのか?と。

「あ、こいつさっき俺と友達になったんだ。っで駅まで一緒に行こうって」

「お前、それを先に言わんか。こいつをただの変人だと思ったぞ」

「ごめんごめん」

「で、こうすけは金魚を買っているのか?」

「え?」

「こうすけ、は、ポニョ、こうすけ、好き。のあれではないのか?」

「いや、お前初回からボケきつすぎだろ。第一、あの映画の人はこうすけじゃなくてそうすけだから。初対面で意味不明なこと言われたら誰でも引くからね?」

だが康介の反応は、私と昌也が予想していたものとは全く違った。

「光崎は面白いな。俺、そういうの嫌いじゃない」

驚いて戸惑い、一瞬言葉が出なかった。

「おお!オタクを認められる人材を見つけたぞ!佳世!」

「ああ、驚いた。今世紀最大の発見だ」

こうして私たち3人の高校生活が始まった。


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