魔法の種
饕餮様ご企画の、『風船葛』企画参加作品です。
詳しくはここ、見てね。
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この道、この家。
ここを通るたびに思い出してしまう。庭の片隅に、今も生えているのだろうか、と。
その家の男の子は小学生のときに同級生だった。別に特に理由があったわけでもないけど、よく一緒に遊んでいた。
「好きか」と聞かれれば、「嫌いじゃない」って答えてたと思う。そんな、ちょっと特別な、でもただの男の子。
だから、その日もなぜそんなことを思いついたのか、自分でもわからない。その子の家に遊びに行くポケットには種。その種をこっそりと庭に蒔いた。まるで、魔法を仕掛けるとき、誰かに見られてはいけないと何かに書いてあった、そのとおりのことをしているみたいで、すごくドキドキしながら。
魔法は誰にも見つかることなく、首尾よく完了した。それからしばらくして、その子から、突然庭に妙な草が生えてきたという話を聞いた。その子のお母さんが、首をひねっているということも。
もちろん、魔法使いは魔法のことなんか決してばらさない。
「ふーん、不思議だね」ってとぼけて見せただけ。
でもその夜、魔法使いは一人でクスクス笑っていた。
だけど、もっと不思議なことがおきた。それはいつの間にか、そんな男の子のことも、仕掛けた魔法のことも、すっかりどこかへいってしまっていたこと。
気がつけば、別の人が気になっていた。そしてあの男の子も別の子と付き合ってるって噂に、別に腹も立たなかった。
だけど、それでもあの子の庭にはあの風船葛が生えているんだろうなあって思うと、なんだかとても不思議。いくつになっても、あの魔法を思い出すと、ついつい微笑んでしまう自分が、とても面白いのだけど。
結局、あの子は風船葛の種、見たのかなあ。
白い黒猫様のこちらもごらんくださいませ。
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始まりはたったこれだけのことだったのですよ。
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