表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

運命に抗うもの

作者: 七夜零夜

2070年

俺の住む世界。

日本という国では人の死は国によって決められる。

それによって反抗しよういう人間はあまりいない。

その理由は生まれる前からそうであればだれも反抗をしようとはしない。

それが当たり前と化す。

国はいつしか、国民を日本から出さなくした。貿易などをしているがそれでも、それを行うのは国のお偉いさん方しかしない。一般国民はなにも口を出せない。

抵抗するものはいる。それは全くではなくあまりだからだ。

だけど俺はそれを知らない。

俺もいつか死ぬだろう。

国からの知らせの紙が届き自分の人生を終わらせると思う。

俺が死んだら誰かが悲しむだろうか、いやそれはない。

天命で死ぬならまだしも、これで死んだら、国のための死んだことでは誰も泣かない。

それが当たり前だから。

幼稚園の時も小学生のときもそうだった。

先生たちは口をそろえて無くなった子は国のためだといった。

俺はなにも疑問に思わなかった。

そして中学三年の春。

俺にもその紙がきた。

不思議と俺はどうにも思わなかった。

悲しくももっと生きたいとは思わなかった。

家族もそうだった。

それがこの国の日常なのだから。


俺にも『運命』の紙がきた。

俺が死ぬのは今日だ。

このことを知っているのは、俺を含め家族しか知らない。

友人はなにもしらない。

だからといって俺は学校を休むわけにはいかない。

新日本国憲法

運命の条

第十一条

『運命』の紙が届いたものは運命が来るまで国民は通常の生活を送らなければならない。

又学校、職場には病気などにならない限り休むべからず。

これは運命が決められた親族にもおかれる

これのせいで俺は自分の運命の日をゆっくりと過ごせずいつも通りの日常を演じなければならない。

最後の朝で目覚めたての俺が考えたことだった。

俺はいつもどおりに学校の制服に着替えた。

着替え終えた俺は紙をみていた。

その紙というのは『運命』の紙だ。

国民ID183764956

上坂弥夜衣かみさかやよい

2030年六月二十七日に運命が決まることをここに報告する。

たぶん今の国語辞典には運命=死と書かれているだろうなあと冗談を思った。

そして俺は最後の朝食をとるために自分の部屋を後にした。


家族はいつも通りにすごしていた。

俺が今日死ぬというのに。

だけど俺はそこまで怒りがわかない。

日本では情報統制をさせられていて、インターネットでも日本国内のサイト以外は見れないようにされているが、俺はある日その落とし穴を見つけ、海外のサイトにアクセスした。

大変だったのが英語を日本語に直すことだった。

どうやら昔は英語の授業があったらしいが、今はない。

そしてたまたま入ったそのサイトに書かれているものを日本語に翻訳すると驚きの文だった。

日本という国は変わった。

人の死を国が決めるなどおかしいと。

俺の日常はこの日から壊れたと思う。

だけど俺はそれを周りに広めようとは思わなかった。

父さんはいつも通り新聞を読みながら、食後のコーヒーを啜っていた。

すぐに俺の分の朝食がでてきた。

朝食はいつもと変わらないものだった。

俺はそれはいつも通り平らげた。

父さんはその間に仕事にでていてもう家にはいなかった。

最後の会話はなにも出来なかった。

少し早いが俺は学校に行くことにした。

荷物をもち、母さんに最後の挨拶をした

「いってきます」

そう言って返ってきた返事は

「いってらしゃい」

特に変わりのない挨拶だった。

当たり前かと俺は思い。

もう帰ってくることがないかもしれない家を出た。


学校はいつも通りのものだった。

俺が今日死ぬというのを知っているのは家族だけである。

だから学校のやつらが知らなくても当たり前である。

仮に知られていても「ふ~それは残念だったね」くらいである。

「おはよう。弥夜衣」

「よお、弥夜衣」

朝、教室に来た俺に挨拶を交わす、二人は俺にとっては親友といっても過言ではない二人である。

「おはよう。沙流汰さるた尚輝なおき。」

誰にも対しても丁寧語で、またそれに合うかのような優しい声、そして容姿をしたのが加賀美かがみ沙流汰さるたである。しかしその真逆といえる人物が容姿は上の中、不良ぽい感じだが中身は真面目なやつ直枝なおえ尚輝なおきである。

コイツは名前と苗字が若干似ていることがコンプレックスである。

そして俺はこの二人を足して二で割ったような人間である。

コイツ等はしらない。俺が今日死ぬことを。

死ぬときは授業中かもしれない、もしかしたら昼休みのときかも、それとも下校中かもしれない。

だけどコイツ等は俺が死んだら悲しんでくれるだろうか、この日本ではありえないが事故などで死んだら悲しむが、国のためではどうだろうか。

二人は泣いてくれるだろうか、いや考えるのをやめよう。

分かりきっていることじゃないか、俺がそうであったんだから。

誰も泣くはずが家族すら泣かないことを俺は知っているのだから。

二年前まで生きていた。

俺の幼馴染のあの娘がそうだったんだから。

あんなに仲がよかったのに、俺は泣きもしなかった。

だけど何かがポッカリと空いたような気がしたが、俺はすぐにそれを無視した。

だけどなぜだろうか、なんで今になってこの感覚が戻ってきたのだろうか。

自分が今日、死ぬからなのか。

いや考えるのはやめよう。

最後の学校を楽しもうじゃないか。


午前中の授業はあっという間に終わった。

おかしいものだな。

いつもなら早く終わってほしいと思いながら授業を受けているのに、なぜか今回は違った。

俺は今沙流汰と尚輝の三人で昼飯を食べていた。

食べている場所は屋上である。

この学校では屋上という場所は立ち入り禁止の場所である。

屋上に入れる抜け道を見つけたのは俺と二年前生きていたあのであった。

名前はもう思い出せないあの娘。

「いやー。やっぱり屋上での飯は格段とうまいな」

尚輝が大きめな声で言った。


「おい。尚輝一応ここは立ち入り禁止の場所なんだから、あまり騒ぐなよ。逃げ道がないんだからな」


俺がそう、尚輝に警告するが、本人はそれを気にしてなかった。


「大丈夫だぜ。弥夜衣ここそんなに先生も見回りにきたりしないしな。俺が授業をサボるときはだいたいここにいるが、今まで先生がきたことはないぜ」


俺はコイツ大丈夫かと思った俺たちは今年、受験生なんだぞ。

まあ俺にはもう関係がないけどな。


「全く。尚輝は」


沙流汰は心底呆れていた。

けれど、授業にサボっていながらも尚輝の成績はかなりいい。

この三人組を成績順にすると

沙流汰

尚輝

となる。

最下位である俺でも成績を見れば学年のなかでもトップクラスである。

つまり俺たち、三人組は学年のトップクラスの集まりといっても過言ではない。


――――10分後


「そろそろ教室に戻ろうぜ」

と俺がいうと二人は

「そうだな」

といい。

教室に戻ることにした。

こんな風にバカが出来るのも今日が最後なんだな。


結局俺は学校では死ななかった。

まあクラスメートに自分の死体をさらすのも嫌だしいいか。

俺は放課後は特にやることがない人間である。

いつもなら沙流汰と尚輝と帰るが今日はそうはしなかった。

たぶんこの放課後の帰り道が俺の死場だと直感した。


「沙流汰、尚輝。悪い今日用事あるから、先に帰る」


そう言った俺に、沙流汰と尚輝は特に気に留めることなかった。


「分かった。じゃあな」

「弥夜衣また明日」

「おうじゃあな」


俺は教室を出て少し離れたところで立ち止まった。


「また明日か」


俺には明日が絶対にない。

くそ。今日の朝まで未練なんてないと思っていたのになんで今さら。

それでも俺は思ってしまった。

生き残りたいまだ生きたいと。

そんな自分の思考を振り払うためにも俺は歩き出した。


絶対に死ぬと思った。

帰り道を俺は半分も消化していた。

ここまでくると俺は一つの希望を覚えた。

もしかしたら、俺は生き残るんじゃないかと。

しかしその希望も次の横断歩道のところで絶望に変わった。

俺はなにも迷いもなく信号が青になったところで横断歩道を渡った。

そのとき、車道のほうから一台の車がこちらに突っ込んできた。

俺はどこか、分かっていたが絶望の色を隠しきれなかった。

俺と車の距離はどんどん近づいていく。

俺の人生はここまでかと諦めかけたとき俺の心の中になにか別のものが流れ込んできた。


生き残れ

運命に抗ってみせろ


俺はなぜかその言葉を聞き気力がわいた。

近づいてきた車を俺は体を大きく左に曲げよけた。

「こうなったら、抵抗してみせる。死ぬにしても俺は抗ってから死んでやる」

俺のその言葉は気合を入れるのと同時に一つの決意でもあった。

再び俺の所に向かってくる車を俺は紙一重で避けた。

このままじゃ俺は死ぬ。

そう思い俺は歩道に走り出した。

このまま車道にいては向こうにしか得がいかない。

歩道ならまだすこし勝機がある。

所詮は人が走るとこは車に敵うはずがない。

しかしその車はなにも構いもせずに歩道に突っ込んできた。ガードレールはぶち壊された。

その時一つの銃声が響いた。

俺は一瞬自分が撃たれたかと思ったが、すぐに違うということに気がついた。

撃たれたのは車に乗っていた運転手だった。

主を失った暴走した車を俺はなんとか避けると。

俺は自分を助けてくれた人を探した。

その人物はすぐに見つかった。

しかし、その人物は俺がよく知る人だった。


「こっち」

俺は彼女に手を引かれた。

俺はただ従うだけだった。

今は声を掛けるよりここから逃げることのほうが先決に思えたからだ。

気がついたら俺は路地裏にいた。

「ただいま戻りました。隊長」

彼女がそう言うと路地裏の影から一人の男が出てきた。

「ご苦労。そちらの君が新しい運命デステニィーブレイカーち破るものの可能性を持ったものか」

デステニィーブレイカー。俺はその単語の意味を探ろうとしたが、しかしそれには邪魔が入った。

「ちっ、敵さんのご登場かい。逃げるぞ。おいそこのお前もだ」

俺は条件反射で走り出した。

この二人はこの路地裏のことを良く知っているらしい。

しかし、後ろから敵が来ていた。

敵はどうやら銃を持っているらしく時折こちらに威嚇射撃をしていた。

隊長と呼ばれていた男が正面を向き手と手を一回あわせるとそれを地面に思いっきりたたきつけながら叫んだ。

運命ワールドバリヤーバトルフィールド

その叫びとともにその男の目の前に大きな壁が現れた。

その壁は本当に運命さえも遮りそうな壁だった。


あのあとどうなったのか俺は覚えていない。

気がついたら前の二人も止まっていた。

ただ覚えていることは俺が全く疲れていないということだ。

覚えておらずあやふやだがかなりの距離を全力疾走で走ったはずなのに全く疲れていなかった。

最低でも今日の朝いや今日の放課後までの俺はここまで体力はなかったはず。

しかし今はそんなことはどうでもいい。

今、俺の目の前にあるのは廃墟と化した住宅街にいた。

「おい小僧大丈夫か」

「はい。大丈夫です」

俺がそう答えると男は「そうか」といい。

前に進みだした。

無論俺もそれに続いた。

向かった先はある一軒の家だった。

なんの躊躇いもなく進んでいく二人に俺も続いた。

リビングらしきところに出ると男はリビングの床を剥がし始めた。

何枚か床を剥ぐとそこから隠し穴が出てきた。

「よーし。入るぞ」 

男が先人きって入っていた。

それに続きあの

最後に俺となった。

穴に入ってから一分くらいして男が俺に話しかけてきた。

「なあ。小僧お前なんて名前だ俺の名前は永李ながり竜馬りゅうまだ。これからよろしくな」

「お・・・・・・僕の名前は上坂弥夜衣です。永李さんよろしくお願いします」

「おいおい。いつもの話し方でいいぜ。それと俺のことは竜馬でいいぜ。こっちも弥夜衣て呼ばせてもらうから。じゃ次はなぎさ次はお前の番だといいたかったがもう出口だ」

穴から出た俺は驚いたそこにはたくさんの人がいたのだ。

みんななにかをしていた。

地下基地だというのにかなりの広さを持っていることは目に見えていた。

「ようこそ。我等われら運命抵抗デステニィーデジスタンスへ」


「よう竜馬。それが新入りか」

「おうそうだぜ。おやっさん」

おやっさんと呼ばれているらしい人が俺に近づいてきた。

「お前が新入りか、頑張ろうな。困ったことがあればなんでも相談に乗るからな」

「はい。俺の名前は上坂弥夜衣です。よろしくお願いします」

「おう、よろしくな。弥夜衣。俺のことはおやっさんとでも呼んでくれ」

そういうとおやっさんは去ってた。

「俺はお前のことをリーダーに報告してくるから。あとのことはなぎさまかせたぞ」

そう言うと竜馬さんも去っていた。

俺は一回小さく深呼吸をした。

「よう。久しぶりだね。渚」

そう言うと彼女・・・・・・渚は笑顔をみせた。

彼女の名前は二年前と同じなら古林ふるばやしナギサ

彼女もまた『運命』を宣告されたものである。

俺自身もう彼女は死んでいたと思っていた。

「覚えているの」

今にも泣きそうな声で彼女が聞いていた。

「もちろん。といっても名前とか記憶も今さっき思い出したばっかだけどな。ってうわぁぁ」

突然、彼女が俺に抱きついてきた。

「よかった。覚えてもらえていた」

不幸か幸運にかこの場にはもう俺と彼女しかいなかった。

その十分くらいして彼女は落ち着き。

基地の中を案内してくれた。

その間俺は何十回も自己紹介をしたと思う。

「は~疲れた」

ようやく自室に着いた俺は二段ベットの下のほうに飛び込むとそう呟いた。

「しかたないじゃない。新しく入った人はまず自己紹介からしなきゃいけないんだから」

俺の隣にいるルームメイトである渚が俺に言った。

「それにしてもなんで渚と俺の部屋が一緒なんだよ」

「いやー。それがね私と弥夜衣が知り合いだってリーダーに話したらね。なら一緒の部屋でいいんじゃねていってくれたんだ」

まだここのリーダーと呼ばれている人には会っていないがたぶん大雑把な人なんだろうなと思った。

「そんなことより今日は早く寝たほうがいいよ。明日は絶対に疲れるから」

俺はそれに従うことにした。


運命抵抗の基地はとても過ごしやすいものだった。

なんせ飯はうまいし、ベットはふかふか。

俺は忘れていた。

ここは抵抗組織デジスタンスの基地であることを。

「よーし。弥夜衣、これからお前を前線でも使えるように訓練するぞ」

竜馬はその提案に俺は戸惑ったがすぐにそれも消えた。

なんせ一食一飯のご恩はかえさないとなと思うし。

それに俺も運命を自分で破りたい。

「はーい」

「いい返事だ。場所は第参訓練室だ。行くぞ」

「おー」

俺は竜馬に続いた。


結局なにをすればいいんだ。

それが俺の感想だった。

いやーだってねあれだよ。

いきなり訓練室に来たなり「お前の運命デステニィーブレイカーち破る者を見せてみろ」と言われた。

うん。俺はその言葉の意味を昨日なんだろうと思っていたけど結局誰にも聞いてないけど。

一体なんだよ。

俺は心の中で絶叫した。

「どうした。弥夜衣、緊張でもしてるのか。そんなじゃ戦場にはたてんぞ」

緊張なんかしてないわ。ただいきなり分けの分からんものを見せてみろと言われて混乱しているだけですが。

「あー弥夜衣。ここにいたんだ」

その時俺に助け舟がきた。

「おい。渚。コイツ本当に運命を打ち破る者なのか。さっきからなにもしなくて困ってるだ」

困ってるのはこっちだ。

「あの隊長。彼に説明したんですか運命デステニィーブレイカーち破る者のこと」

竜馬はそれを聞かれ言葉を詰まらせた。

はーい。そんなもの説明は一切何もされていません。

「なにもしてないんですね。いいです私がしますから。隊長はあちらの隅にでも引っ込んでいてください」

竜馬はしかたなく訓練室の隅に行った。

「はい。それじゃ説明を始めるよ」

「はーい」

「おっほん。まず運命を打ち破るものに目覚めたものはまず身体能力常人の何十倍もあがります。それと中には特殊な能力を持てるものもいます。その中には何種かの系統があります。

そのうちの一つが私が持っているこれ」

渚は目を閉じ意識を集中させると次の瞬間彼女の手の中に銃があった。

銃はゲームとかなどでよく見るハンドガンだった。

「『実態化』私の場合は銃。それともう一つが『変化』これは隊長みたいな能力ね。隊長の場合は固体を自由に操ることが出来るできる。その例が昨日の隊長の壁ね。私が知っている限りあともう一つが『影響』これに当たるのは回復とかにあたるね」

なるほど。

俺は色々と納得した。

とりあえず運命デステニィーブレイカーち破る者の能力の系統は理解はした。

だけど肝心な発動の説明は一切されていない。

「それとこれの発動だけど。弥夜衣があの車を避けた瞬間なにか感じなかった。なんか頭の中に話しかけられたとか」

そう言われ俺は昨日のあの瞬間を思い出した。

思い出した。

俺があの時見たもの、そして最後に小さな声でいわれた単語を思い出した。

俺は渚に少し下がるようにと伝え、呼吸を整え意識を集中させ叫んだ。

運命ヴァルザン・ディ・スレイヤーく刀」


俺の手の中にはつるぎがあった。

いや具体的にいえば東洋風のこの剣のことは刀と呼ぶべきだ。

「弥夜衣の能力が『実体化』と分かったところで訓練を始めるぞ」

いつの間にか竜馬さんは戻ってきていた。

訓練室の端から何体かのかかしが出てきた。

「とりあえずあれを斬ってみろ」

俺はただ頷くとかかしのほうに視界を移した。

はっきりいって俺は生まれてこのかた刀はおろか木刀、竹刀すら握ったことがない。よくて長い木の棒と箒くらいだ。

だからせめてイメージさせながら動こう。

そこで俺は漫画でみた幕末の維新志士の動きを脳内でリピートさせた。

その維新志士(まあ主人公だが)の刀での戦いかたそれは抜刀術だった。

鞘内から刀を走りらせ放つ神速の攻撃。

はたしてそれが今の俺に出来るだろうか

俺は柄にてをかけかかしにめがけて走り出した。

射程距離に入ったと考え一気に鞘から刀を抜いた。

ドサッ

かかしは上と下に分かれていた。

「お見事。弥夜衣」

竜馬さんが口笛を吹きながら言った

「いえ。偶然ですよ」

いや本当は偶然なんかじゃなかった。

自分の体ではそういっていたが、口ではその逆のことをいっていた。

俺がしたことそれは自分があのかかしを抜刀術で斬ることをイメージしただけ。

それだけで俺はその通りに動けた。

「これで国家戦闘員の前哨基地に攻められるな」

「すいません。国家戦闘員てなんですか」

「まあ名前の通りの戦闘員だ」

「は、はあ」

この人は大雑把すぎる。

「それはそれとしてなんで俺がいると前哨基地攻略が出来るんですか」

「その理由としてはだな。まあこの中に攻撃に特化した運命デステニィーを打ちブレイカーる者がいなかったからだ。

 俺の『変化』は攻撃には向いていない防御型だ。渚のほうはお前と同じ攻撃型だがあれはあくまでハンドガンだ。それに女てのが一番だな」

竜馬さんは再び訓練用のかかしを出した。

しかし今回は一体ではない二体。

「弥夜衣斬ってみろ」

俺はそれに従うことにした。

もっと斬りたかったという欲望があったとはいえないが。

俺は再び頭の中で今回の斬り方をイメージさせた。

あの二体の間に飛び込みそこで刀を鞘から抜く。

かかしより少し前の方で抜くのがベストだろう。

俺は駆け出した。

またイメージどおりに動いた。

見事二体のかかしは斬れた。

「やっぱり。お前は他の運命デステニィーを打ちブレイカーる者とは違うな。

 普通のやつは身体能力は上がるだけでこの手の武器の使い方は運命デステニィーを打ちブレイカーる者になる前と同じだ。

 俺も何年も修行してここまで使えるようになった。渚の場合は飲み込みが早かったからな一年くらいだったな。

 今のお前はたぶん実戦になれば渚と互角いやそれ以上だろう

 お前戦いを楽しでるだろ現にただのかかしを斬るだけでお前は喜んでただろう」

俺にはそれが否定できなかった。

漫画でもゲームにしても俺が好き好むのはその手の戦闘ものだった。

なにかを斬る、撃つ、殴る俺は戦いが大好きなのかもしれない。

「おいおい。そんな深刻な顔をするな。別にそれを悪いのはいわない。

 ただ自分を見失うなよ。ほんじゃちょっくらリーダーと今後のことを話してくるよ」

そう言い終えると竜馬さんは訓練室から出て行った。


「ぐっ」

通常の銃弾と同じ速さのゴム弾が俺に当たった。

「弥夜衣もうやめたほうがいいよ」

「いいやまだまだ。ようやく目が覚めてきた」

竜馬が去ってから俺は弾丸を避ける訓練をしていた。

実戦となれば銃が出てくるそれの対策として考えたのがこれだ。

「いいの」

「ああかまわない」

「それじゃいくよ〈乱舞ダンシィング弾幕バレット〉」

何発かの銃弾が乱舞をしながら俺に向かってきた。

本人曰く放たれる弾は自分でもどれくらいかは分からないが最低でも四発以上はでているとのこと。

一発目を回避

二発目も回避

三発目は刀で払いのける

四発目回避

ここまでで〈乱舞ダンシィング弾幕バレット〉の最低基準を回避どうやらまだ乱舞している弾はあるからまだ気は緩めないか。

五発目回避

六発目回避

そこで乱舞する弾はなくなった。

やりきったと思うと俺は倒れた。

「や、弥夜衣大丈夫」

渚が心配そうな顔で駆け寄ってきた。

「大丈夫だよ。ただ少し疲れただけだから」

実際は少しの問題ではない。

集中力を限界まで高め、体も三時間休みなしで動かし続けたのだから疲れるのもあたりまえか。

その後三十分俺は倒れた状態で休んだ。


「各人員に通達する至急ブリーフィング室に集合して欲しい」

これて俺も行くのかな。

「ねぇ渚。これて俺も行くの」

「ええ。たぶんそうだと思うよ」

しかたないか、運命デステニィー抵抗レジスタンスには命を助けてもらった恩もあるし。

俺は渚とブリーフィング室まで行くことにした。


ブリーフィング室にはここの戦闘員らしい人などがたくさんいた。

その一番前の端っこに竜馬さんと中央に誰かがいた。

「あれて誰?」

俺のその疑問に答えてくれたのはやっぱりというか隣にいる渚だった。

「ここのリーダー。勝本かつもと玲次れいじよ。私たちと同じ運命デステニィーを打ちブレイカーる者」

「みんな静かにして欲しい」

中央にいたひと勝本玲次がいった。

「これより国家戦闘員前哨基地攻略の一回目の会議を行う」

その言葉にその場にいたもの全員が静まった。

彼の声にはそうさせるなにかがあった。

「まず作戦決行はいまから一週間後の2400に行う。夜間の奇襲戦だ。

 このために今回は特別編成の部隊を作る。

 みんなも知ってると思うが昨日新しい運命デステニィーを打ちブレイカーる者がここにきた」

俺のことだ。それは周りの視線からも理解できた。

「これでここの運命デステニィーを打ちブレイカーる者は私を含め五人となった。そして今回は運命デステニィーを打ちブレイカーる者だけの特別遊撃部隊を作る。

 今から名前を呼ばれたものはここに出てきてくれ

 永李竜馬

 古林渚

 そして最後に上坂弥夜衣

 この部隊の隊長は竜馬にまかせる」

そのの言葉に俺は耳を疑った。

「ほら、早く行くよ」

そんな俺の気持ちを知らない渚は前にでるように促した。

「よろしく」

前に出てきたあたりで勝本玲次が俺に聞こえるくらいの小さな声で言った。

それに俺は礼で返した。

「この三人が今回の特別遊撃部隊その名は〈グングニル〉だ

彼等には状況をみながら援護、攻撃を行ってもらう

さて次は作戦の詳細に移る

私たちのところの戦力が揃ったことにより全国の運命デステニィー抵抗レジスタンスは一週間後国家の基地に攻撃をしかける。

情報によると私たちが攻めるところには運命デステニィージャッジメントめる者がいると判明した。

くやしいことに能力の情報までは手に入らなかったが顔写真は入手した」

勝本玲次はモニターに一人の人物の写真をだした。

「こいつを見たら通常戦闘員はすぐに逃げろ対処は〈グングニル〉に任せるように以上」


一週間後の24:00 国家戦闘員前哨基地兵器庫前


そこには日本最新鋭戦車《土竜》が五機のほかに軍用ヘリ《隼》が二機第五世代アマードスーツが四機あった。

前哨基地とした潤沢とした戦力だった。

しかしその潤沢した戦力も次の瞬間ただの鉄屑と化した。

《土竜》が二つに分かれた。

それをした張本人は上坂弥夜衣である。

運命ヴァルザン・ディ・スレイヤーく刀で斬られた《土竜》の爆発は誘爆していき五分も経たずに前哨基地兵器庫の兵器は破壊された。

「総員、第一戦闘配備基地内に侵入したものがいる。速急にこれを撃退せよ」

正面入り口では既に運命デステニィー抵抗レジスタンスの戦闘員が攻撃に当たっていた。

弥夜衣たち特別遊撃隊〈グングニル〉はまず兵器の破壊に当たっていた

しかし実際に破壊をしたのは弥夜衣だけである。

渚の武装では戦車を破壊するまでの威力はなく

かといって竜馬のは攻撃に不向きなタイプである。

しかし弥夜衣の武装は最新鋭戦車の装甲も簡単に切断できる威力を持っている。

今は特別遊撃部隊〈グングニル〉は三人とも単独行動をとっていて、竜馬は突撃部隊の援護兼防衛、渚は戦闘員の数を減らしている。

弥夜衣は辺りに敵兵がいないことを確認すると彼は一旦刀を鞘に納めた。

この一週間で彼が自分に一番合った戦闘スタイルを見つけたそれが戦闘開始に抜刀術で先手をとりそのあとはただ手当たり次第に敵を斬りまくる。

弥夜衣命名『狂戦士バーサーカ戦法』である。

無論そのために必要だった回避力を彼はこの一週間で可能な限り高めた。

「いたぞ。あれは・・・・・・気をつけろ運命デステニィーを打ちブレイカーる者がいるぞ。相手の武装は近距離タイプだ。距離を置き確実に仕留めるぞ」

それに続く十人位の声がした。

「了解」

しかし弥夜衣もそんなことは想定済み。

再び彼は刀に手をかけた。

「〈疾風しっぷう迅雷じんらい〉」

彼が一週間で編み出した技の一つである。

疾風の如く相手の懐に飛び込み、迅雷の如く相手に刀を斬りつける。

国家戦闘員はさっきまで兵器庫前にいた人物が突然姿を消したのに驚いたがその思考は一瞬でかき消された。

「ぐわっ」

「うわぁ」

一気に二人の戦闘員が彼に斬られたのだ。

「う、撃ってーー」

他の戦闘員はその命令をすぐに実行した。

しかしその攻撃は当たらなかった。

「〈疾風はやて〉」

刀は相手との距離が近くなければ意味がない武装である。

彼の刀も『実体化』によって作られたとはいえ距離をどうにかする能力は一切なかった。

また実戦となれば銃が出てくるのが当たり前だ。

だから彼が見つけたのは自分の思考も速度も全て加速させればいいと思いついた

その加速は疾風のごとくに。(この技を発動するのには運命ヴァルザン・ディ・スレイヤーく刀が必要である)

弥夜衣は一人に斬りつけるとまた一人。

斜めに斬りつけさらにそこから上に持っていき刀を手から一回手放し逆手に持ち換えそこからさらに斬りつける。

撃ってきた弾も〈疾風〉で見切り斬るか避けるかの二択だった。

次の目標との距離が遠ければ〈疾風〉を使い一気に距離をつめ容赦なく斬りつける。

十人なんて戦力は全く意味がなかった。

弥夜衣を倒したければその二倍いや五倍の戦力で挑まなければ勝機はないだろう。

彼が銃に対してした対策は二つだけ。

初撃で一気に相手の懐に飛び込み混乱させ。

そこで銃を使っても自分の全てのものを加速させそれを回避する技を編み出し身につけただけだった。

彼は今度は刀を鞘にしまわず、戦いの気持ちよさに感傷していた。

彼は楽しんでいた。

今さっきの戦いを。

別に肉を裂くのが楽しい。

血飛沫ちしぶきがでるのが楽しいとかではなくただ純粋に戦いというものを楽しんでいただけなのだ。

「こちら、突撃第弐部隊。援軍を要請する《土竜》がいる。至急援軍をうわぁぁぁー」

通信の向こうが側から爆発が聞こえたと同時に通信も途切れた。

弥夜衣は刀を(・・)鞘に(・・)・・・・めずに走り出した。

彼の〈疾風〉の発動条件は刀を抜いているときと限定されている。

〈疾風迅雷〉はあれは一瞬しかも一直線でしか移動が出来ない技である。

彼にとって初撃を与えられないことは痛手である。

彼の戦法はあくまで混乱した相手を瞬時に斬り倒すものだ。

その初撃が一番成功する確率が高いのが〈疾風〉を使ったときではなく〈疾風迅雷〉を使用したときだった。

しかし今はそんなことをいっている場合ではないと弥夜衣は自分の頭に言い聞かせ突撃第弐部隊がいると思われる場所に。


戦闘員寄宿所近く


「間に合ったか」

俺はまず周りの状況を確認した。

突撃第弐部隊は物陰に隠れていた。

被害はそこまでもなくしかし何体かの死体があった。

それを死体といっていいのかは分からないが。

その死体はなんとか人間だったということが分かるくらいで一体誰が誰の死体かは分からない。

これは陸上戦車《土竜》の砲撃によるものだと見ずにとも分かった。

砲撃を喰らったらミンチみたいになるか。

面白い、俺はそう思った。

恐怖、驚愕といった感情は一切なかった。

ただの面白い、楽しいと思った。

こうなったら逆に迷いなど無駄かと判断すると俺は傍から見れば無謀と思われるように《土竜》に飛び出した。(実際は無謀だが)

《土竜》に乗っていたパイロットはすぐさまに俺に気がつき、一秒当たり六百発出される55mm砲を発砲した。

「〈疾風〉」

俺の思考が加速した。(具体的に言えば身体的にもだが)

さすがにこの弾を全て切り落とすのは無理か、かといって全部避けるのもきつい。

ならば弾が当たらないところにいけばいい。

周りの時間ではわずかコンマ一秒これが思考タイム。

残りはこの対策に全てをかける。

俺は地面を思いっきり強く蹴り宙にういた。

五メートル近くは浮いていると思う。

運命デステニィー打ちブレイカーる者て本当にチートだな)

俺は自分の体を前にだした。

俺が目指しているところは〈土竜〉の操縦口の上である。

《土竜》の攻撃が全く当たらない場所それは《土竜》自身がいる場所である。

特に苦労もなく操縦口の上に乗れた。

刀は抜いたままであった。

刀で操縦口の鉄板を斬り取っり《土竜》の中に入った。

そこからパイロットたちは無抵抗に俺に捕まった。

彼等はあくまでパイロットであったせいか通常装備を一切持っていなかったナイフの一本すら。

そんな相手を殺すのは敵であってもしたくはない。

しかたなしに俺は敵兵を無力化し、第弐部隊にあとを任せた。

そしたら再び通信が来たしかし今回の相手は勝本玲次からだった。

「弥夜衣君かい」

「はい。こちら弥夜衣ですが」

「さっそく本題に入る。今さっき運命デステニィージャッジメントめる者を発見した。今からその情報を今からそちらに送る」

そこで通信が切れた。

しかし俺は情報を受け取るような機械をもらっていない。

どこから情報がくるんだ。

その時俺の頭の中に映像が流れてきた。

流れてきたと軽い表現だが実際はかなり乱暴だ。

「はぁはぁはぁ」

全ての情報を受け取ると刀を鞘に収め俺は走り出した。

場所は決まっている。


前哨基地本部内部奥地

「いらしゃい。運命デステニィー打ちブレイカーる者」

「御出向かいありがとうございます。運命デステニィージャッジメントめる者」

弥夜衣は刀に手をかけた。

「おいおい。いきなり無礼じゃないか。私はまだ敵意を向けていないつもりだが」

そう言われるとそうなので弥夜衣は仕方なしに刀から手を離した。

「話の分かる子じゃないか。そのまま抵抗しないでくれよ」

弥夜衣の目の前にいた男は突然姿をけした。

次の瞬間彼は倒れた。

衝撃を受けれ倒れた訳ではない。

意識が刈り取られて倒れた。




お前はなんのために戦う


(わからない)


なにを求めて戦う


(わからない)


ではなぜ戦う


(俺はただ俺を助けてくれた人に恩返しをするために)


嘘だな


貴様は嘘をついている


(嘘じゃない)


では問う貴様は戦いをどう思う


(・・・・・・)


やはり答えらぬかでは言ってやろう貴様は戦いを楽しんでいる


(っ)


その様子は当たりのようだな


(違う俺はそんなこと思っていない)


では私が当ててやろう貴様は戦いを楽しんでいる


(楽しんでなんかいない)


嘘だな貴様は楽しんでいる。確かに肉を裂くのにも興味がないらしいがこれなら

どうだ貴様は人の命を終わらせているのを楽しんでいる。


(違う絶対に違う)


ほう。そう答えるか


(違う、違う、違う俺はそんなこと思っていない)


「では君はなにを求む」


誰だこの空間に入れるのは私とコイツだけのはず


「もう一度聞く君はなにを望んでいる。君が戦う理由それは感謝されることじゃ


 ないか。」


(確かにそうかも知れない。俺は戦って感謝されたかったんだ。ゲームの主人公みたいにただの親切とかじゃない誰かの未来を運命を切り開きたいんだ)


「ほら。分かったじゃないか。あとはもう大丈夫だ。さあこの空間切り裂け」


運命ヴァルザン・ディ・スレイヤーく刀)


「なに。私のウィードハートルックせるものが効かない」

「いや効いていたよ。ただ俺はそれを乗り越えて斬り開いただけさ」

男は逃げ出そうとしたが俺はそれを許さなかった。

「〈疾風しっぷう迅雷じんらい〉」

俺は躊躇いもなく男を切り裂いた。


この戦闘は運命デステニィー抵抗レジスタンスの圧倒的勝利だった。



あの戦いから一ヶ月各地の抵抗組織レジスタンスは勝利を治めていた。

それと同時に運命デステニィー抵抗レジスタンスは世間の表舞台にでた。

世界で日本がどう見えているのかを報道。

これにより一般市民も最初は混乱していたが信じるものいれば信じないものもいた。

信じたもの何割かが運命デステニィー抵抗レジスタンスに入った。


東京都元国家戦闘員前哨基地前


「さあ。早く行きましょう」

「うん」

そこには母とその娘と思われし人がいた。

「私、死んじゃうの」

「大丈夫よ。きっとあの人たちならどうにかしてくれるから」

この親子の目的は運命デステニィー抵抗レジスタンスの基地にいき『運命』を受けた娘を助けてもらうことだった。

「さあ。頑張りましょ。もう少しだから」

「うん」

それが娘と母の最期の会話だった。

次の瞬間二人は殺された。


元国家戦闘員前哨基地

「おい。弥夜衣お前にちょっと頼みがあるんだが」

「はい」

「実はもう少しでここに一組の親子が来るんだそれでお前にはその親子を迎えにいってもらいたい」

ここの所の運命デステニィー抵抗レジスタンスの仕事はこんなことだかりである。

「情報はこの端末にあるからよろしくな。

「あっちょ竜馬さん。行っちゃた」

俺は頭を抱えたまた面倒なこと引き受けてしまった。

てか今回の場合は俺に選択権はなかった。

「しゃーない。行くか」

俺は仕方なしに出ることにした。


「は~。かったり~」

俺のやる気のない独り言。

いつもはこうじゃないのにな。

まあいいか

おっ。

あそこにいる親子がそうかな。

よーしとっとと回収して寝るか。

そう思い俺が駆け出したとき目の前で二人の親子が殺された。

運命ヴァルザン・ディ・スレイヤーく刀」

条件反射で俺は小声でいった。

手の中には既に刀があった。

「あなたが上坂弥夜衣ですか」

前方から声がした。

そこにはいつまにか俺と同じくらいの年の男がいた。

「はい。そうですが」

「ならよかった。私の名前はしば嘉高よしたかといいます。」

気がぬけない。

一瞬でも気を緩めたら殺されそうだ。

「それと運命デステニィーチェイサーばれし者でもあります。

 もうひとつの名前は「断罪人」とも呼ばれています。

 先日はイガラシさんがお世話になりました」

俺は刀に手をかけた。

「断罪人」そのことを俺は勝本玲次からきいていた。

頼まれでば標的が女、子供でも関係なしに殺す男。

イガラシていうのはあの男のことだろう

「そう警戒しないでもらいたい」

「お前があそこの親子を殺したのか」

「ああ。そうだが」

俺の頭の中が真っ赤になった。


俺はいつの間にか戦っていた。

原因はあそこで娘と一緒に死んでいる親子にあった。

「なんであの罪のない親子を殺した」

「あいつ等は『運命』に逆らおうとしたのだ。この日本で『運命』に逆らうことは国家叛逆罪にあたる。

 叛逆罪の償いかたは死んで償ってもらうことしかない。」

この戦闘が始まってまだ五分としか経っていないが俺はまだ一撃を相手に入れていない。

それは向こうも同じであった。

この感覚まるで手加減されているようだ。

「どうしたんだ運命デステニィー打ちブレイカーる者。たった二匹の愚民が死んだだけだぞ。」

たった二匹。ふざけるなあの人たちは動物じゃないんだぞ。愚民なんかでもないただ助かりたかっただけなんだ。

生きていたかっただけなんだ。

「ふざけるな」

全てを含めて放った言葉がそれだった。

その何分か無言の攻防戦が続いた。

「面白い。やはり貴様は面白い。今ここで降伏するなら国家戦闘員に入隊できるようにしてやれなくてもないぞ」

「嫌だね。俺は」

俺は一回距離を置いて、刀を鞘収めた。

「なら貴様も裁いてやろうこの運命ギルティンを断罪するソーンで」

「俺はそれを斬り裂く運命ヴァルザン・ディ・スレイヤーく刀の一緒に」

戦場に一瞬の静寂が訪れる。

それを破るのは俺だった。

「〈疾風迅雷〉弐の型」

壱の型がただ前に直進するのであれば弐の型はジグザグに動き完全に攻撃地点をランダムにするもの。

「〈判決エマ〉」

しかしそれは止められた。

「まだまだ。〈疾風〉」

俺の全てのものが加速した。

絶対に返しが利かないところをしかしそれもまた止められた。

どこを攻撃してもこちらの攻撃は利かないまるで抗えないなにかがあるようにその疑問に答えたのは目の前のいる奴であった。

「なぜ、攻撃が当たらないかて顔をしているな。まあいい教えてやろうそれは私の選ばれし者としての力〈不可レジェンドオブ抗力デステニィー〉これは貴様がなに をやっても当たらない真相だ。抗えようのない運命を貴様に下した。

 貴様はいくら攻撃してきてもそれは抗えようのない力で私が防ぐ」

自分の体から力がぬけていくのを俺は確かに感じた。

「その様子ようやく分かったようだな。所詮定められた者には勝てても選ばれしものには勝てないと」

柴嘉高は剣で俺のことをなぎ払った。

地面に倒れこんだ俺はすぐに立とうとしたが立てずにいた。

本当に力がぬけてしまったのだ。

「ここまで私と戦えたことへの褒美だ大技で決めてやる」

俺はただ倒れこんでいた。

罪人エグゼ断罪キューターする剣」

これが俺の運命だったかも知れない。

そう運命。

運命?

そもそも運命はなんだ。

運命は他人が用意するものなのか。

違う。

運命は自分で作るものだ。


正解だ。


またあの声がした。

どう正解なんだ。


君は見つけたのだ運命がなんたるかを

まだ誰も見つけていない

この世界では誰も見つけなかったことを


こんなの少し考えれば誰だってわかるだろう。


だが今の人々にはその少し考える時間がない

君になら託せる

君はもう打ち破る者じゃない

いや君ははじめから作る者として覚醒していたが

私がそれを封じ込めていた運命とはなんたるかを理解出来るまで封印することした

しかしそれでも君は作る者としての力が少しでていた

だから今はもう全てを開放させよう

君は運命を作る者だ


俺の意識がはっきりしだした。

体には簡単に力が入った。

まだ攻撃は来ていないなら

相手はまだ剣を振り下ろしている最中だった。

つまりこれは〈疾風〉が発動している状態である。

刀も握れる。

いける。

運命アンダイ

鞘から刀を抜いた

ぶつかりあう二つの刀。

そしてぶつかりあう二つの能力〈不可レジェンドオブ抗力デステニィー〉と運命を作りし者の力。

俺が作りだした運命は抗えない力はないだった。

これで〈不可レジェンドオブ抗力デステニィー〉は無効になる。

あとは単純な力比べである。

どちらの能力が強いかが勝負を決める。

「はあぁぁぁぁぁぁ」

「うおぉぉぉぉぉぉ」

二つの力がぶつかり大きな爆発が起きた。


「俺の勝ちだ」

「・・・・・・」

どうやら気絶してるらしい。

「すぐに楽にしてやるよ」

俺は刀を振り上げ下ろした。

しかし俺が斬ったものはアスファルトの地面だった。

「仲間がご迷惑をおかけした」

「だれですか」

「俺は運命デステニィー)チェイサーばれし者の一人深紅のくれないだ。こいつはもって帰る」

紅という男は俺と逆のほうに背をむき歩き出した。

「おい。待て」

紅という男は俺に振り向いた。

「今ここで俺を見逃すのは君のためだ。

 今の君の状態で俺を倒すのは不可能だ。俺は君を見逃すといってるのだ。」

俺は押し黙った。

「では。運命デステニィーを打ちブレイカーる者」

「俺は運命デステニィーイデオンる者だ」

紅は驚きの表情を見せたがすぐに元に戻った。

俺はただ見ているしかなかった。

紅が見えなくなるのを確認すると俺は地面に倒れこんだ。

今度の倒れたのは安心と疲労からだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ