残酷な王様
昔々ある所に、とても残酷な王様がいました。
どのくらい残酷かと言えば、ちょっとでも王様の気にくわないこと・意に沿わないことがあれば即死刑送りにしてしまう人でした。
ある日の事です。
「今日の夕餉を作ったのは誰だ!」
「私ですがどうなさいましたか? 王様」
「貴様か。今日の私の夕餉に、キノコを入れたのは。私は、あれが大っ嫌いなのだ。貴様なんか死んでしまえ」
「ですが王様、まだ食べていませんではありませんか……あれは食べれば美味しい料理のはずです」
「五月蠅い。よくも、あんなものを私に食べさせようとしたな」
その日のうちに王様の料理を作った料理人は処刑されました。
またあくる日の事です。王様の側近が政務の報告をしている時でした。
「王様、近隣の村々が食料難に陥って穀物の生産がストップしています。如何様にしましょうか」
「全員殺しておけ。食い扶持が減って、逆に助かるわ!」
「畏まりました」
その日、国の地図から幾つかの村が消えました。
別の日の事です。慌てた様子で大臣が駆け寄ってきました。
「何事だ大臣?」
「はあ、それが王様に不満を持った民たちがクーデターを起こして王宮に迫っています」
「殺せ」
「はっ?」
「だから全員殺せ! こんなバカなことをした一族郎党まとめてだ」
王様は持てる力を出してクーデターの全員とその一族郎党をまとめて殺しました。
「王様! 国民が続々と流出していきます」
「構わん。逃げる奴など躊躇なく殺していけ」
こうして殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して……。
国民の数はどんどんと数を減らしていきました。
そしてついに――。
とうとう王様は一人ぼっちになりました。
国民の居ない国は国ではありません。国が無ければ王様は王様ではありませんただの男です。
男はこんな状況に陥って初めて悟りました。
「元から、完全に気にくわない所がない人間なんて、この世に一人としていなかったんだ。それに気づかず、私は最後の一人になるまで人を殺してしまった」
ところで話は変わるのですが、残酷な王様に味方なんて実の所一人として居ませんでした。
では、どうやってたった一人で国民全員を虐殺ができたのか?
「ああ、だれか私を殺してくれ! 私は酷い王だ。……でもそんな事のできる者は一人もいない。国民の全員に至るまで、私が殺させたからだ」
王様は空虚となった王宮で懺悔しました。
『はい。分かりました』
本当にそれは一瞬のことでした。王様は頭の中に響いてきた謎の声を聴いた途端――。
――ポトリ。と。
まるで、椿の花のように首が落ちました。
誰が王様だった男を殺したのか。
事実を知っているのは、人のいない王宮と、最後の一人が消えて滅んだ国だけでした。
ミステリーなんてタグにはありますが、どちらかといえばオカルトとして作品をたのしんでください。