表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MSW  作者: 景雪
5/13

たろ吉

 翌々日、懲りもしないで鈴木の病室を訪れた。

 「先生、屋上から飛び降りるのと、ロープで首をくくるのと、どっちが楽ですか?」

 「鈴木さん。何で部屋を閉め切っているの?」

 「犬が、逃げないように」

 「は?」

 「犬、飼っていたんですよ。まだいますよ。家に」

 「ああ。部屋を閉め切る癖がついちゃったのね?」

 「可愛いよ、うちの犬。たろ吉って言うの。毛が白くてきれい」

 「今はどうしているの? たも吉」

 「たろ吉だよ。間違わないで! 今も家にいるはずよ」

 「え? 閉め切った部屋に? エサは?」

 「ドックフードを畳の上にまき散らして来た」

 「それじゃ足りないでしょう?」

 「大丈夫。たろ吉は頭の良い子だから。連れて来て見せてあげるよ」

 「見せてよ。白くてきれいな犬なんでしょう? 見たいな、約束だよ」

 それから鈴木の症状は一気に回復し、三日後に退院にこぎつけた。

 「やるじゃないですか。牧岡さん」

 マキちゃんが笑うと八重歯がきらりと光る。この八重歯を見ることだけが唯一の楽しみだな。俺は思った。

 次の日、鈴木は約束通り飼い犬を連れてきた。白い毛並みは意外と美しく、彼女の言ったことは嘘ではなかった。

 「たぼ吉、可愛いですね」

 「たろ吉だってば!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ