4/13
自殺志願者
次の日、俺は早くも一人で鈴木の相手をさせられた。
マキちゃん、ひどいよ。一人でこんなババアの世話はやだよ。
「先生、屋上から飛び降りるのと、ロープで首をくくるのと、どっちが楽ですか?」
「窓でも開けましょうか」
「やだ。いやだ」
「でも、閉め切っていると空気が濁るし」
「空気が見えるの? 先生」
「いや、見えないけど」
「嘘つき。先生の嘘つき! 出てって!」
こうして俺は鈴木に三十秒で追い出された。仕方がないので、昨日マキちゃんと訪問した十人ばかりの病室を適当に回り、どうでもいい会話で時間をつぶした。
翌日、鈴木の病室をまた訪問する。
「先生、屋上から飛び降りるのと、ロープで首をくくるのと、どっちが楽ですか?」
しめた。昨日のことは忘れているか、少なくとも根に持ってはいないな。
「どっちも苦しいよ」
「生きてる方が苦しい」
「そんなことはないよ」
「何で?」
「いいことだってあるよ」
「例えば?」
「うーんと……そうだな……」
「出てってよ!」