寝耳に水
「MSWだ」
「は?」
思わずそう声に出してしまった。
「メディカル・ソーシャル・ワーカだ」
「あ、一応知っています」
そうじゃない。俺がまぬけな声を出してしまったのは、黒島課長が言った言葉の意味が分からなかったからではなく、自分がこの市立病院でMSWをやれと言われたからだ。
「私は、事務職ですが」
「主事は持っているだろう? 社会福祉主事任用資格」
「三科目主事ですよ。法学部だったから法学、民法、行政法の三科目を履修していただけです」
「保護のワーカーをやっていただろう?」
「そりゃ、生保のワーカーなら事務職でもできますが、MSWは国家資格を持っている専門の福祉職がやる仕事ですよね?」
「牧岡。人口が百万人を超えるような政令市ならともかく、うちのような小さな中核市では、福祉職などそうそう集まらないんだ。だから事務職が福祉職をやらなければいけない場合が多々ある。資格はおいおい取ってもらう。社会福祉士か精神保健福祉士」
「MSWって医療ソーシャルワーカーですよね? 入院患者の相談や援助をするような。私にできるかどうか……」
「できるかどうかじゃない、やるんだ。君の所属は精神病棟だ」
「……へ?」