No.4 「来訪」
記録。
早乙女 嶺の弁当に、柳井芽依の髪の毛が付着していた。
そのせいで、早乙女 嶺はピンチである。
「誰かのが付いたんだよ」
「そんなはずない!!」
「な、なんでそんなにこだわるんだよ!?」
「付き合ってる人がいるの?」
「親だって......」
「嶺さんの家、車ないじゃん。傘も一つだけじゃん」
「し、知らないし」
「逃げるなー」
早乙女 嶺は逃亡した。
放課後、生徒会室。
(なんで今日に限って生徒会なんだ......)
ドバァン!!
滝沢、入室。
「あははは、嶺さん。ねぇ。ねぇ?」
「しつこいわ」
「え......」
「え?」
「嶺さんのバカぁ!」
ドバァン!!
滝沢、退室。
「えぇ」
同時に、大倉入室。
「どうも。滝沢さん、どうしたんですか?」
「わからない。一人で暴れてる......」
「そうですか......」
「今日は早く済ませよう。今度の企画書は?」
「はい。完成させておきました」
「ま?」
「はい」
早乙女 嶺は、それを一通り見て引き出しにしまった。
「......俺は帰る。お疲れ様」
「はい、僕もゲームしたいので帰ります」
「あら、お二人方。どちらへ?」
「今日はもう終わったから帰るんだ。遅かったな」
「随分とお早いことですね。滝沢さんは?」
「たぶんもう帰った。企画書はしまっておいたから」
「早乙女 嶺」
「フルネームで呼ぶのやめたら?」
「早乙女さん。あなた、生徒の手本であるべき存在なのに、女性と関係を持っていますね?」
「滝沢も聞いてきたけど、どうしたんだよ」
「淫乱な男が学校のトップに立つなんて許せない。コロスコロスコロスコロス」
(こいつ、完全にキャラ崩壊している)
「逃げましょう早乙女さん。これやばいですよ」
「あぁ。そうだな」
「早乙女さん早乙女さん早乙女さん」
「三回も呼ぶな」
ドバァン!!
「待って西園寺さん!認めてあげないと可哀想だよ!」
(認めるって、何をだよ!?)
「どうして?」
「嶺さんも男の子だもん。せっくすしたいのは人間の本能だし」
「何を!?」
一人何もわからない大倉は混乱した。
早乙女 嶺も、よく状況がわかっていない。
「早乙女さん、彼女いたんですか?」
「いない!独身だ」
「セ......」
「せっくすだよ」
「〜!」
(西園寺が怯んだ。滝沢がなんか食い止めてくれている。だがどうする。誤解を解かなければ)
「おい、そんな彼女彼女言うなら、俺の家に来いよ」
「えぇ!?せ......」
「黙れ」
早乙女 嶺の帰宅。
彼は、仕事もなかったのに疲れていた。
「お疲れ様でございます。何か入れましょうか?」
「いいです、ありがとうございます。今度、人が来るんだけれど、少しの間隠れられないですか?」
「はい......あの、敬語は」
「やめてほしいんですか?」
「はい、私の立場上、敬語は」
「わかった」
「あの......」
「なんだ?」
「私に出来ることは、他にありますか?」
「たとえば?」
「夜の方も、作法は知っております」
「やめてくれー!」
「あ、ごめんなさい」
(なんだよ今日は。みんなして下ネタばっか)
「経験あるのかよ」
「いえ」
「そういうのは、好きな人のためにとっておけ。そういうもんだろ」
「......はい」
後日、西園寺、滝沢、大倉、来訪。
「うわー。一人暮らしなんですか?」
「あぁ」
「散 策ー!」
「こら待て。ゲームあるぞ」
「いいですね。何がありますか?」
「今日のためにレースのを買ってきた」
カチャカチャカチャ......。
「また......負けた?」
西園寺、最下位。
「早乙女さん、早いですね。やってました?」
「似たようなのはやったことあるよ」
「私トイレ」
「右奥だ」
「ラジャー」
滝沢には企みがあった。
見えなくなったところで、滝沢は別の部屋を探した。
もちろん、私は見ている。
(ここ、かな?)
早乙女 嶺の寝室に侵入した。
(ベッドに残って、嶺さんが来たら「召し上がれ」とか、どうだろう)
「こんにちは。排除してもよろしいですか?」
「わ、喋った?待って、どんな服を着てるのか見たいだけなの」
「......それ以外の行為をした場合、排除します」
「うん。クローゼットは?」
「......ここにはありません」
(嘘だ)
「こっちかな......」
(嶺さん、私服のセンスはいかほどに)
「オーペン!」
「ひぁ......ぅ」
(なんだこの可愛い生き物は!?)
柳井芽依、見つかる。
リビングでは。
「今度こそ負けませんよ」
「いつでもゴールで待っていますから」
「チッ。あなたね」
「ひいっ、ごめんなさい!」
西園寺、ブチギレ。
「......」
「嶺さん......」
「あの」
「嶺さんのバカぁ!」
ドバァン!
「あ、なんか今すごい音しましたよ」
「何事だよ」
「やっぱり可愛い子と暮らしてたんだぁ」
「いえ、あの......」
「早乙女 嶺?」
西園寺の殺気が、部屋に充満する。
「ちょ、一人暮らしじゃないんですか?」
「姉だよ!」
「嘘だぁ。全然似てないもん」
「あ、あのっ!」
柳井芽依の声で、騒いでいた滝沢が静まる。
「私、ただ早乙女様の手伝いで.....!」
「そういうことか......一人暮らしなんて大変ですからね」
「......では、質問です」
西園寺、容赦なし。
「正直に答えてください。早乙女さんと肉体関係は?」
「ありません」
「おぉ、早乙女さん聖人だ」
「当たり前だろ」
「精神的な男女の関係は」
「ありません」
「......よろしい。私の家にもメイドはいますので」
(勝手に質問して、勝手に納得された......)
「では......」
「あの、少し外してもよろしいでしょうか」
「なぜ」
柳井芽依の落ち着きがない。
以前にもあった。
彼女がクローゼットに隠れていたのは、もうすぐ二時間。
活動限界だ。
「早乙女 嶺。活動限......」
「シャラップ。柳井さん、どうぞ」
「うぅ」
柳井芽依は動かなかった。
正確には、動けなかった。
「やばい?」
「はぃっ......」
「嘘だろ」
早乙女 嶺は、柳井芽依を抱いて急いで水場へと行った。
「抱っこ......」
「コロス」
「ひぃっ!?西園寺さん?」
帰ってきたのは、二○分後のことである。
「ごめんみんな」
「あれ、着替えたんですか?」
「あぁ」
早乙女 嶺はパーカーに着替えた。
なぜとは言わない。
「せ......」
「黙れ。途中で洗剤を溢しただけだ」
「何をしていたんですか?早乙女さん」
「彼女、ちょっと怪我してるんだよ。ケアのやつ交換してた」
「そういうことですか。まあ、仕事に苦労はつきものですからね」
「で、申し訳ないんだけど、そろそろ帰る時間じゃないか?」
現時刻は六時。
普通に帰宅する時間だ。
「一人暮らしなんですよね。早乙女さんがよければ、みんなで食べませんか?僕なんか買ってきますよ」
「でも、親がなんて......」
「それね、もう言っておいた」
滝沢はすでに考えていた。
「僕も今日は家一人なので」
大倉は言い出しっぺなだけあって、無問題だ。
「私は、残念ながら帰らせていただきます」
(あぁ、怖かった)
(西園寺は何するかわからん)
ホッとする二人。
西園寺に対する恐怖心が今日、芽生えた。
その後、四人でコンビニに行き、食べ物を買ってきた。
「カンパーイ!」
「か、カンパーイ......」
「早乙女さん、お疲れ様です」
「あぁ......」
「申し訳ございません。日々ご迷惑をおかけして」
「いいんだよ、気にするな」
「では、私はここで」
「待てよ。一緒に食べよう」
「そうだよ。みんなと食べた方が美味しいよ?」
「そうですね。僕はここ数日で痛感しました」
彼らは、また家に来るかもしれない。
私は一応、人物登録をしておくことにした。
「こんにちは」
「え、喋った」
「あなたが、大倉大輝ですか?」
「あ、はい」
「あ、それね。私も喋った」
「これが、もしかして好きな機械的な?」
「そうだね」
その日は、四人と一個で食卓を囲み、後日......。
「早乙女?」
西園寺がすごく怖くなっていた。




