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第2話:囚われの少女

◆潜入開始

夜の静けさを切り裂くように、風が吹き抜ける。ヴァンとノエルは、屋敷の外壁に沿うようにして影の中を進んでいた。

ノエル「ほら、言ったでしょ? 罠だらけよ。あそこも、あそこも」

黒猫は夜目がきく、ヴァンには見えないがノエルには見えているのだ。センサーとワイヤートラップが闇の中に微かな光を反射している。

ヴァン「……ちっ、どこだよ?めんどうだな」

ノエル「あたしが安全なルート探すから」

仕方ない、といった様子でノエルが前に出る。

ノエル「ついて来て。絶対言った通りに通ってよね!!足吹き飛んでも知らないから!!』

ヴァン「へいへい、お願いしますよー」

ぶつぶつ言いながらも、ヴァンはノエルの後をついて進んでいく。


◆屋敷内部

ノエルが小窓から器用に侵入し、内側の錠を外す。ヴァンが姿勢を低くして滑り込んだ。

屋敷の中は、外観とは対照的にやけに静かで、人工的な消毒の匂いが漂っている。

ヴァン「……病院か研究所みたいな薬品の匂いだな。嫌な感じだ」

ノエル「この屋敷、普通じゃないわね」

廊下には絵画や壺が並ぶが、どれも妙に新しく、生活感がない。“誰かが暮らしている家”の空気が欠けていた。

ヴァンは警戒しながら足を進める。


◆隠された地下施設の存在

屋敷の奥、使用されていないはずの物置部屋。ノエルが床下の一点を爪でカリッと引っ掻く。

ノエル「……ここ。空洞になってるわ」

ヴァンが床板を外すと、冷たい鉄のハッチが見えた。

ヴァン「地下か。匂いはここから強くなってる。こりゃますます怪しいな」

ハッチを開けると、下へ続く薄暗い階段。湿気と薬品の混じった空気が吹き上がる。

ノエル「少女行方不明……この施設の広さ……嫌な予感しかしないわね」

ヴァンは表情を引き締める。

ヴァン「行くぞ」


◆地下施設・監視エリア

階段を降りた先には、薄暗い廊下と無人の監視室。モニターが何十台も並び、屋敷の各所や地下の部屋を映し出している。

ヴァンは椅子に座り、モニターに目を走らせた。

ヴァン「……は?」

そこには、監禁部屋らしき小部屋の映像がいくつも映っていた。鍵付きのドア、衝立、血の跡、そして服の残骸。研究資料。

ノエルは眉をひそめる。

ノエル「……少女たちを使って人体実験?」

ヴァン「くそ……最悪の予感が当たったか」

しかし映っている部屋はどれも 空 だった。

ノエル「誰もいない……? 移された?」

ヴァンはさらに奥のモニターへ切り替える。すると──

一つだけ、カメラが砂嵐になって映らない部屋があった。

ヴァン「壊れてる……いや、意図的に遮断されてるな」

ノエルが爪先でスイッチを指す。

ノエル「その部屋だけロックが二重になってるわ」

嫌な空気が流れる。


◆少女の手がかり

監視室の隅に、書類の束が無造作に置かれていた。ヴァンは一番上を取り上げる。

ヴァン「……少女捕獲リスト?」

そこには生年月日、特徴、身長、そして“処分予定”という不吉な欄まであった。

ノエルが小さく震える。

ノエル「こんなもの、よく平然と……」

ヴァンはリストの最後のページに目を止める。

そこには──

“対象No.15:リースリン・ブランシュ(23) 特別枠・厳重隔離”

ヴァン「……23歳? 少女って歳じゃねぇな」

ノエルは目を細めた。

ノエル「特別枠?目的が……違うんでしょうね」

ヴァンは舌打ちする。

ヴァン「その“特別枠”が、例の部屋だな」

監視室の机の引き出しから、指紋登録付きの特殊アクセスカードが見つかる。

ヴァン「へぇ、ラッキー」ノエル「お粗末な管理……ちょろいわね」

ヴァン「行こう」

ヴァンはカードをポケットに突っ込み、立ち上がる。


◆少女発見直前

地下の奥に向かうほど、空気は冷たくなり、壁はむき出しの鉄板に変わっていく。照明は少なく、遠くから金属が打ち付けられるような音が響く。

ノエルが低くつぶやく。

ノエル「……いやな気配」

ヴァン「だな。ここが一番深い区画だ」

カードキーを通すと、二重ロックが重たい音を立てて開く。

ギィイィ……

扉が開いたその先で──ヴァンは思わず息を呑む。

そこには、鎖で繋がれた一人の女性の背中があった。

ヴァン「……見つけた」

ノエルの瞳が細く光る。

ノエル「対象No.15──“特別枠”の女ね」

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