魔王、園児の笑顔に心を打たれる
午前の騒動もなんとか収まり、園庭に静けさが戻った午後。
魔王マオは泥だらけのマントを払いつつ、ベンチに座る。
「……静か……だ……」
静寂の中で、園児たちの小さな声や笑い声が耳に届く。
その時、泣いているハナを抱っこしているサクラの姿が目に入った。
「園長、お願い、抱っこしてあげて」
ハナは小さな手でマオの指を握り、目をうるませている。
「……抱っこ……?」
魔王はまだぎこちないが、恐る恐る腕を差し出す。
赤ちゃんは笑顔で身を委ね、マオの心の中に小さな震えが走る。
「……この感覚……なんだ……」
恐怖や支配ではなく、暖かさと安心――
園児の笑顔や信頼が、魔王の心を少しずつ溶かしていく。
その後、リナとユウトが楽しそうに砂場で泥だんごを作っているのを見て、マオは静かに呟く。
「……笑顔……これが……戦利品……なのか……」
普段は無口でドSな魔王が、初めて“達成感”という感情を味わう瞬間だ。
給食の時間、ミオが大口を開けてご飯を食べる姿を見て、マオは思わず微笑む。
「……小さき者たち……よく食べる……」
ケンジが隣で「園長、表情が緩んでます」と小声で突っ込むが、マオは気にせず笑顔を見守る。
午後の自由遊びでは、園児たちの遊びを見守るだけでなく、魔王自ら参加。
滑り台で一緒に滑ったり、砂場で泥だんごを作ったり。
「……この世界……支配よりも……価値がある……」
心の中でつぶやくマオ。
これまで恐怖で支配してきた日々とは違い、園児たちの無邪気さが心を満たす。
その日の最後、園児たちが並んで「さようなら」を言う。
「園長、明日も遊ぼうね!」
「また来てね!」
魔王マオは初めて、子どもたちの笑顔に素直に感謝する。
「……なるほど……世界征服より……大切なもの……ここに……ある……」
泥まみれで紙吹雪だらけの園長は、世界最凶の魔王ではあるが、
今は園児たちの笑顔を守る“ゆるふわ保育園の園長”として、新しい日常を歩み始めるのだった。




