園児たちとのはじめての触れ合い
「……ここは……戦場か?」
転生初日の混乱から一夜明け、魔王マオはまだ半分呆然としていた。
園児たちは相変わらず元気いっぱいで、朝の自由遊びの時間には、砂場、積み木、絵本コーナー、室内滑り台、全ての遊具をフル活用。
マオが一歩踏み出すと、3歳の男の子が小さなスコップを持って駆け寄ってきた。
「園長、見てー!お城作ったの!」
見ると、砂場に小さな泥の城がそびえ立っている。
「……これを……倒すのか?」
魔王は条件反射で手を上げ、闇の魔法で一掃しようとした瞬間、サクラに軽くツッコミが入る。
「園長、それはやめてください。壊さなくていいんです!」
慌てて魔法を止め、砂の城に手を触れると、園児たちの無邪気な視線が刺さる。
「園長、怖くないんだ!」
「魔王なのに優しい!」
……いやいや、優しいんじゃなくて単に制御不能になっただけなのだが。
マオは頭を抱え、魔王としての威厳を必死に取り戻そうとする。
しかし、園児たちの攻撃は止まらない。
積み木タワーを倒すのは日常茶飯事、絵本を抱えて走り回る、紙吹雪を投げまくる――
まるで小さな暴風の中で戦っているようだ。
その時、0歳児の赤ちゃんが突然泣き出した。
魔王は条件反射で魔力を放ち、泣き声を封じようとするも、サクラにまた制止される。
「園長!泣いてる子は抱っこで安心させるんです!」
抱っこ……?
魔王、抱っこなんてしたことがない。
腕を差し出すと、泣き出した赤ちゃんが無邪気に抱きついてくる。
……意外と重い。しかもかわいい。
「……この……小さな人間ども……手ごわい……!」
魔王の声は震えつつも、心のどこかでほのかな達成感が芽生える。
午前中の遊びが終わる頃には、マオは完全に泥だらけ。
マントは砂まみれ、名札は傾き、髪の毛には紙吹雪が絡みついている。
それでも園児たちは笑顔。
「園長、明日も遊ぼうね!」
その無邪気さに、魔王は思わず小さく呟く。
「……世界征服よりも、こっちの方がずっと……難しい……だが……面白い……」
こうして魔王は、園児たちとの初めての触れ合いで、自分の力ではどうにもできない“笑顔守護の戦い”に身を投じることになる。
世界を恐怖で支配していた頃のマオからは想像もできない、泥だらけで笑いに満ちた日々の始まりだった――




