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転生魔王様のゆるふわ保育園経営日記  作者: 櫻木サヱ
魔王、保育園に転生する

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2/11

転生したら保育園の園長だった

灰色の霧に包まれた暗黒の玉座――

「我が名は魔王マオ!全世界を恐怖に陥れる絶対の支配者――」


その威厳あふれる宣言が、光の眩しさで一瞬にしてかき消された。

目を開けると、そこは――なんだこの空間は!?


カラフルなマットが敷かれ、壁には虹色の飾りがぶら下がり、窓からは太陽の光がさんさんと差し込む。

床には小さな靴が散乱し、紙吹雪の残骸が舞っている。

そして、目の前には小さな人間たちが、全力で走り回っていた。


「……ここは……支配すべき世界では……?」

マオは立ち上がるが、手元には剣も魔法書もなく、代わりに胸元には「園長」と書かれた名札が揺れている。


「園長……?」

まだ夢か幻かと思っていると、床のマットから小さな声が響いた。


「園長さーん!早く来てー!」


振り返ると、3歳くらいの小さな女の子が、にこにこ笑いながら手を振っていた。

手には泥だんご。え、戦闘用かと思ったら――ただの遊びか。

「……人間どもを支配するのではなかったのか……?」

マオの心の中の宣言は、無邪気な園児たちの笑顔で瞬時に粉砕された。


園児たちはマオの黒いマントや赤い瞳にまったく怯まず、むしろ「おもしろいオモチャ」と思ったらしい勢いで駆け回る。

積み木を投げ、紙吹雪をかけ、時には床に転がって大笑い。

魔王にとってはこれが新しい“戦場”だった。


「耐える……しかないのか……」

唇を噛みしめ、マオは深く息を吸った。


そこへ、颯爽と一人の大人――保育士サクラが登場。

「園長、おはようございます!今日も元気な園児たちが待ってますよ!」

笑顔の裏に戦場司令官のような気迫を宿すサクラに、マオは思わず固まる。


「……園長、か」

マオは名札を指でなぞる。

「……世界征服より、こ、これか……?」


園児たちは次々にマオに絡み、砂場で泥をぶつけ、絵本を抱えて走り回る。

一瞬でも手加減を怠ると、泥まみれになりそうだ。

魔王の威厳も、ここでは紙屑のように軽い。


しかし、魔王はすぐに気づく――

この小さな戦場には“魔力”が最も重要ではない。

笑顔、忍耐力、そして絶妙なタイミングのユーモアこそが、ここでの最強の武器なのだ、と。


「……よかろう……この園児ども……覚悟せよ……」

魔王の声は低く響くが、園児たちは笑顔で「やったー!」と応える。

その瞬間、マオは悟る――

転生前の世界征服よりも、転生後の“笑顔守護”の方がずっと大変で、ずっと楽しいのだと。


こうして、最凶の魔王マオの保育園生活が始まった。

世界を恐怖で支配する日々から、泥だんごと紙吹雪の戦場へ――

その戦いは、魔王自身が想像する以上にハチャメチャで、予想不能で、そして爆笑の連続だった。


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