バスに乗る魔王
「……本日の任務……園児たちを無事に目的地まで運ぶ……」
魔王マオは深呼吸し、バスの前で指示書を握りしめる。
園児たちはすでにリュックを背負い、窓の外を眺めたり、友達とキャッキャ遊んだりして大興奮。
「園長ー!外に猫がいるー!」
「バスって速いねー!」
「座席に座りたくなーい!」
魔王は冷静に座席確保作戦を立てる。
「……リナは前、ユウトは隣……ハナは抱っこ……」
しかし、計画を口にした瞬間、園児たちは勝手に座席争奪戦を始める。
「園長、ここに座るの!」
「いや、僕がここだ!」
リナとユウトの小競り合いに、マオは腕を組み静かに呟く。
「……小さき者たちよ……秩序を理解せよ……」
サクラが横からフォロー。
「園長、強制力は禁止です!優しく誘導してください!」
魔王、目を見開く。
「……優しく……誘導……」
ドS魔王には未知の任務。
バスが出発すると、園児たちは窓の外に夢中になり、叫び声が車内に響く。
「見てー!鳥が飛んでる!」
「雲が変な形!」
魔王は座席を歩きながら手を振り、少しずつ興奮を抑える。
しかし、ユウトが立ち上がって窓から顔を出そうとした瞬間、魔王は瞬時に飛びかかる。
「危険……!」
「わー!園長!止めてー!」
サクラとケンジも必死にフォローし、車内は笑いと悲鳴で大混乱。
さらに、ミオがリュックからおやつを取り出し、空中配給を始める。
「園長も食べるー?」
魔王は頭を抱え、紙吹雪のように飛び散るおやつを避けながら必死で制御。
「……支配力……不要……統率は笑顔で……」
魔王は静かに悟る。
この戦場では、恐怖よりも忍耐力と心配りが重要なのだ。
バスの半分以上を過ぎるころには、園児たちは疲れてお昼寝モード。
しかし寝相で座席を占領し、魔王の進路妨害。
「……む……手ごわい……寝ても戦うとは……」
魔王は小声でつぶやき、静かに進路を確保。
到着間際、園児たちは徐々に目を覚まし、再び大騒ぎ。
「園長、あと少しだよー!」
「早く公園で遊びたい!」
魔王、泥まみれの手を振り、笑顔で応える。
「……よし……無事到着……いや……戦いはまだ終わらぬ……」
こうして、バスの中でも魔王は園児の無秩序な笑顔と混乱に翻弄されながらも、少しずつ対応力を身につけていくのだった。
園外活動は、保育園以上に難易度が高く、しかし充実感に満ちた戦場である。




