第6話 おいしいものを食べます!②
夢のような甘味の余韻を胸に、私は静かに家へと戻った。
「さて……次は、“自炊”」
この世界では、日々の食事を自分で作ることも珍しくないという。
王宮の厨房では、私の好みを知り尽くした料理人たちが数十名いた。
けれど今は、私が私自身の執事であり、料理人でもある。
「ハンバーグ、だったかしら」
スマートフォンで調べた。
挽き肉、玉ねぎ、パン粉、卵、牛乳、塩胡椒。
材料はすでに買っておいた。
……ただし、レシピ通りにうまくいく保証はない。
エプロンをつけ、髪をゆるくまとめる。
最初にして最大の難関、それは玉ねぎだった。
「っ……目が……しみる……っ!」
涙をこらえながら刻み、フライパンで炒める。
次は挽き肉に卵とパン粉と牛乳を加え、こねる。
「……手がべたべたする……」
思わず顔をしかめるが、やめない。
両手でこねる。丁寧に、空気を抜いて形を整える。
焼きは慎重に。強すぎず、弱すぎず。
ジュウッと音がして、香ばしい匂いがキッチンに広がった。
「……できた……?」
おそるおそる皿に盛りつける。
見た目は、まあ……不格好だけど、焦げてはいない。
「……いただきます」
一口かじる。
「おいしい……!」
自分で作ったとは信じられない。
でも、それでも——心の奥から温かくなる味だった。
「……やれば、できるものね」
どこか誇らしくて、くすぐったい気持ち。
“小さな成功”。
私は静かにハンバーグを味わいながら、この世界での暮らしが、少しずつ“自分のもの”になっていく感覚をかみしめていた。




